博多座　「シークレット・ハンター」「ネオ・ダンディズムⅡ」

------------------------------

　とうとう博多まで行ってしまいました。今年は岡田先生のショーが大劇場でないので博多で大満足。いったとたん「満員御礼」には驚きました。ああ、「役者狂い」もええ加減にせんとあかんなあ・・・と思いつつ。

博多座　（友人と観劇旅行）

８月20日→２階Ｇ列38／１階C列32
８月21日→１階G列24

　観劇で地方に行くのは久しぶりだったし、３度観るのはいざやってみると非常にハードだったので、「雑文」程度で。

【博多座について】
　まだ新しいので、化粧室の数も多く、音響もいい。２階席は梅田芸術劇場のおしこめられるような感じとは大違いでゆったりとして観やすい。ただ、１階席は傾斜が少なくて、特に可動式のA～C列は見上げなくてはならないので首が痛い。歌舞伎上演時の花道の設営の都合だと思うが、やはり傾斜はあったほうがいい。劇場係員も数が多く、的確に対応できる人が多い。劇場内から入り口までの出る方向も２方向あり、終演後も人だらけでなくさっさとはける。「観やすい劇場」ということはどこかで知っていたが、その通りだった。
（個人的には「観にくい劇場」NO１は梅田芸術劇場だ。あそこの３階１列は座ったら目線に手すりが入ってイヤになる。２階も後段はぎゅうぎゅうつめだ。また、帰りも階段側の出口が分かりにくく、出るのに時間がかかる。劇場係員の数も少ないので、開演中の周囲のおしゃべりなどは自分で注意するしかない）

ミュージカル
「シークレット・ハンター」－この世で、俺に盗めぬものはない－
作・演出／児玉明子
＜解説＞
　1930～40年代のカリブ海に浮かぶ島々を舞台に、泥棒で詐欺師のダゴベールこと、通称“ダグ”が、「或る女を盗み出すこと」という奇妙な依頼を受けたことから始まる、詐欺師とプリンセスとの恋物語。

＜感想＞
　「皆忙しいなあ」

　まず、全体的には増えた２場面の初めのほうのラインダンスはいいとして、ダグが撃たれた後の回想のシーンは日本語でなかったこともありいまひとつだった。ジェニファーの最後まで本当のことが言えなかった苦悶のシーンにしてダグは出なくてもいいと思った。ジェニファーはアナ・マリアに連れて行かれてからその後に出てくるとき、ピストルを携行しているのだが、これはいただけない。宝塚のヒロインがピストルをもっているのはイメージ的にあまり好きでない。その辺に落ちているのを拾って男爵を撃つほうが好みだ。台詞についてはジェニファーがプリンセスでないことを知って、「君が誰でも、俺の心は同じだ」という改定はよかったと思う。

　人数が40人であるということから、皆がいろんな役をやっていて、これはこれで面白かった。大劇場ではありえないくらいフル稼働だ。大劇場のときは役が少ないな、と思ったが、この人数ともなると丁度くらいに感じた。あとは役替わり中心で人別に。

　安蘭けい（ダグ）。大劇場を２回しか観ていないので詳しいことはかけないが、前半と後半で対比が効いているな、という印象だ。前半はややべらんめえ口調の調子がよくて人のいい泥棒、という感じだが、後半は人物の深さの表現に大劇場とは別の「冴え」を感じた。前半のカリブの海のような広い「優しさ」と、後半の彼が背負ってきた「人生」というものが段々と一体化してダグという人物を魅力的にみせることになっていた。昼の部は「満員御礼」にする力はさすが実力に裏打ちされたものか。調子がよかったらいうことはないのだが。（帰ってきて来年ドラマシティで彼女の念願の『赤と黒』をやると知って、柴田先生の脚本にあたってよかった、とファンとしては思った）

　遠野あすか（ジェニファー）。こちらは始めはわざと世間知らずのプリンセスの「振り」をしているのが口調などでよくわかった。そのあと段々と正体について伏線をはっていく計算は上手い。大劇場の初日近くよりずっとよかった。個人的には彼女がダグにいう「あなたは優しい人ですね」という台詞はすごく温かく、彼女の純粋さがわかるので好きだ。安蘭にあわせて芝居を変えているところもあちこちでわかった。

　涼紫央（セルジオ）。大劇場の柚希礼音とは大分違った。柚希がのりのいいそこらへんのあんちゃんで金儲けのためなら舌先三寸で人を使うような人物に観えたのに対し、涼は自分というものはきちんとあって、ダグのことは心から親友と思っていて、ダグを使っているようでダグのためによかれと思って行動しているところが特に病院のシーンで明らかだった。

