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451. 月組大劇場 「MAHOROBA」 「マジシャンの憂鬱」
ユーザ名: 金子
日時: 2007/9/17(15:13)
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月組 大劇場公演
8月25日→当日B席
9月16日→1階6列25
スピリチュアル・シンフォニー
「MAHOROBA」−遥か彼方YAMATO−
作・演出・振付/謝珠栄
<解説>
時代を超えて伝承される伝統芸能、民族舞踊にスポットを当て、洋楽のリズム感や華やかさを織り込みながら、古典の面白味、エッセンスを込めたショー作品。過去と未来、生と死、北と南といった両極を行き来しつつ、春の芽生え、夏の猛々しさ、実りの秋、冬の厳しさから再生の春へと移り変わる。
アジアのみならず世界に誇る、日本の四季の変わらぬ豊かさ、美しさを表現する。気鋭の三味線奏者・上妻宏光氏がクライマックスシーンの音楽を担当。(ちらしより)
<感想>
「これは45分で丁度だわ」
演目が発表されて、そのジャンルが今まで聞いたことのない「スピリチュアル・シンフォニー」とあって、「一体どういうショーなのだろう」と概要がほとんどつかめずに初日が近付いてきた。仕方なくCS放送でこまめに情報を拾うと「古事記」をストーリーに取り入れたショー、ということが分かり、急いで『楽しい古事記』(阿刀田高、H15年、角川文庫)を読んで一応予習してでかけた。
2階のてっぺんから観ていても、月組の特に男役のパワーがひしひしと伝わってくるダイナミックなショーで、45分はあっという間だったが、これ以上踊ってもらうのは不可能と思った。しかし、周りからは2つの意見が。
「なにがいいたいのかわからへんわ」これは予習不足がなせるところだろうが、手っ取り早く、電子百科事典ウイキペディアで「古事記」をひいてこればかなり分かりやすくなると思う。ただ、使われている話は国産みとヤマトタケル伝説だけなので、基本知識としてはそう難しいものではないと思うのだが、これは個人差によるから仕方ないか。
「これは宝塚をよく知らない人でもいいやん」これは、宝塚ならではの古代日本の表現だろう。確かにブーツをはいて金色の刺繍がしてあるテールのついたブラウスを着てロングヘアーのヤマトタケルなど、他の演劇ではお目にかかれそうにない。古代と現代が宝塚のスタイルを使うことによって結び付けられている。この斬新さは確かに宝塚に変な固定概念を持つ一般客には受けるかもしれない。
両方の意見とも真なりだな、と思った。
個人的な意見としては、始めに書いたように、凄く馬力の要るショーということが一番であった。そして、上から観ていても、オープニングはきらきらしていて綺麗だし、前で観ると衣装も古いものと新しいものを上手く使って、独特の世界を表現している。また、小道具も豊富で、ときどきテレビの全国ニュースでみる地方の祭りの踊りもちらほらとわかって、充実した45分だと思う。好き嫌いは分かれるかもしれないが、2年に1回くらいならこういうショーも目先が変わって良いかな、と思った。85点。
第1場 天川〜第2場 神々の詩
先に書いたように、ほんとうにセットが綺麗で、娘役の静かな登場、そして彩乃かなみの美声から始まるのも従来のショーとちがって神秘的な感じがした。ただ、そのあと神様がどんどん紹介されるのだが、これはちょっと早くて多すぎるし、格好も「?」な神様もいた。ショーなので、そういちいち目を向けていられない。読んだ本では『古事記』は神様だらけで、筋に関係のない神様の紹介はカットされているのだが、重要な神様の説明だけでよかったのでは。でも、一気にこのショーの世界に入っていけるプロローグだ。
第3場A 夜明け
ここから瀬奈じゅん扮するヤマトタケルが登場し、最後までヤマトタケル伝説で終わるのだが、「ここから最後までヤマトタケルのお話しをします」とでも説明したほうがすっきりするかも。
