宙組バウホール「Le Petit Jardin」遼河はるひ主演

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332. 宙組バウホール「Le Petit Jardin」遼河はるひ主演

ユーザ名: 金子
日時: 2005/5/23(14:24)

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 こんにちは。面白くなかった・・・。先日「オペラ座の怪人」のDVDがいつ出るのかと調べていたら、3枚組みは9000円とか。8月発売。早いのはいいけど、「特別版」とか称して高いのはやめてくれ、という感じ。「五線譜のラブレター」も約4000円。6月3日発売&レンタル開始。レンタルで是非ご覧下さい。歌っているところを映像化してあるので、日本語で見るのは勘弁してください。口と声がシンクロしているのが良くわかり、出演者もみなお上手です。偉大なるポーター!

宝塚 バウホール 宙組公演
5月22日→に列18

「Le Petit Jardin」
ル・プティ・ジャルダン −幸せの庭−
作・演出/植田景子

<解説>
 南仏の高級フレンチレストランを舞台に繰り広げられる、春らしく爽やかでお洒落なミュージカル。現代の若者たちが、生きる意味や幸せを、手探りで見つけ出していく様を、悲喜こもごもの人間模様を通して描くハートウォーミングな物語。

 南フランスを流れるローヌ川のほとり、素朴な自然の中にひっそりと優雅に佇む古い館、訪れた人が皆幸せになるという、レストラン「Le Petit Jardin」(ル・プティ・ジャルダン)。この店は、伝説のシェフ、ミシェル・シャンティが創設し、彼が亡くなってからは、その意志を継ぐべく、支配人兼シェフソムリエのアランが中心となって店を守っていた。
 ある日、ミシェルの一人娘セシルがこの店を訪れる。ミシェルは自分の唯一の財産であるこの店の相続権をセシルに譲っていた。アランたちは彼女の訪問を素直に喜ぶが、セシルの真の目的は、この店をミシュランの三ツ星レストランへと改造することだった。店のイメージチェンジを計ろうとするセシルと、ミシェルの意志を大切に受け継いできたアランはことごとく衝突する。しかしアランは、セシルのこの店への反感は、仕事一筋で家庭を顧みなかった父親への反抗や寂しさの裏返しだと感じとっていた。
 そんな時、アランは彼女を説得するためにスペシャルディナーを用意する。ミシュラン三ツ星レストランでも味わえない、彼女を幸せにするための料理、メニューは“セシルの庭”。ミシェルが最も愛したそのメニューの中身とは・・・。(ちらしより)

<メインキャスト> (プログラムより抜粋
アラン(ディレクトール〔支配人〕兼 ソムリエ長):遼河はるひ
セシル(名義上のオーナー・店の創設者、亡きミシェル・シャンティの一人娘):美羽あさひ
エリーヌ(ガーデナー〔花や庭の世話〕):花影アリス
ジャン(料理長、亡きミシェル・シャンティの愛弟子):月丘七央
ルイス(セシルの恋人・若手実業家):夢大輝

<感想>
「また『今そこにある幸せ』かあ」

  チラシを読んだ次点からこのテーマは分かっていた。しかし、宝塚よ、このテーマ使いすぎである。流行といわれても、こうも一昨年からどんどん続くと「ええかげんにせい」である。ざっと、このテーマの作品をあげると
『永遠の祈り』(04 星組 ドラマシティ)
『ラ・エスペランサ』(05 花組 大劇場)
『青い鳥を捜して』(05 雪組 大劇場)
『ホテルステラマリス』(06 宙組 大劇場)
というところか。もう、こうなれば革命でも戦争でもかかってらっしゃい、である。だから、来年はいきなり『ベルサイユのばら』から始まるのか。ああ、いいですよ「マリー・アントワネットはフランスの女王なのですから」で決められても、バスティーユでオスカルが非業の死を遂げても、それが宝塚というものだ。

 ということで、このテーマに目新しさがない上に、このストーリーは、「愛情をもらえなくて恨んでさえいた父親が残したものをすべて改造しようと踏み込んだところ、父の精神を受け継ぐ従業員たちが、本当の心の安らぎを与えてくれ、『本当の幸せ』とは、今の自分の持ち物であるレストランに『今そこにある幸せ』が転がっていたのだ」というヒロインのほうの話なのである。主演男役を軸におく宝塚においてはきびしい。