　綺華れい（マックス）。こちらは本当にプリンセス暗殺をたくらみそうな「粋」な人間に見えた。もう少し最後の顛末を話すところは落ち着いたほうがいいか。

　花愛瑞穂（アナ・マリア）。ダクを捕まえようとする執念より、ダグへの恋心のほうが目立った。もう少し強さをだしたほうがいいのでは。

ロマンチック・レビュー
「ネオ・ダンディズム！Ⅱ」－男の美学－
作・演出／岡田敬二
＜解説＞
　宝塚の男役の美学を追求した、ロマンチックでエキサイティングなレビューで、2006年湖月わたるを中心とする星組で上演し、大好評を博しました。今回は、作品の持つ色合いはそのままに、新生星組のために新たにリメイクしての上演となります。

＜感想＞
「ショーというものの独創性の大きさ」

　プログラムをまずみると、「ポゴシップタ」のソロの場面以外全部このメンバー用の場面ではないのである。いわば「借り物」のような状態だが、実際観ると、ちゃんとこのメンバー用のショーになっていてよかった。それだけショーは演じる人の個性が強く現れるものなのだな、と痛感した。

　岡田先生の「ロマンチック・レビュー」シリーズは博多では初上演、ということだが、宝塚を代表するこのシリーズが博多座でいままで上演されなかったことは不思議だ。「宝塚のショーはこういうパターンの重なり」、いわば「宝塚イズム」が凝縮されたようなショーなので博多のお客さんは喜んでいただけるか、あまりの「宝塚イズム」に寒気を感じられるかのどちらかだろう。ただ、「今回の出し物は良いので、２回観た」とトイレで話しておられるあちらの言葉の方もおられたので、「これが宝塚のショーだ」ということで楽しんでもらえたのではないか。個人的には大劇場でやってほしいくらいの内容で「博多だけではもったいない」と思った。

第１章　オープニング
　昨年の大劇場で上演されたショーのオープニングとしては白眉のものだとおもうが、やはり人数が少ない。しかし、同じ歌でも、真矢みきさん、湖月わたるさん、そして今回の安蘭、と歌う人が違うとこうも変わるのか、と頭から感じられてわくわくしてきた。

第２章　ネオ・ダンディズム
　はじめの「ダンディズムとは」の説明はなくてもいいと思うが、そのあともここが一番個性が出ない場面だと思う。遠野が全般を通して楽そうなので、娘役の名場面「デイジー咲くころ」が面白かったと思うが。

第３章　アディオス・パンパミーア
　昨年は広々とした草原が広がっている感じだったが、今回は空っ風が吹いている中で祭りをしているような感じだった。さよなら公演でなくなったので、「アディオス！」の最後の歌詞も「またな」という感じでからっとした印象。

第４章　キャリオカ
　ここも人数が少ないところはどうしようもないが、それなりに盛り上がる。ここも「安蘭版」という感じで「軽い粋」という感じ。

第５章　明日へのエナジー
　これを再演する、と聞いただけで「大変だな」と思ったが、人数が少なくてもここが一番観客の熱気が高まっているのを体感できた。場内の温度が上がっているのではないかと思うくらい。千秋楽ぐらいはアンコールがあるだろう。熱演するメンバーに拍手。

第７章　ポゴシップタ～ボレロ～スーパー・デュエット
　これは観劇している分にはいいが、安蘭けいのことを考えると正直人使いが荒いような気もする。ただ、観劇したときは声の調子が良くなっていて、安心して聞けた。デュエットダンスに大技はなくなったが、まあこれは人によるから博多のひとはこれで満足してください、というところ。その代わり歌がいいでしょ、といいたいところ。

　８月ということでお子さんの姿も目立った。彼らが目をキラキラさせて客席に下りてくるスターをみているところをみると、「宝塚も安心だな」と思った。10年もたたないうちに、「博多座で始めて宝塚を観て音楽学校を目指しました」というジェンヌが出てくることだろう。劇団としてはキツいスケジュール・予算だろうが、８月に博多で１ヶ月公演をする価値は充分ある。TCAスペシャルがなければ、このあと沖縄をまわればいいと思うのだが。なによりも出掛けたかいはあった。
　　　

博多座 「シークレット・ハンター」「ネオ・ダンディズムⅡ」

博多座　「シークレット・ハンター」「ネオ・ダンディズムⅡ」