花組大劇場「アデュー・マルセイユ」「ラブ・シンフォニー」

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452. 花組大劇場「アデュー・マルセイユ」「ラブ・シンフォニー」

ユーザ名: 金子
日時: 2007/10/13(15:11)

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 こんにちは。皆さん、お隣で寝られるのはかまいませんが、いびきまでかかれたらどうですか?劇場係員さんにお願いに行きますか?連れの人にお願いしますか?我慢しますか?我慢してきた金子でした。

花組 宝塚大劇場
9月29日→2階16列41
10月12日→1階25列69

ミュージカル・ピカレスク
「アデュー・マルセイユ」 〜マルセイユに愛を込めて〜
作・演出/小池修一郎

<解説>
 1930年代初頭のマルセイユを舞台にした、ピカレスク・ロマン風味溢れるミュージカル。禁酒法時代のアメリカに高級ワインを密輸する計画を持つ粋でダンディな男と、マルセイユを浄化するために努力する女の間に恋が生まれ、偽札事件に巻き込まれていく。春野寿美礼のサヨナラ公演である。
 1930年代初頭。アメリカで禁酒法が実施されていた時代。美しい港町マルセイユは、マフィアが支配するフランス随一の犯罪都市でもあった。
 この町で生まれ育ったジェラール・クレマンが14年ぶりに帰ってくる。町の歓楽街を仕切る「夜の帝王」シモン・ルノーが出迎える。駅前の大階段で、対立するオリオンとスコルピオの二派のギャング同士が女を巡って争い、女をかくまった観光ガイドのマリアンヌは、ジェラールに助けられるが「マルセイユを汚す夜の男たちの助けは受けない」と拒否し立ち去る。ジェラールは、少年院時代にシモンを助けるため、濡れ衣を着て少年院に送られたが、今はアメリカン・マフィアとの繋がりを持ち、高級ワインの密輸ルート開拓の為シモンに力を貸して欲しいといって帰郷したのだ。
 実はジェラールは、少年院での模範生ぶりを国際刑事警察の創設者に見込まれ、今では捜査員となっていた。フランスとアメリカを結ぶマフィアの密輸ルートを探るため、派遣されて来たのだ。ジェラールはシモンの経営するカジノで人脈を拡げる。
 ジェラールは、彼とシモンの母親たちが一緒に働いていたマルセイユ名物のザボン(石鹸)工場を再訪する。今では廃業した工場では、夫人参政権運動「アルミテス夫人同盟」の活動拠点となっており、メンバーは昼は観光ガイドとして働いていた。アルミテスのリーダーはマリアンヌであり、理解ある市会議員モーリス・ブロカの指導のもと、ソルボンヌ大学受験を目指していた。廃工場でジェラールとマリアンヌは再会する。ジェラールは、アメリカではマルセイユ石鹸は高級品であることから、夫人同盟の活動資金獲得の為に、ザボンを造ることを提案し、モーリスも協力を申し出るが・・・・。

<メインキャスト>
ジェラール・クレマン(ワインの密輸ルートを開拓する為、故郷マルセイユへ帰ってきた男):春野寿美礼
マリアンヌ・ロゼー(婦人参政権運動を行う「アルテミス婦人同盟」のリーダー):桜乃彩音
シモン・ベラール(マルセイユの夜の街を支配するオリオン派のボス):真飛聖
モーリス・ド・ブロ(市会議員、マルセイユ浄化委員会の一員):壮一帆
ジャンヌ(ミュージック・ホールのスター。シモンの恋人):愛音羽麗
ジオラモ・ジュリアーニ(イタリアの大金持ち):未涼亜希

<感想>
 「アデューを聞くまでの道のり」

 プログラムの小池先生の言によるとフィルム・ノワールから起草した作品である。フィルム・ノワール、何本かは見たことはある。タイトルは覚えていないが、たしかにマフィアの話でスーツ物。1つ印象に残っていることは今は現役引退されたアラン・ドロン氏が主演でニヒルでクールで格好良かったこと。

 主人公を悪役にしていないことがフィルム・ノワールと違っているところだ。それはサヨナラ公演という特殊な公演なので、いくらなんでも最後に悪役というのは有終の美を飾るに相応しくない、という配慮だろう。(一方、次の星組は製作発表から主人公は悪役、となっているので興味がわく)正直、事件が次から次へ起こるのに対して、筋は起伏が感じられず、1度観たら充分、という感じである。適度なリアル感があるのはいいが、正塚作品ほど完璧にだまされることはなく、まあ始めからだいたい筋が読めてしまう。(2度目観たとき、隣で巨漢のご婦人にいびきをかかれたが、2回目だからだまっていた)春野寿美礼の「アデュー」を聞くために1時間35分つきあっているのかな、というところである。

