雪組バウホール「アメリカン・パイ」感想

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66. 雪組バウホール「アメリカン・パイ」感想

ユーザ名: 金子
日時: 2003/6/24(10:09)

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こんにちは。随分お久しぶりのような感じがします。このバウホール公演、すぐ青年館にいきますので、参考になれば(?)幸いです。

「アメリカン・パイ」
宝塚 雪組 バウホール公演

6月23日 に 21(千秋楽)

バウ・ミュージカル
「アメリカン・パイ」
原作:萩尾望都
脚本・演出:小柳奈穂子
 
<ストーリー>
 ロック・ミュージシャンのグラン・パは、ある日、朝食を盗もうとした家で少年と出会う。自分のことを語らず、ドン・マクリーンのヒット曲「アメリカン・パイ」を歌うだけの少年、リュー。リューを引き取ったグラン・パは、実は彼が女の子であり、余命いくばくもないことを知る。
 マイアミを舞台に、様々な人々の出会いと別れを描く、漫画家・萩尾望都原作のミュージカル。(ちらしより)

<千秋楽に・・・>
 バウの千秋楽などチケットが手に入るわけがないと思っていたのだが、今回はひょんなことで手に入った。日曜日のチケットを握っていてその日に出かけたのだが、
知人「ねえ、日曜のチケットない?」
金子「そんなー、今日のしかないよ」
知人「え、あるの?どこ?」
金子「えー、前から4列目のセンターブロックの角席」
知人「平日と変えてくれない?」
金子「(早起きしていい加減疲れていたので)いいけど、いつのどこよ」
知人「いつがいいの?」
金子「そうね〜、今日は無駄足になるわけだから、千秋楽!」
知人「楽ねえー、(上のチケットを出して)これと交換してくれない?」
金子「いいよ」ということで商談成立。
 ということで、わくわく楽のチケットを握り締めて劇場にいった。すると、サバキ(余ったチケットを定価で売ること)が、少なく見積もっても30枚はあるではないか!月曜日の楽というのはこんなに価値がないのか?と思ったが問題は下に書くが内容である。CS放送も楽の様子を録画しに来ていないし、意外と拍子抜けしてしまった。

<メイン・キャスト>(プログラムより抜粋)
グラン・パ(ロック・ミュージシャン):貴城けい
リュー(家出少女):山科愛
ジャクスン(人気バンド‘ジャクスン・プレイ’のリーダー):壮一帆
マスター(‘Moles Hole’のマスター):磯野千尋
ウイースバード(医師):天勢いづる
ジャニス(女性ボーカリスト):麻樹ゆめみ
ピート(グラン・パのバンド仲間、ドラマー):奏乃はると
ジュリー(グラン・パを慕う少年):宙輝れいか
ネイズ(二枚目ギタリスト):凰稀かなめ

<感想>
「人とのふれあい」というのは「相手の価値を認めることである」
 しかし、書くぞ!
「あんなだらだらした芝居、金返せー!」

 金子「金返せー!」は今まで感想を書き始めてから1度しか書いたことがない。大劇場公演の場合、ショーで羽根を観れば、まあ満足してそれなりに観劇気分で帰る事が出来るのだが・・・。この公演は、約2時間がなんと長く感じられたことか。確かに原作の漫画があって、それに沿わなくてはいけないのは分かるが、2時間ひたすら、余命いくばくもない少女と、それを受け入れるミュージシャンとのふれあい、だけでは冗長に感じられて仕方ない。やはり、小説にせよ舞台にせよ、物語に起承転結があってこそドラマなのではないか。演出家は高校生からこの漫画の舞台化を夢見ていたそうだが、その思い入れは買うが、宝塚の舞台にする以上、「宝塚らしさ」というものを考えて原作を取捨選択して欲しかった。先日、小柳先生の前作『スラップスティック』(02)を1年ぶりにCSで見たが、一幕と二幕のテンポの違いに、初めて見た母ですら「この芝居、キリヤン(霧矢大夢)がやってこそ持っているよ」と呟いていた。苦言ばかり書いているが、もう少し、ドラマの構成、芝居のテンポ、そういうものに気を配らないと大劇場デビューには程遠いと思う。例えば、グラン・パが「俺がもう少しハンサムで、売れていたら」などという台詞は、宝塚の二番手の2枚目がやっているのだから、原作はどうあれ「もう少しハンサムで」などという台詞は思い切って削るぐらいの決断力が欲しい。ギターを抱いた貴城けいが足を組んで座っているところなど十分様になっているのだから。また、グラン・パとリュー以外の登場人物は感情表現の書き込みが薄くて「こんな小さな役なら、全国ツアーに行ってもらえば」と思う人もいた。小柳先生がいつ、大劇場デビューされるか知らないが、もう少し、芝居の流れ、ドラマの構成、というものを考えていかないと、このままでは正直大劇場への道は遠いと思う。小柳先生、このままでは困ります。苦言ばかり書いたが、正直な気持ちなのでお許しを。あとは人別に。