第4場 燃ゆる島
ここから男役の群舞がハードになっていく。小道具の棒を振り回すだけでも大変そうで、「なんか座っていてすみません」といいたくなった。ここはいかにも九州という感じ。
第5場 ニライカナイ
『古事記』には沖縄は出てこないのだが、民俗芸能の宝庫であるからはずすわけにはいかないのだろう。娘役さんの動きがとても優雅。ただ、自分は沖縄に4度行って土地の人にあちらの民謡を歌ってもらったことがあるのだが、どうしても五線譜にかけそうにない、というのが実感である。宝塚の先生の作られる曲はあくまでも「沖縄風の」でしかないなあ、と今回は感じて聴いていた。
第6場B 稲穂
豊作を表現した場面で、日本の原風景が感じられる好きな場面だ。傘を使った踊りものどかなかんじがする。ここでの霧矢大夢のダンスは迫力満点。
第7場 嵐
ここは船のセットはちょっと貧弱だが、リフトされながら高音を響かせる彩乃が存在感を示す。後ろの電飾もこういうところでは安易に見える。
第8場 吹雪
三味線の音楽と動きがマッチして一番の見所ではないかと思う。その激しい動きだけでも見応えがあり、一度世の男性に観ていただきたいところ。
第9場 MAHOROBAの春再び
ヤマトタケルの昇天の場面で幕を閉じる。分数にして25分くらいにしか2度観ても感じなかったが、ほんとうにあっという間。
主題歌を瀬奈がよくうたっており、サビが1度で覚えられるいい曲だと思う。とにかく、ここまで持ってきたスタッフとパワーあふれる出演者に拍手。
ミュージカル
「マジシャンの憂鬱」
作・演出/正塚晴彦
<解説>
ダンディなマジシャンが、皇太子妃の事故死の真相解明を依頼されたことから、皇太子妃の侍女と共に、事件解決に当たる過程を通して、個性の違う男女が、如何に出会い、如何に反目し、やがては心を通わせていくかを描いた、宝塚歌劇らしい華やかで夢のあるミュージカル作品。
20世紀中庸のヨーロッパのとある国。シャンドールは上流階級で有名なクローズアップマジシャンである。ある日、貴族の女性が愛犬が行方不明であることを聞いたシャンドールは、一枚のカードをその愛犬に見立て、それを探し出すというマジックを即興で演じてみる。後日、シャンドールは愛犬がかれの予測したのとほとんど変わらない状況で、無事に発見されたという知らせを受け取る。この事が発端となり、彼の元には風変わりな依頼が舞い込み始める。彼は、一時の慰めになればと、依頼者からの情報をもとに即興でマジックを披露する。しかし、そのいくつかが実際に解決してしまい、人々の間ではシャンドールの透視力がまことしやかに囁かれ始める。
そんなある日、シャンドール皇太子ボルディジャールの極秘の訪問を受ける。皇太子はシャンドールに、3年前に事故死した妃マレークの死の真相を突き止めて欲しいと請願する。皇太子曰く、マレークは夜毎夢枕に立ち、自分は謀殺されたと訴えるという。マレークの無念を晴らしたいと切々と語る皇太子を前に、シャンドールは透視能力など嘘であると白状するわけにもいかず、依頼を引き受けてしまう。彼に出来ることはただ一つ、結局マレークは事故死であると結論づける事。そう考えたシャンドールは、早速行動を開始する。
調査を開始したシャンドールの身の回りには不可解な出来事が起こり始める。それは、かねてからの相談相手であるラースローやジグモンドについても同様であった。事故現場に訪れたシャンドールは、狙撃され危うく命を落としかける。彼を救ったのはヴェロニカという元マレークの侍女であった。最早、皇太子妃の暗殺を疑う余地はなかった。そしてヴェロニカ達もまた、マレークの死に疑問を持っていた。シャンドールはあるアイディアを思いつく・・・・。(ちらしより)
<メインキャスト>
シャンドール(クローズアップ・マジシャン):瀬奈じゅん
ヴェロニカ(マレーク皇太子妃の侍女):彩乃かなみ
ボルディジャール(とある国の皇太子):霧矢大夢
<感想>
「出演者総勢91人なのですが・・・・」