 主人公以外は説明不足なところが多いように感じる。ヒロインはなぜ若くして婦人参政権運動にたちあがったのか。シモンはどうやって「夜の帝王」にのしあがったのか。モーリスはどこでマリアンヌと知り合い、利用しようと決心したのか。人物の背景が浮かび上がってこない。それと、役の振り分けだが、これまたサヨナラ公演でなければ、シモン:壮一帆、モーリス:真飛聖、にしたほうが面白い。二人とも今回の役では系統が似た役をやっているので面白みがなかった。特に壮のほうの2面性がある市会議員というのは『デイタイム・ハスラー』(05年・雪バウ)でやっていた役と思い切りかぶさる。髪の色まで一緒だった。座付き作者ならではの配慮がほしかった。しかし、ここには最近のサヨナラ公演において「次期主演男役は、さりゆく主演男役の親友役でサヨナラ公演はやる」という、最近のルールに基づいてのことだと理解しておくしかない。

 ナンバーは多いが、いまひとつインパクトに残る曲がなく、やはり最後ならば何人かの先生に書いてもらったほうがよかったのでは、と思う。見所は現在の日本の男性にはみられない宝塚の男役ならではのスタイリッシュさ。とにかく、ジェラールの心のように淡々と進んでいく芝居。65点。

 春野寿美礼。1回目観たとき、上の映画のイメージが先行してしまって、もっとニヒルで底が見えないような孤独を背負っている人物ではないか、と思ったのだが、よく考えると今で言うインターポールの潜入捜査官だからそうニヒルでは怪しいし、ジェラールはマルセイユでの過去の思い出、現在(たぶんこれからも)抱える孤独にふたをしているような状態なのだろうな、と春野の演技を見て納得した。今までの集大成としてよかったと思う。彼女のスターとしての魅力は、穏やかさに満ちたオーラだったような気がする。その穏やかさが「男役の宝庫」といわれる花組の伝統を受け継ぎ、新しい人を育てていったのだろう。特に相手役・2番手が固定できない状態で5年間主演男役であり続けたところが彼女の実力と努力を示しているように思う。とにかくお疲れ様でした。

 桜乃彩音。基本的に娘役らしくない活動家の側面が多い女性だ。小池作品には最近よく出てくる自我自立するタイプ。個人的には宝塚のヒロインにあうと思わないが、桜乃は背景が書き込まれていない割にはよくやっていたとおもう。始めの「運命のいたずらがなければまずお目にかかることのない方」とジェラールに反発するところから、モーリスの好意が重荷で本当に女性は自立できるのだろうか、というジレンマから「忘れ物」のくだりまで、「まあ、個人主義のフランスならこんな女いるな」と理解できた。ただ、最後のタンゴではもっと思いをぶつけてほしい。今急務なのは歌唱力の向上である。

 真飛聖。「夜の帝王」だが、真は情に厚いいいヤツ。びしっときめて石鹸アートをやっているくだりは笑えるが、ジェラールが敵対する派と通じていることを知って、払えるだけの金額を書いた小切手を昔の封筒に入れて「出てってくれ」というところは彼なりの筋の通し方で好感が持てた。ただ、所詮マフィアのボスなのだから、汚いところもあるはずなのに、昼は町で石鹸を売っているところまであると、ちょっと「悪」の部分がなさすぎて、軽い役に見えてしまった。次期主演ならではの見せ場をもう少し作っておくべきでは。

 壮一帆。上に書いたが、また同じような役が回ってきた。まず、ポスターと舞台の髪の色が違うのは次回からは注意。昨今は阪急梅田駅でポスター撮影風景を放送しているから余計である。その色も『デイタイム〜』と同じなのはいかがなものか、と思った。役としては、一見は知的な紳士、実は市長になるためなら恋人を利用し、汚い手段にも手を染める、自己中心的なお坊ちゃん。やりようによってはいい役だと思うのだが、どうも表の紳士のほうは似合うのだが、裏の汚い一面に説得力が欠けるように思う。2番手になって正念場だと思うので、多彩な魅力を出していく必要が早急にある。

