Re:宝塚大劇場雪組「春麗の淡き光に」「Joyful!!」

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46. Re:宝塚大劇場雪組「春麗の淡き光に」「Joyful!!」

ユーザ名: 金子
日時: 2003/4/21(20:01)

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yasukoさん、いつもリプライ有難うございます。これは、金子のものですから当然、大劇場を観ての感想ですが、これを書いた当時はこのページを知らなかったので、今回REとして書かせていただきます。

「春麗の淡き光に」−朱天童子異聞−
「Joyful!!」
宝塚大劇場 雪組公演
 
 1月23日 1階3列21(ビデオ収録日)
 1月25日 1階14列29(カード会社貸切)

「春麗の淡き光に」
作・演出:植田紳爾
<解説>
 平安朝末期、藤原北家全盛の頃。朱天童子と名乗る盗賊が北家に縁ある者を襲っていた。童子は北家に政権を奪われた南家の一派、藤原保輔の仮の姿。童子を捕らえる命を受けた源頼光・頼信兄弟の妹・若狭は保輔と恋仲だった・・・。揺れ動く時代の中で、藤原氏ら貴族達の専横を正そうと立ち上がり、来るつわものの時代への布石となろうとした男の物語。新トップ朝海ひかるを始めとする、新生雪組の魅力を十二分に活かした作品。(ちらしより)

<メインキャスト>
藤原保輔(朱天童子)/ 藤原保昌(保輔の弟):朝海ひかる
若狭(源頼光・頼信の妹。保輔と恋仲):舞風りら
源頼光(左馬頭。保輔とは勧学院で共に学んだ親友):貴城けい
藤原兼家(太政大臣。藤原北家の頭領):汝鳥伶
野依知親(検非違使の別当):未来優希
鬼童丸(朱天童子の一味):立樹遥
源頼信(治部少輔。頼光の弟):壮一帆
碓井貞光(頼光の四天王の一人):音月桂

<感想>
「植田理事長の作品らしく、歴史劇ではなくて人情劇」

 上の解説を読んで、貴族社会から武家社会へ変わった、ダイナミックな歴史の変化の1ページを描いた歴史物か、と思って観てみたら、1つ後ろの列はハンカチ登場の人情劇だった。金子が平明に題を付け直すなら「朱天童子とそれをめぐる人々」とでもいうべきだろうか。もう少し言うなら、本題とサブタイトルを入れ替えたほうがいいのでは、という感じである。朱天童子をめぐる、男と男の友情、兄弟愛、男女の愛、親子愛、夫婦愛といった人情物にいかにもありそうな話の方が歴史のことより多く時間をとってでてくるので、理事長的日本物だな、と思った。ただ、あまりにも歴史的部分が少なくて、朱天童子はなにを見て悪行に走ったのか、とか下に書く疑問がでてくるのだ。それと登場のときの音楽つき、あれはもう古い、と思ってしまった。「ベルサイユのばら」でこそなんとか我慢もできるが、新作に「ジャーン」で登場、というのは「いまどきの宝塚の作品でそんなものあった?」と思ってしまった。一応、今回は上の解説どおりの製作意図なのだから、人情が入っても仕方がないが、もう少し歴史とバランスをとって欲しかった。

 ということで疑問を4つ。1、平安時代の話なのに、なぜ幕開きの総踊りは若衆なわけ?2、保輔は「民の嘆きを見て」と言って朱天童子になったのに、民の嘆きのシーンが1つもないのはなぜ?3、一時、手下の前でも保輔と保昌が入れ替わっていたことを隠していたのに、いつの間に怪我をおった本物が保輔ということを明らかにしたのか?4、なぜ、二番手の銀橋でのソロがないのか?これだけスターシステムをしく劇団なのに。

以下は人別に移るが、1つここで。雪組ファン、特にコムファンの方は読まれないほうがいいと思います・・・。それでも、という気概のある方だけお願いします。読まれての、「怒り」メール送付は勘弁してください。あくまでも、金子の感想なのですので。

 朝海ひかる(コムさん)。最初にせりあがってきたときに「あらっ」と思ってしまった。「舞台空間を十分に活かしきれていない」という言葉が直感的に浮かんだ。もうひとつ言うなら、「舞台を満たすオーラがない」。以前『愛燃える』の時、コムさんについて、金子、「このままでは危ない」というようなことを書いたと思うが、本当に危ないままでトップになってしまった。正直、今後雪組相当ヤバイ、とすら思った。役作りに関しては、若狭が「声が違う」というほどなのだから、保輔と保昌のときの台詞のトーンを、努力していることはわかるが、もっと変えなければいけないと思うし、歌も歌い上げるところが弱い。正直「いいところなし」という感じだ。(コムファンお許しを・・・・)