1回目は2階のてっぺんの2千円の席を取るために、早起きし、炎天下に並び、そして観劇、すると前に来た観客が脱帽してくれないので、劇場係員に脱帽を促してくれるようお願いしたら、場外を出て席に帰るようにいわれたので、一部観劇できなかったという状況だったので、筋がからまっているように感じた。(あまりに暑かったからか、次の日少し熱中症みたいだった)
基本的にマジシャンが主人公ということで話が難しく、込み入る。なぜなら職業的に口で言っていることと、腹で考えていることが違う人物だ。そしてヒロインが表向きは皇太子妃の侍女であるが、本当はボディガードというこちらも2面性を持っており、複雑な心理が働いている。この2人を中心にストーリーをかき回す2番手、と3人揃っていればほとんどなりたつ話である。あとは筋を追いながら主役とヒロインの心理を読み解いていく、それが観客に与えられた仕事だ。いわゆる「脇役」は必要だが、91人も出演者が必要で、2500席の劇場でやる芝居ではないと思う。ドラマシティくらいで充分だと思う。劇場のキャパと出演者総勢がかんがえられていないように思った。そういう意味で60点。
「価値観の違う男女が惹かれあう」というのがテーマで、それははっきりしているのだが、ヒロインの設定に宝塚としては難ありかな、と思う。彩乃かなみは奮闘しているのだが。フィナーレはショーをやりなれていない先生にとってはスタンダードな形でよかったとおもう。しかし、衣装のほうはぜんぜん違う設定で同じドレスを着るのはどう考えて不自然で、もうすこし衣装費をまわせないのか、と最近富に貧弱になる衣装にすこし不満を感じた。「きらびやかな衣装」「華麗な衣装」はもはや宝塚の売りではなくなったのか、と感じる昨今である。
瀬奈じゅん。シャンドールは基本的には他人を信用しようと思っていて、居候の仲間たちを見放せない誠実さも持ち合わせているが、普段から人を欺くことを商売にしており、そのうえひょんなことから急に「超能力マジシャン」と注目され依頼が舞い込むので厭世観も漂わせている人物だ。非常に大人で落ち着いた主役像である。瀬奈は主演男役になってから「これ」と思わせる代表作に恵まれていなかったように思うが、今回の役は素の彼女からうかがえる落ち着きが役にはまったようなかんじで代表作になるだろう。主演男役として長期政権が望めそうだ。
彩乃かなみ。いまなら女性の要人のかつてのSPといったところの新境地の役だが、彼女が元男役だったらぴたりとはまったとおもう。やはり、女性に対して女性を演じる宝塚の娘役にこういう役はすこしきついと思う。しかし、前のショーのたおやかな日本女性から一転して知的できりっとした女性を演じているのは実力を感じさせる。ただ、実際の皇室のSPをしているらしい女性をテレビでみて思うのだが、本職はボディガードなのだから、おしゃれは「まあ、一応」というところでいいのではないだろうか。髪形やアクセサリーなどもっとそっけなくていいような気がした。最後にいくにつれておしゃれをしていけばシャンドールへの恋心が表れて良いのではないかと。
なにかこの月組の主演コンビをみていると、次の作品が『ミー&マイガール』というのは、易しすぎるなあ、他の組のほうがいいのでは?と素朴に感じる。もうひとつ、海外ミュージカルだから役は少ないし。
霧矢大夢。熱心すぎてなんだかおかしい、でもマレークのことは心から愛していて、本当は頭もキレる男性を上手くバランスを取った演技だった。ショーとあわせてみると、気力・体力・実力と整っていて、充実期にあるようなかんじがする。
後のメンバーは所詮「脇役」。宝塚を知らない人ならなんで、大空祐飛がエトワールをしていることすらわからないのでは。よく気付いてもらえて「あの人、ポスターにのっていたけれど、目立たないよね」というところでは。やはり大劇場を意識した内容の芝居をのぞみたい。
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