星組大劇場 「さくら」「シークレット・ハンター」

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443. 星組大劇場 「さくら」「シークレット・ハンター」

ユーザ名: 金子
日時: 2007/4/13(20:56)

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 今までファンになったスターがトップに就任するのにこれほど待ちわびたのは安蘭けいは初めてである。1回目観たときはウルウルしてしまいました。

星組 宝塚大劇場
3月24日→1階21列45
4月12日→1階6列49(友人と)

宝塚舞踊詩
『さくら』−妖しいまでに美しいおまえ−
作・演出/谷正純

<解説>
 見事に咲き見事に散る、その潔さが日本人の心を捉えてやまない「桜花」。その妖しいまでに美しい世界の中で、愛を、生命を謳歌する人々の姿を描いた舞踊詩。この公演は星組新主演コンビ安蘭けい・遠野あすかの大劇場お披露目公演となります。また、この公演で第93期初舞台生がデビューします。 (ちらしより)

<感想>
「すぐに過ぎる50分」

 久しぶりの日本物のショー、初演出の谷先生、ということでどうなるのかな、と思ってみたが、あっという間に終わってしまった。プロローグとフィナーレの間は明るい場面と重い場面が交互に出てきて、緩急はついていると思う。ただ、東京千秋楽は7月ということで、季節を限定してしまったのが惜しいかな、大劇場ではぴったりの季節感なのだが、というところである。星組の皆さんも大分メイクを研究されたようで、「そのメイクは勘弁して」という人はいなかったのはこの組の団結力のなせる業か。しかし、2回以上観るとなると、やはり「節句人形」の場面はつまらなくて、流してみてしまった。圧巻はフィナーレ。これぞ宝塚の日本物ショーという感じである。80点。

第1〜4場 プロローグ
 全員が居並んでライトが入るいわゆる「チョンパ」の幕開きである。これは観光客からは「わあっ」という声が上がり、これぞ宝塚。ここから安蘭けいの歌がさえる。彼女のファンとしては、センターで歌っていることがなんだか信じられなくて、だんだん「ああ、主演男役になったのだ」と感慨が押し寄せてきた。遠野あすかも一生懸命安蘭についていっている感じで好感が持てる。

第5〜11場 節句人形
 いじめ役の柚希礼音のお内裏様が自己中心的で面白い。彼女のニンかもしれない。ただ、ねずみの衣装は安っぽく見えて、人数を減らしてもいいからもっと凝ったものにして欲しい。子供さんが飽きないように作った場面かな、という印象。

第12〜15場 竹灯籠
 初め後ろの透明の竹を表したセットが安っぽく見えたのだが、色が変わるから透明なのだ、と観ているうちに分かった。ここは安蘭のぱーんと歌い上げる歌が聴き物。花組の春野寿美礼と安蘭の歌声は対照的だと思うが、前者の包み込むような歌声と、後者の音符を正確にたたくような歌声は聴く人の好みだと思うが、現在の宝塚の誇れるところでもあろう。

第16場 オペレッタ狂言 花折
 ここは涼紫央が活躍。酒に酔わされて、桜の枝のお土産まで渡してしまう寺の見張り係をスケール大きくコミカルに演じている。2回目観たときはさらに酔ったところがグレードアップしていて、面白かった。完全に彼女の場面。

第17〜20場 さくら
 やはり見所はここだろう。主なメンバーの特注の衣装は綺麗だが、他の人との差が出てしまったのは惜しい。さくらの花びらの紙をまくのも、だんだん良くなってきたように思う。2回目観たときは、「花の道」のさくらが散り際であったので、劇場から出て余計風情があってよかった。季節感に問うものなので流石に8月の博多は無理だろうけど。スケジュール的に余裕があったら、東京も博多と同じ洋物ショーのほうがよかったと思う。

