月組大劇場 「ME AND MY GIRL」

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462. 月組大劇場 「ME AND MY GIRL」

ユーザ名: 金子
日時: 2008/5/2(15:46)

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4月24日→当日B席
5月1日→当日B席

UCC&シャディミュージカル
『ME AND MY GIRL』
作詞・脚本/L・アーサー・ローズ&ダグラス・ファーバー
作曲/ノエル・ゲイ
改訂/スティーブン・フライ
改訂協力/マイク・オレント
脚色/小原弘稔
脚色・演出/三木章雄

<解説>
 1937年にロンドンで初演され、1646回のロングランを記録した大ヒットミュージカルで、宝塚歌劇では1987年に5〜6月に剣幸・こだま愛を中心とする月組で上演し絶賛を浴び、同年11〜12月に同じく月組で再演された作品で、1995年には天海祐希、麻乃佳世により再演。1930年代のロンドンを舞台に、下町に住む若者が紆余曲折の末に大富豪の伯爵家の世継ぎとして迎えられるという明るくロマンチックな物語です。なお、この公演で第94期初舞台生がデビューします。

 1930年代のイギリス。ロンドンのヘアフォード伯爵家で当主が亡くなった為、妹の公爵夫人マリアが家を切り盛りしていた。遺言により当主の一人息子が世継ぎとされたのだが、この世継ぎは亡き伯爵の落とし胤で、長年行方不明であった。ヘアフォード家の弁護士パーチェスターに行方を捜させた結果、ロンドンの下町ランベスに住むビル・スナイブスンという青年と判明し、呼び寄せることになる。
 この話を聞いて心穏やかでないのは、公爵夫人の姪ジャッキーとその婚約者ジェラルドである。二人はヘアフォード家の財産をあてにしていたのだ。
 急遽親族が集まり、公爵夫人から説明を聞くと、公爵夫人とジョン卿の二人が遺言執行人となって、その世継ぎが伯爵家に相応しい人物かどうかを判定して、爵位と財産を相続させることになっているという。ところが、現れた世継ぎは野卑な行動とコクニー訛り丸出しの青年であった。これには公爵夫人も驚き、格式高いヘアフォード家の世継ぎとして恥ずかしくないように、行儀教育を行うことになった。
 しかし、ビルにはサリーという恋人がいた。サリーはビルと共にヘアフォード家に入ることを最初は素直に喜んだが、事情が分かるにつれて、ビルのせっかくのチャンスを潰さない為にも、自分は身を引いたほうが良いのではと考えるようになる。
 一方、遺言執行人の公爵夫人とジョン卿は、ビルの貴族としてのレッスンを続行するが・・・・・。(ちらしより)

<メインキャスト>
ウィリアム・スナイブスン(ビル、ロンドンの下町ランベスで見つかったヘアフォード家の世継ぎ):瀬奈じゅん
サリー・スミス(ビルの恋人、ロンドンの魚市場で働いている):彩乃かなみ
ジョン・トレメイン卿(公爵夫人の友人で、遺言の執行人。公爵夫人を憎からず思っている):霧矢大夢
パーチェスター(ヘアフォード家の弁護士):未沙のえる
ディーン・マリア公爵夫人(ヘアフォード家の女主人、遺言執行人):出雲綾
ジェラルド・ボリングブローク(公爵夫人の甥、ジャッキーのフィアンセ):遼河はるひ
ジャクリーン・カーストン(ジャッキー、公爵夫人の姪):4/24→城咲あい 5/1→明日海りお

<感想>
「誠実さを忘れた現代日本人へ」

 はじめこの演目が再演されると聞いたとき、「ああ、古いな」と率直に思った。現在日本でヒットして上演されているミュージカルはドラマ性の高いものが多く、また宝塚の初演1987年当時とは日本という国も相当違ってきているからだ。

 そんな思いで、1回目の観劇をした。やはり、はじまるとすぐに結果が分かってしまうし、少々中だるみも感じないわけではなかったので、役替わりがあるから2回目も行くことにした。しかし、2回目は新星・明日海りおの活躍ばかりでなく、分かっているからこそ流れにすっとはいっていけたのか、出演者の熱演に乗っていけたのか、観ていて気持ちが軽くなって、心が洗われる感じがした。これが長く上演されるミュージカルの持つテーマの普遍性だな、と実感した。

 そのテーマとは、「他人に対して誠実であること」「他人の気持ちを推し量って行動する美徳」つまりは「性善説の素晴らしさ」である。1987年当時と違う、というのはここからである。現代日本において上に書いたテーマは「不器用な生き方」「バカ正直」ととられている向きがあるように思う。しかし、これらは人間が円滑な関係を築くにあたって必要な要素であり、これらがあるから昔はうまく行ったのか・・・と思うことが最近は多い。しかし、昔に戻ることはできない。少しでもこの作品を通して、「誠実さ」の価値がそれこそ坊ちゃん、お譲ちゃんから観客の皆様に認識していただけたらこの作品は成功なのではないかと思う。あとはそれぞれの感じ方で点数が異なるだろう。個人としては85点。