 また、こういうわけでストーリー展開も正直、観客にとってちらしの次点で読めている上に、台詞が多くて、1部終了時、隣の2人連れは「睡魔が襲ってくる」「記憶が一時ない」というところになってしまう。もう少し、歌と踊りのナンバーを入れて緩急をつけないと、すごく長い時間観劇しているようになってしまう。心理描写が丁寧な台詞も結構だが、ミュージカルなのだから、歌とダンスも豊富にお願いしたかった。その歌ナンバーだが、はっきりいうが易しすぎる。もっと音域の広い曲にして、主演者を悩ませてもいい。そして、宝塚の振り付けが初めての先生方の振り付けだが、これも目新しい、といえばそうだが、なんだかパントマイムのようで、いつもの体全体を使った振り付けに慣れているせいかそのほうがよかった。60点。後半行くのはキャスト目当てにするかー。後は人別に。

 遼河はるひ。悪いほうから言うが、観劇前日に彼女の新人公演主演の映像を見た。印象は、決定的に歌唱力が劣るということだ。それから3年たっているので努力はされていると思うが、観る前から歌がどうなのか心配だった。しかし、今回の歌は上に書いたとおりやさしいので、あらが目立たなかった。演技に関しては、設定されている年齢(32歳)にふさわしい落ち着き・責任感、という余裕さえみせた。また、セシルにだけ話す、かつての栄光とお金を追い求めたゆえに妻を死なせてしまった、という人生の告白の場面は「悔いてもどうしようもない大人が持つ過去の苦味」という部分も落ち着いて十分表現していた。宙組の体制上若手にはなかなか活躍の場はないが、今回の単独主演はこれからの自信につながると思う。他の組の同期が先を走っているので、抜群のスタイルとルックスで追いついて欲しい。

 美羽あさひ。上に書いたようにセシルの心の動きがストーリーを担っているので、彼女に芝居の成果がかなりかかっている。観終わった感想は、達者な役者だな、と思った。台本が要求していることをきちんと表現できている。下手をしたら、嫌味な女が、父の残した料理を食べてころりと態度を変える、となってしまうと思うが、アランに「父のこと聞かせて」というあたりから、段々心が素直になっていくさまが良くわかった。美羽は新人公演ヒロインで売り出したが、宙組は若手娘役が次々と台頭してきて、『エイジ・オブ・イノセンス』(02バウ)のメイ役以外、本公演でも見せ場がなかったのでどうなのかな、と思っていたらくすぶらずにがんばっていた。花か月に一度組替えをすれば生きる人材だと思うが。

 花影アリス。初舞台のときから注目される新進娘役だが、今回は難病の少女という設定で、あの細い体躯でも納得させられる。役づくりもエリーヌのキャラクター同様素直に取り組んでいて好感が持てた。もう少し、声に感情が乗せられるといいのだが。アランに愛しているのか、と聞くところなど少し一本調子になるきらいはある。それと要らぬ心配だが、あれだけ細くて、これから役が与えられて早変りなどで大変になる公演へのスタミナは大丈夫だろうか。金子の感ではあるが、彼女が主演娘役になる日もそんなに遠くないかも。

 月丘七央。自分が先代より才能がないことを嘆くところはいいが、全体的に台詞に説得力が欲しい。特に、「自分がやめればいいのだ」というところ。もう少し、人物的な大きさと落ち着きがいるように思う。

 夢大輝。レストラン改革を次々と打っていくものの、所詮は買収が目的で、女にも手が早い、この物語の中で出てくる唯一の悪人。キレ者ぶりなところも、最後にやばい仕事もやっていることを皆に暴かれて去ってゆくところも、悪人らしく、キーポイントの役になっていた。

 後の、若い設定の出演者たちは、若さをぶつけて元気一杯。そのなかで、4世代のロワゾー夫妻を演じた天羽珠紀と純あいらの2人が出番は少ないが印象に残った。


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340. Re: 宙組バウホール「Le Petit Jardin」悠未ひろ主演

ユーザ名: 金子
日時: 2005/6/14(13:37)

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 こんにちは。バウホールには最前列と最後尾にパイプ椅子席というものがあるのですが、それの最前列のほうに当たってしまい、舞台からの冷房で寒かったた・・・。椅子もすぐ動くし。少々後ろでも普通席のほうがいい、ハイ。

