Re: 帝国劇場「ミス・サイゴン」橋本・知念・石井・今井・ANZA・tekkan・高島

帝国劇場「ミス・サイゴン」２回目を観てきました。

今日のメインキャストは以下の通りでした。
エンジニア：橋本さとし
キム：知念理奈
クリス：石井一孝
ジョン：今井清隆
エレン：ANZA
トゥイ：tekkan
ジジ：高島みほ

ただ一言、よかったです。今日は文句なく星５つです。

１）橋本さん。
よかったですね。これだけ注目される舞台は始めてなんじゃないかと思いますが、本当にはりきってやってらっしゃいます。レミゼのテナルディエとか、エリザベートのルキーニとかやらせたら面白そうと思いましたが、どうでしょう？
これをきっかけに、それこそ彼もビッグチャンスをつかんでほしいです。

２）高島さん。
いいです。低音の声がとても魅力的で、ソロの歌に聞き入ってしまい、感動してしまいました。うまいです。少なくとも杵鞭さんよりかは、ぜんぜんいいです。

３）tekkan さん。
トゥーイは彼しか観てないのですが、あの死ぬ前のシーンはどなたも同じように絶叫なのでしょうか？真に迫るというか、ちょっとこわいくらいでした。これまたいい。

４）ANZA さん。
レミゼで残念ながら、彼女をみることができませんでした。まず今回はじめて観れてよかった。そして、彼女のエレンは最高でした。声がハスキーというか、ちょっとかわった声で、そしてよく高音もでてたし、演技力も抜群だったと思います。

５）
私は、石井クリスと ANZA エレンの夫婦はとても息が合っていて、この役にあっていたと感じました。

６）
そして、全然期待してなかった知念キムは、私には非常によかったです。
「ジキルとハイド」で、彼女の舞台をはじめて見ました。最後のシーンが彼女の一言で幕が下りますよね。へたすぎて、せっかくここまで盛り上げてきてたのに、あのへたな演技でぶちこわしじゃないかと思った物でした。だから今回は彼女の公演日は買ってなかったのです。橋本さん見たさにたまたまキムが彼女だったので見れたのですが、私には全然”あり”でした。歌もよかった。演技力に難のある彼女には、歌中心の舞台はあっていたのかも。。新妻キムもいいけど、知念もいい。
よく言えば”純粋で、強い、一途な”、悪く言えば”貧しい国の無教養な”女性をよく演じていたと思います。

今回見て、思ったのですが、
キムを本当に愛していたのは、クリスではなく、トゥーイのほうではないかと。。。暴力的ですが、案外結婚したらキムに優しく、かわいがってくれるんじゃないかって思うんですが。。口では国を裏切るのかとか、アメリカを怨んでいる風だけど、彼は本当にキムを好きだったから、きっとタムも自分の子として育ててくれたような気がします。私なら、トゥーイを選ぶけど。。

そして、クリスとキムの間には愛はなかったのではないかと思うようになりました。「究極の愛」とかタイトルはついていますが、あれは愛じゃないと思います。
クリスは国のために戦ったが所詮人殺し。国に帰れば白い目でみられ、戻ってきてもむなしいばかりで、心の空虚を癒すためにキムに逃げただけで、これは愛って言わないと思います。
キムは戦争で家が焼かれ、両親が殺され、もうこんな目にあうのは二度とごめんと思っています。結局どちらも現実逃避だと思います。

キムもエンジニアも、アメリカにいけば、贅沢できて幸せになれると疑ってないところが、無教養というか、悲しい限りです。生まれ育った環境が他の選択肢を考える余地を与えていないのが悲しいです。
キムは息子を幸せにするため、自分が死んでひとり残されれば、絶対息子を引き取らざるを得ないと賭けに出たのではないかと思います。自分がいればクリスに迷惑をかけるという、彼への愛から死を選んだのではないと思います。
無教養な人間の最後の賭けに出た、したたかさだと思います。そんなに美しい話じゃなく、クリスは正直”やられた！！”って感じだったのでは。もし、キムが生きていれば、２人はここに残して、仕送りだけして逃げることもできたし。
また、仮にエンジニアがアメリカにあの後いけたとしても、決して成功はしないと思います。人を利用してしたたかに生きているつもりでも、アメリカ人はあなたの何倍も上をいくずるがしこい奴等です。上下関係は変らず、だまされて、利用されて、虫けらのように死んでいくような気がします。
タムも引き取られても、所詮顔でベトナムとの混血とすぐわかるので、差別されて一生心の安らぎを得られないと思います。クリスとエレンに間に子供でもできたら、居辛いかもしれないし。。
結局、戦争なんかしてもだれも幸せにならないのよ。みんなもがいても、不幸になるだけです。

この舞台で何をいったいいいたいんだろうかと思います。
どうも、クリスにも言い分があって、極限状態だからしかたなかったんだと、アメリカのいい訳に利用されているようでならないです。
米兵個人を責めるつもりはないけど、この状況を作り出す原因は何かを考えないといけないと思います。究極の愛だとかいって、責任逃れしようとしても、同情買おうたってだめです。だまされないぞって思います。
だって、全然懲りてないじゃん。何の反省も教訓もいかされてない。技術の進歩に比べて、何と人間の心に進歩がないことか。今も同じことが起きている。いやもっとひどいことをやっていると思います。
この前の戦争だって、だいたい戦争とは言え、捕虜を裸にして殺すなんて、いくら上司の命令とは言え、人間として何をやっているんだろうと思います。アメリカ兵って、いつのどの戦争でも、表には出てないけど同じようなことやりつづけているのではないですか。米兵の子供が戦地に残されているっていうのは、一番表沙汰にできる一番軽い罪ではないですか。これにだけ、国際会議開いて偽善ぶって、全部ちゃらにしようたって、虫がよすぎる。

富める国と貧しい国の世界の中での上下関係。
富める国の強引な理論がたとえ間違っていてもまかり通る。
貧しい国がたとえ犠牲者でも、富める国にあこがれて頼らざるを得ない。
どんなに無残なことをしでかしても、自国が一番優秀だと勘違いしている富める国。

この理不尽な上下関係がなくならないと、テロはなくならない。
ある意味、テロは起こるべきして起こったことのような気がします。

なんだか「ミスサイゴン」を見れば見るほど、アメリカがきらいになってきました。なんだか私も相当かたよった考えをもってきた。危険。

「知念さん」のキムが好きな方もたくさんいるのはわかっているのですが、私はどうしてもあの声を張上げるような歌唱法が好きになれません。それとラスシーンも。なにせ一番最初に観たキム役が「知念さん」でしたので、まだ舞台に私自身がとけ込めなかったのかもしれませんが。

「tekkanさん」と同様に「泉見さん」のトゥイも良いですよ。どちらも好きです。
私はこの『ミス　サイゴン』の場面では、トゥイとキムとの子供をめぐり対決する処がすきです。
タムが現れてから、トゥイが死んでしまうところまでの一連の流れが、音楽も含めて、胸にせまりますね。いつも涙をこらえてしまいます。それにしてもあのクリスのいい加減さ！
あれを『井上君」が演じているので、彼の大ファンの連合いは、かなり怒っております。
私としてはあの弱々しさが「井上君」にぴったりだと思っているのですが。

YASUKOさんのように『ミス　サイゴン』を観て、いろいろと難しいことを考えることができませんが、馬鹿な私でもアメリカが嫌いになりますね。