 舞風りら(まーちゃん)。今回は楚々としたひたすら恋する女性で、あまりやりようがない感じがしたが、ま、トップ娘役第1作ならこんなところか、という感じがした。とにかく、この芝居は女役の役が少ないのも難点だ。

 貴城けい(かしげ)。『アンナ・カレーニナ』の頃から演技開眼したのか、源氏の頭領として家をまとめていく器量のある人物を十分に演じきれていたと思う。また、最後近くの、保輔を切り捨てたように見せかけるところも度量のある男らしく頼もしく見えた。二番手としては歌のソロがないのが不思議だが、たくましい雪組の戦力であることは間違いない。

 汝鳥伶さん。兼家の「わしの思い通りにならないことはない」とさえ言う天下人の傲慢さはさすが専科である。知親を足蹴にするところなど、迫力十分であった。ただ、本人もおっしゃっておられたが、いくぶん『花の業平』と似てしまう人物像であるのは残念である。

 未来優希(ハマコ)。朱天童子退治の鬼となり、足を引きずりつつ銀橋でソロまであるすごくいい役だと思う。ひょっとしたら、この役を二番手に持っていったほうが面白かったかもしれない、と思うほど好演であった。特に、「一介の下人になっても朱天童子を捕まえてみせる」と息巻くところなど必見の見所であった。テンション高く演じていて、ハマコの代表作になるだろうな、と思った。また、妻役の愛耀子も子供を亡くした母親の心情をよく表していたと思う。この2人が退場するときに、期せずして、平日は団体さんの方から拍手があった。

 立樹遥(しいちゃん)。始めの出てきたとき「あー目がきくようになったな」と思った。今回は、朱天童子の第一の手下であるが、出すぎず、皆をまとめるところなどは、口跡もよく、なにか1段階段を登ったように感じた。

 壮一帆(そう)。今回の頼光の弟役は、お家大事の兄よりも身が軽い分、妹のことを思い、心配する役である。もともと青が似合う、立ち姿のすっきりとした人だが、今回は最後に保輔が生きていることを知りつつも、妹に供養の笛を吹くように促す場面は説得力があって良かった。

 音月桂(キム)は新人公演の様子を少しCS放送で見たが、なかなか華のある若武者ぶりだったので、本公演でももう少し台詞がある役でもいいと思うが。

 以上、芝居の感想はこれで終える。点数をつけるなら60点か。

「Joyful!!」
作・演出:藤井大介
<解説>
 どこにいても音楽が溢れている時代。街には様々なBGMが流れている。クラッシック、ジャズ、ロック、アフリカン・・・。音楽は人間にとっての活力であり、自然と魂が踊り出してしまう刺激剤である。その美しい音楽を奏でる「楽器」にスポットを当て、様々な「楽器」の持つイメージを膨らませ、ショーアップした華やかでエネルギッシュなレビュー。(ちらしより)

<感想>
「お正月を思い起こさせるにぎやかなショー」

 藤井先生のショー、というと昨年なら『カクテル』や『Switch』だが、あのときはサザンオールスターズやBzなどJ−POPを使われていたので「あー、亡くなった小原先生や、岡田先生の好きな、ロジャース、ガーシュイン、ポーターなどを勉強していた人間では手におえないな」と思ったので、「今回も日本の新しい歌がたっぷりでるのかしら」とある意味戦々恐々で観た。しかし、意外と「♪ソフィスティケイテッド・レディー」や中詰めでは「♪キャラバン」といったスタンダードをたっぷり使っておられたので少々安心した。永遠のスタンダード、と呼ばれる曲には時を越えていつ聴いても魅力があるものであります。ちなみに金子はポーターが一番好きだ。歌詞はすごく難しいですけれど。

 しかし、今回のショーは正直、にぎやかすぎた。お披露目、お正月、ということが重なってこうなったのだろうが、物事はなににつけても緩急が必要でしょうね。ショーで言うなら「静」と「動」バランスというのは大切だと思う。それで全体をみると、「静」の場面がANJU先生振付の「ベース」しかなくて、後はにぎやかな場面ばかりで、各場面の印象がごったになる危険性があると思った。しかし、前作では「静」と「動」のバランスがちゃんととれたショーを作っておられる先生なので言うのは老婆心以外のなにものでもありませんが。以下、場面別に。