 グラン・パの貴城けい(かしげ)。ロック・ミュージシャンという割と浮いた仕事をしているのに、人を思いやる気持ちがあり、包容力のある青年、という役だが、彼女は二番手で実力をつける典型的なタイプだな、と思った。初主演作『ささら笹舟』(00年)に比べて、歌は確実に上達しているし、今回の一番の難所、「死を前にした人間にどう向き合うか」というところの感情表現は当人が涙を溢れさせるほど上手く出来ていた。リューとの一つ一つの台詞に心を込めて発しているところには実力が確実に上がっているのを感じた。ドラマティックな役ではないが、堅実にこなしているところの好感を覚えた。ただ、彼女の立場に立つと、この作品が記念すべき主演2作目、というのは籤運が悪かったなー、とファンでなくとも同情してしまう。

 リューの山科愛(しな)。CS放送のニュースでお馴染みの彼女だが、まずメイクでこんなに変わるのか、と思った。しかし、歌も演技も及第点をだせる出来栄えで、特に即興で切々と歌うところは、曲もいいので心に残った。また、「どこかに行ったってことにしといてくれる?」とグラン・パに頼むところは、リューの悲しさがよく伝わった。まず、ヒロインとして合格点である。

 ジャクスンの壮一帆(そう)。グラン・パと違って、人気バンドのリーダーだが、キザっていて、自信満々のところはいいが、二幕でどういう経緯でグラン・パと心を合わせていくのかがさっぱりわからず、歌もフルコーラスないので、不満が残った。やはり、二番手の役なのだから、もう少し感情表現を書き込むべきだろう。こんな軽い役なら、若手に任せて、全国ツアーに行ったほうがいいのでは、とすら思ってしまった。原作では小さい役なのかも知れないが、やはりスターシステムをひく宝塚なのだから、彼女を出演させる以上、原作とは離れても、もう少し役を大きくすべきであろう。

 マスターの磯野千尋さん。ギャングもお得意だが、飄々として、こういう粋で若者たちを見守る大人もまたいい。相変わらず、ダンスの切れ味がいいのは鍛錬の賜物だろう。

 ウイースバードの天勢いづる。医師、ということで感情を表に出さず知的に振舞うところは良く出来ていた。また、リューの素性を明かす、という物語のキーポイントもきちんと押さえていて出すぎず、かつその存在を消さないところはいいと思った。

以下は目に付いた人を。

 ジャニスの麻樹ゆめみ。歌声が力強いのが良かったし、リューに対して、世間を分かった女性として思いやりをもって接しているところがさばけていてよかった。ただ、髪型はご一考を。

 ピートの奏乃はると。バンドのメンバーの中では歌が上手くソロのところは素直な歌い方でよかった。

 ジュリーの宙輝れいか。少年の屈託のない素直さをよく表現していたと思う。金子は正直、ジュリーの「僕は大人になったら作家になるよ。そして、リューのことを書くよ」という台詞が一番心にしみた。純粋な他人への思いやり、というものが溢れている台詞を上手くこなしていたと思う。

 ネイズの凰稀かなめ。こちらもCS放送のニュースでお馴染みだが、長身なのでジャクスンに引き抜かれる理由も良く分かるし、芝居も迷っているところなど、こちらも有望株だと思った。

 以上、色々書いてきたが、今回の感想はこれで終わる。


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