「Le Petit Jardin」(悠未)
宝塚 バウホール 宙組公演
6月13日→補助24

「Le Petit Jardin」
ル・プティ・ジャルダン −幸せの庭−
作・演出/植田景子

<解説>
 南仏の高級フレンチレストランを舞台に繰り広げられる、春らしく爽やかでお洒落なミュージカル。現代の若者たちが、生きる意味や幸せを、手探りで見つけ出していく様を、悲喜こもごもの人間模様を通して描くハートウォーミングな物語。

 南フランスを流れるローヌ川のほとり、素朴な自然の中にひっそりと優雅に佇む古い館、訪れた人が皆幸せになるという、レストラン「Le Petit Jardin」(ル・プティ・ジャルダン)。この店は、伝説のシェフ、ミシェル・シャンティが創設し、彼が亡くなってからは、その意志を継ぐべく、支配人兼シェフソムリエのアランが中心となって店を守っていた。
 ある日、ミシェルの一人娘セシルがこの店を訪れる。ミシェルは自分の唯一の財産であるこの店の相続権をセシルに譲っていた。アランたちは彼女の訪問を素直に喜ぶが、セシルの真の目的は、この店をミシュランの三ツ星レストランへと改造することだった。店のイメージチェンジを計ろうとするセシルと、ミシェルの意志を大切に受け継いできたアランはことごとく衝突する。しかしアランは、セシルのこの店への反感は、仕事一筋で家庭を顧みなかった父親への反抗や寂しさの裏返しだと感じとっていた。
 そんな時、アランは彼女を説得するためにスペシャルディナーを用意する。ミシュラン三ツ星レストランでも味わえない、彼女を幸せにするための料理、メニューは“セシルの庭”。ミシェルが最も愛したそのメニューの中身とは・・・。(ちらしより)

<メインキャスト> (プログラムより抜粋)
アラン(ディレクトール〔支配人〕兼 ソムリエ長):悠未ひろ
セシル(名義上のオーナー・店の創設者、亡きミシェル・シャンティの一人娘):和音美桜
エリーヌ(ガーデナー〔花や庭の世話〕):咲花杏
ジャン(料理長、亡きミシェル・シャンティの愛弟子):十輝いりす
ルイス(セシルの恋人・若手実業家):夏大海

<感想>
 「キャスト目当て以外に観にいく意味がない」

 この作品については前半の遼河はるひ主演分で書いたので、これ以上はあまり書かないでおこうと思う。ただ、今回は平日に行ったが、同じ平日でも大劇場が休みであった花組『くらわんか』より空席が目立ち、こういう若手主体だと演目が相当客の出足を左右するなと思った。

 基本的にちらしで物語の筋が読めてしまうし、起承転結もあまり感じさせられないこの作品、なぜこんなにだらだらと感じるのかと考えてみると、全員の役について説明がされすぎていることがあるかと思う。たしかに主役陣はきちんと書き込まれていないと困るのだが、それ以外の人については言葉が悪いが「その他大勢」でいってしまったほうが、物語がダイナミックに運べるのではないか、と思う。また、歌と踊りのナンバーも増やせたのではないか、と思う。若手全員に見せ場をという植田先生の意図はわかるが、この意図が裏目に出てしまったように感じる。

 それと、この組のメンバーが当たってきた前作は『ホテル ステラマリス』である。ホテルに続きレストランでは、同じ現代物だし変わり映えがしない。作者が別といえども、この辺は配慮が欲しかった。同じ組で2作品連続「リストラ」が飛び出しては正直つまらない。

 それでも、好きな場面はある。二幕の終盤、金婚式を迎えた老ロワゾー氏が1ヶ月前に亡くなった妻をしのんで語り、歌となり、その気持ちに同じく妻を先になくしたアランが共感し、その様子を見てセシルがお金で計れない「人の心のあたたかさ」を感じる場面である。
 ということで、キャストのほうに話を向けたいと思う。

 悠未ひろ。一幕は「若いなあ」と思ってみていた。二幕の過去をセシルに語るところは、過去の自分への憤り、というところも若い感じで、設定年齢(32歳)にはちょっと最後まで見えなかった。しかし、アランという人物に必要とされる包容力は、抜群の長身とスタイルからかもし出される鷹揚としたところとマッチしていたように思う。主演として、堂々と構えているのは「形から」でいいと思う。歌とダンスについては、今回は見るべき場面がないのでまた次の機会に。