第1章 オーケストラ・フルバンド (オーバチュア)
 銀橋から出てきた朝海ひかるを見ると、芝居のときと人が変わったのか、と思うほど目に自信が溢れていて、「ショーはやってくれるぞ」という気分になった。オープニングでのラインダンスは、91年の花組『ザ・フラッシュ!』を思わせる感じでなかなか好調な滑り出しである。それよりも、轟閣下の頃は後ろの方にいた、当時の「新人」たちがスターとなって、前の中央で踊っているのを見ると「雪組は変わったのだ」とつくづく思った。また、全編を通して音神6人のハーモニー、そして未来の歌声はすばらしい。

第2章 ピアノ (愛のコンチェルト)
 貴城けい、初の1ブロック担当場面である。以前SUN―TV(神奈川でいうならTVKのような放送局)のある企業のCMをしていた彼女をみて、父が「この宝塚の人綺麗だな」といったのだが、金子に言わせれば涼風真世さんに似てみえて、「いつか『PUCK』やってくれ」と思わせるスターさんだが、宮廷服もその後の衣装も似合っていて、初の1場面としては上々の出来だと思う。また、相手役の白羽ゆりもワッカのドレスも後の衣装もきめていて、スケールの大きい娘役に育ちそうで期待している。

第3章 ベース (哀愁のブルース)
 ANJU先生(元花組トップスター 安寿ミラ)振付の場面である。この場面では、朝海は、非常に良く先生の踊りの特徴を捉えていてシャープな感じがよく出ていた。1つ言わせてもらうならば、「哀愁の」のが上にあるのだから、もう少し倦怠感みたいなものがあるともっといいだろう。

第4章 ギター (狂乱のサパテアート)
 「♪キャラバン」をたっぷり使った中詰めである。始めに舞風りらの踊りから始まるのだが、確かに彼女の踊りはテクニック的に言うと現在の宝塚No1であろう。しかし、相手役がいるときの寄り添う感じの踊りはすごくいいのだが、1人で踊るともう少し毅然とした存在感、そしてあんなに細いのだから、羽根のように体重を感じさせない踊り、そしてある程度役のような設定がしてあると芝居をするように表情を多彩に変えるということができるともっとすばらしくなるだろう。そういう意味で、金子にとって「踊れるトップ娘役」No1は元星組の星奈優里だなあ。
 その後、男役陣がどんどん出てきて歌い継ぐところは宝塚の定番で観ていて楽しめた。最後のトップコンビの官能的なデュエットダンスだが、2人とも頑張っているのだが、もう少しいやらしくやっても大丈夫、という場面なのであとの公演で頑張って欲しい。
 
第5章 ドラム (情熱のセッション)
 立樹、壮、音月、の3人を中心としたサスペンダーを使ったダンスシーンだ。ここでは、やはり、立樹に一日の長があるように見えた。

第6章 サックス (誘惑のメロディー)
 金子の演技者に対しての「痩せてくれ」願望はこのHPでは有名だろう(?)が、舞風のビキニのスタイルをみると、あまりに細いので「もう〜、そんなに痩せてくれなくていいよ」ととうとう思ってしまった。横にいた白羽をみて「あなたぐらいでいいよ」と思った。ということで、ここで、体形からして男を誘惑するという設定は舞風には少しつらい。また、歌も地声から裏声へのシフトが意外とできていなかった。もっと歌える人だと思っていたのに。

第7章 トランペット (夢のジャズ)
 朝海はここと次の章が一番良かった。足がよく上がるのですね。ラインダンスの真ん中でにこにこしながらダンス、というのが一番イメージ通りで踊っている本人も楽しそうであった。

第8章 パーカッション (希望のゴスペル)
 ここは新生雪組の団結力の見せ所である。ゴスペルで皆が歌う、という設定は歌を得意としないトップにたいしてよく考えたものだな、と思った。正直、トップがこんなに歌わないショーは、えっと最近あったかなあ。

第9章 オーケストラ・フルバンド (栄光のオーバチュア)
 この最後のトップコンビのデュエットダンスは、「可愛い」という言葉がぴったりで若々しい新しいトップコンビの誕生、という印象を強く受けた。パレードも音神のハーモニーから始まって、羽根も豪華で楽しめた。

 ということで、とてもにぎやかなショーが終わった。藤井先生にしては、意外と宝塚の伝統的なつくりのショーだが、こういう伝統を受け継いでくれる先生がいないと、ショー好きの金子としてはいらぬ心配をしてしまう。ただ、もう1つぐらい「静」の場面を入れたほうが、始めに書いたように緩急がついて、各場面の印象がもっとよく浮かび上がってくると思うのだが。点数をつけるなら95点か。


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