 愛音羽麗。もうけ役だった。登場から華やかで、歌のキーも高いのがでていたし、いい女だった。頭の周りがよくて、次々とアイデアも出てくるから充分自分ひとりで自立していけるはずだが、シモンが好きだから一緒にいる、という女の一面もきちんとでていてよかった。アドリブでシモンの手下たちを一喝するところはご愛嬌。

 未涼亜希。典型的なイタリアマフィアの悪いオジサン、というところだが、歌唱力で見た目の貫禄のなさを補っていた。まあ、専科でなくてここまで悪に徹せられるのも宝塚ではめったにない経験だと思うので、ターニングポイントにするつもりでがんばってほしい。

 全体的に娘役に役が少なく、おとなしいイメージがした。男役はそれぞれ下級生にいたるまで工夫があって観ていて飽きなかった。

グランド・レビュー
 「ラブ・シンフォニー」
作・演出/中村一徳

<解説>
 喜び・出会い、情熱・・・様々な愛の形、愛の心情を歌とダンスで綴るレビュー。華やかなレビューのオープニングから、ラテン音楽にのせての情熱的なダンスシーン、明るいジャズの世界など、あらゆるジャンルの音楽の世界を駆け巡り、愛の喜び、美しさを繰り広げます。

<感想>
 「こういうのがスタンダードなショーだったっけ」

 中村一徳先生(以下一徳先生)、というと個人的なことだが、以前よく阪急電車の一番後ろの座席でのりあわせたことがある。いつも難しそうな顔をして、CDをきいてらした。「あー、ショーの先生は選曲が大変だな」と思ったものだ。

 全体的に1つのブロックが大きく、色がはっきり分かれていて、各ブロック大人数(殆ど全員といっていいだろう)で押すショー、である。CSで放送される80年代のショーはこの形態が多く、これがスタンダードだったような気がする。

 しかし昨今は、「物語性のあるショー」がはやって、そして岡田先生の「ロマンチック・レビュー」シリーズがほぼ形をなしてきていわば「こてこて宝塚ショー」的になってきている。この2つのジャンルに入らないものは、酒井先生のスターの個性勝負のショーか、三木先生のバラエティショーくらいのものであろう。一徳先生としてはここらで路線を打ち出していただきたいところである。それが、「80年代スタンダードへ」かな、と思って今回は観ていた。正直、前作『レビュー・オブ・ドリームズ』(05年)は選曲が悪すぎて全場面同じように見えてしまった。

 今回は、各ブロック色が重ならず、宝塚初心者でも楽しめるショーだったと思う。ただ、「押す」シーンが多すぎて、サヨナラ公演でないならば少人数で個性比べの場面もほしかった。「緩急」の「急」ばかりのような気がした。80点。

第1章 プロローグ
 全員で華やかに始まるいかにも宝塚らしいプロローグ。サヨナラ公演なのだから、オープニングから春野寿美礼だけ背負い羽根OKで願いたかった。

第2章 ラブ・ゲーム
 どうしても芝居のカジノのシーンとだぶるのが難だが、ANJU先生の振り付けが格好いい。ただ、春野以外の男役のベストが派手すぎるのが気になった。始めに銀橋にいく壮一帆にはもう少しパンチがほしい。

第3章 花の愛
 娘役の中に真飛聖1人、という場面。段々曲はアップテンポになっていくのに優雅に見えるのは娘役の力か。ちょっと長く感じる。

第4章 ラテン・シンフォニー
 始まりの桜乃彩音の歌は歌詞が良く分からない。ここも全員で「押せ押せ」モード。ずっと大人数の場面が続くので、あとでここが中詰めだったと分かる感じ。

第5章 スペイン交響楽
 典型的なスパニッシュの場面。このへんで「春野さんワンマンショー」のように思えてくる。この辺から少しずつ「サヨナラ」モード。

第7章 フィナーレB
 やはり、サヨナラ公演には大階段の黒燕尾はもう必要不可欠。デュエットダンスのカンッオーネの曲はいいのだが、やはり最後の最後は春野に朗々とソロで歌い上げてほしいところ。
 エトワールの桜一花は役作りに意外性のある人だが、エトワールもきちんと声も出ていたので、今の位置ではもったいない娘役だな、と思った。

 とにかく、春野の全力投球に尽きる。そして、最後に見ていると彼女の心はいま「虚心坦懐」の境地ではないか、と思えてきた。去年の3人の主演男役のサヨナラ公演に比べてじめじめべとべとしてなくてこれはこれで共感がもてた。淡々として、トップスターをやめるにおいては通り過ぎなければならない「通過儀礼」のような2作品だったように思う。


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