 和音美桜。新人公演ヒロインもなしで初ヒロインだが、「宝塚の娘役」としてどうかな、と思っていった。彼女は外部出演『ウエストサイドストーリー』でいきなりヒロイン・マリアを演じたことで名を売った感じだが、いざ宝塚に帰ってどうか、というところである。この作品はセシルの心の動きが軸となっているので、彼女がコケると大変である。演技に関しては始めの利潤追求主義の嫌味なところ、父との思い出がない孤独感、アランへの愛情、と上手く出していたと思う。歌に関してはソロの1曲、まさに「歌はドラマ」の域で素晴らしかった。宙組はヒロイン候補がひしめいているのでどうにか上手いこと各組に配分できないものかな、とつくづく思った。

 咲花杏。難病を抱えつつも、健気でかわいらしい女の子でこの役の課題は果たせていると思う。アランに「愛しているのか」と聞くところもよかった。しかし、最後まで少女のようで、台詞にある「私、22よ」というようには見えなかったことが難か。表情の工夫などしたらどうだろう。彼女はステップアップするには「大人の女性」を演じられるようにならないと難しいと思う。

 十輝いりす。ヌーボーとした、というか天然ボケのような個性が料理長という責任感の強い硬い仕事とマッチしないのがむしろ面白く、この人物を印象付けていた。それでも、一幕終盤の「俺がやめればいい」というところは、必死の考え、という感じがして説得力があった。今後の使い方によっては面白い人材のようだ。

 夢大海。やり手らしいところも、キザるところも、女たらしのところもよかったが、もう少しぐいぐいと改革を進めるタフさが見えるといいとおもう。

 最後に、ロワゾー氏を演じた風莉じんがポイントを押さえていてよかった。

<金子のコラム>
「宝塚よ、原点回帰せえ」

 このところ、大劇場・バウともども新作が前売りされてもかんばしくない。特に今年『ホテル ステラマリス』以降。どうしてこうなってしまったのか。ファンとして考えてしまう。すると上のような答えが出たのである。宝塚に一般観客、そして観光客が求めてくるものはなにか。ずばり、夢とロマンである。芝居は「よく考えたらそんな話ないだろう」でいいのである。5%の現実感さえあれば。そして、ショーは宝塚名物の豪華な羽根が観られたらそれでいいのである。
まず、芝居のほうだが、現段階では革命でも戦争でもかかってらっしゃい、である。だから来年の『ベルサイユのばら』はキャストがどうであろうとも再演には賛成である。できれば、もう5組全部でやって欲しいくらい。「マリー・アントワネットはフランスの女王なのですから」と見得を切られても、オスカルが非業の死を遂げても、それが宝塚というものだ。このごろの、「現実にありそうな宝塚」はよほど上手くいかない限り共感を得づらい。所詮、虚構の男役と娘役という存在が繰り広げる物語なのだから、無理に現実に近づこうとする必要はないと思う。つまりは、格好いい男役と可憐なヒロインが革命の中で引き裂かれ、悲劇になろうが、ハッピーエンドになろうが、そういうのが王道というものだろう。宝塚の舞台で「リストラ」だの「ワークシェアリング」だの聞きたくないのが本音だ。

 つぎにショーだが、『ソウル・オブ・シバ!!』のプログラムで藤井先生が嘆いておられたが、予算は厳しいことは、再利用(というのかな)の衣装多用、で良くわかる。ショーは華やかなものである。一目で「ああ、○○さんが着ていた衣装だ」では困る。これは、ひとつの提言として、やはり、宝塚は大劇場と東京宝塚劇場をメインに置くべきで、他のところでの公演は減らすことにしてはどうだろう。生徒さんたちの様子を拝見しても、今は昔あるトップスターが語った「人間ローソン」状態が多数、という感じである。なにも梅田芸術劇場メインホールにまで進出しなくても大劇場で十分ではないか、と思う。ドラマシティも年3回は多すぎる。始まったころのように、年末だけでいいのでは。
昔、阪急電車の宝塚の広告に「宝塚を観た夜は星が落ちてくる」というコピーがあったと記憶している。宝塚よ、夢を観させてくださいな。



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