 1つ気になったのは台詞である。日本語というのは良く考えてみると、方言と標準語の差以外は、格差のない言葉であるが、やはり現在に合わせて翻訳しなおしたほうがいいのではないか、とおもうところがいくつかあった。「お足」や貴婦人になる前のサリーが自分のことを「わたし」というところなど。ジェラルドのいう「あの韻を踏んだようななまり」というのが日本語ではいまひとつわからない。

 一方、歌詞は(プログラムに殆ど載っているのはありがたい)はあまり80年代当時流行の日本語を使ってないからか、へんなカタカナ語もなく平明な日本語でこちらは変える必要がなかった。

 ただ、初舞台生も加えて120名以上での公演というには少し役がすくなすぎて、物足りないメンバーもいたかと思う。日生と博多座で分かれて40人くらいが本当は丁度いいところではないだろうか。でも、これもローテーションだから仕方ない。

 瀬奈じゅん。ビルという人間は「いつもふざけているようだが、本当は『血筋が物を言う』ように、真面目で誠実な青年」というちょっとそこらにはいそうにない好感度が高い人物。瀬奈は「誠実さ」を前面に押し出した創り方で、彼女が普段もつ好感度・ノーブルさと上手くマッチさせたビルだった。小道具の扱いは前夜祭より大分上達していたし、歴代に負けないという気概はみえた。ただ、やはり1幕前半はもうすこし下品でもいいかな、と思った。やはり、「あんたはラジオのアナウンサーみたいなしゃべり方になっている」とサリーに別れるとき言われるくらいだから、1幕最初から2幕の「叔母さんが甥にキスしてください」というところまで、もう少し成長過程が見られれば完璧かな、と思った。

 彩乃かなみ。彼女の柄にあった役、と思っていたが、やはり最後の貴婦人のところがぴったりしていて、「ああ、宝塚の娘役として崩すのは難しかっただろうな」と思った。ソロの2曲は心にしみたし、できれば彼女のエトワールをもう一度聴きたかったな、と思った。「宝塚の娘役」にしばられない歌が歌える人なので、外部でも活躍してほしい。お疲れ様でした。

 霧矢大夢。ジェラルドのようなボンボンがそれなりに社会経験をつんで、「いい大人」になったと思える、品格と落ち着きのある演技だった。マリアと同年代に見せたのはさすが。博多座はちょっと行ってみたい気がするが、去年行ってしまったので断念。CSで放送するだろうか。

 未沙のえる。宝塚のオリジナルキャストで、もうパーチェスターそのもので笑えてくるのだが、正直、この役も役替わりで若手を登用して可能性を試させるほうがよかったのでは、と思った。

 出雲綾。叔母さんが悪い人に見えてしまうとこのミュージカルは大変なことになるのだが、意志はつよいが、あまりにも貴族の生活に慣れすぎてしまって一般人からみるとおかしいところ、最後にビルに「あなたはヘアフォードの人間ですよ」という、心の中から甥の幸せを願っているところなど、こちらも上手くまとめていた。最近、組長・副組長の退団が続くのはどういうことか知りたいところだが、こちらもお疲れ様でした。

 遼河はるひ。これぞ苦労を知らないボンボン。「これは世間がどうだ、とかいってもしょうがないな」と思わせるほどののほほんぶりでこの役にはあっていた。

 城咲あい。我儘で自分さえ良ければよくて、という主義だから「ビル誘惑」についても計画を練るが、うまく行かなくて愚かなところがみえてしまうお嬢様というところ。歌はキーが低くて歌いにくそうだったが、のびのびとやっていてチャーミングだった。
 
 明日海りお。婉然たる美女で、計画も完璧に近いが、他人の気持ちまで計算できなかった、という「そこまではうまく行かないね」という創り。2階最後列でみてもびっくりする美女度で今回の公演の一番の注目、というところだ。歌もキーが低めに設定してあるせいか、違和感はなかったし、娘役に転向したら凄いことになるかもと思った。

 5/1は前のB席に1学年の幼稚園児、が来ていて、どれほどワーワー、ギャーギャーいわれるのか、と来たとたん恐怖だったが、まったく声を発せずしずかなもので、今の優秀な園児に驚き、この作品の楽しさが彼らにまでわかるのかな、と思っていた。ただ、大劇場様、幼稚園団体の後ろの席は売るべきではないと思いますが。売るなら当日買うときに一言言ってほしかった。以後はお願いします。


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