ミュージカル
『シークレット・ハンター』−この世で、俺に盗めぬものはない−
作・演出/児玉明子

<解説>
 1930〜40年代のカリブ海に浮かぶ島々を舞台に、泥棒で詐欺師のダゴベールこと、通称“ダグ”が、「或る女を盗み出すこと」という奇妙な依頼を受けたことから始まる、詐欺師とプリンセスとの恋物語。
 「この世に盗めぬものはない」と豪語するダグは、情報屋のセルジオから「或る女を盗み出す」という依頼を受ける。一風変わった依頼に戸惑うダグだが、自ら広げた宣伝文句がある以上断ることも出来ず、ついにその仕事を引き受けてしまう。
 その女性が現れるというパーティ会場へ忍び込むダグ。ダンスの時間になり、踊りながら彼女のもとへ辿り着いたダグは、見事彼女を外へ連れ出すことに成功する。だがその途中慌しく伝えられるニュースで、ダグが見たのは「パラス・アテナ国の王女ジェニファー、何者かに誘拐される」という記事であった。その王女こそ、今彼の隣で、ハンバーガーを口一杯に頬張ろうとしている彼女その人なのである・・・・・。
 面倒なことに巻き込まれるのは御免だと、ダグはセルジオのもとへ彼女を送り届けようとするが、当のジェニファーはもう少しだけ普通の女性としての生活を味わわせて欲しいと言う。一日限りのカリブのデートを満喫し、約束通り彼女を送り届けようとした時、何者かがダグたちを襲う。彼らの狙いは、明らかにジェニファー一人であった。そんな彼女をダグは身を挺して守り、ついに追っ手を振り切る。その日から、ダグとジェニファーの不思議な逃亡生活が始まった。ダグを追う警察と、ジェニファーを追う殺し屋から逃れ、美しいカリブの島々を巡り渡る二人。しかし不思議なことに、どの島にも何故か必ず彼らを窮地から助け出してくれる協力者がいた。
 だが、そんな奇妙だが幸せな生活にも、終わりを告げる日が近付いていた。ジェニファーを追う殺し屋と、彼らを捜す警察に挟まれ、とうとう逃げ場を失ったダグは、ジェニファーを守るため、自首することを決意する。警察隊へと向かうダグたちを、敵の銃弾が襲った。ジェニファーを守るダグの身体を弾丸が貫く。薄れ行く記憶の中で、ダグは信じられない光景を見る・・・・・。(ちらしより)
 
<メインキャスト>
ダゴベール(ダグ)〔“この世で、俺に盗めぬものは無い”と豪語する、カリブ海一帯を股に掛ける、泥棒〕:安蘭けい
ジェニファー〔カリブ海に浮かぶ、とある島の宗主国である、パラス・アテナ国の王女(プリンセス)。幼い頃に皇太子であった父親を暗殺されている〕:遠野あすか
セルジオ〔いつもダゴベールに“仕事”の依頼を持ち掛ける情報屋で、一番の親(悪?)友〕:柚希礼音
ジョエル・ロビュション〔通称“男爵”。フランス人の腕利きの殺し屋〕:立樹遥
マックス〔パラス・アテナ国の王族に仕える護衛(ボディガード)。同じく護衛(ボディガード)であった父を、ジェニファーの父と共に殺された過去を持つ〕:涼紫央

<感想>
「どこかできいたような話が次々出てくるものの・・・ただのラブ・ファンタジーにあらず」

 初め、概要を知ったときは「『ブルー・スワン』(花組・バウ 97年)再び?あれはなんてことのない話だったよな。実力のある新主演コンビに見合う作品になるのかしら?」と思った。で、結果であるが、まああちこちで「どこかで聞いた話」はでてくるものの、上手く伏線を張ってひねってあって、きちんとメッセージ性も含んだ作品になっていて、2度目観るほうが面白かった。児玉先生大劇場デビューとしては上々の立ち上がりではないかと思う。

 しかし、役が少ないなど難点はある。その代わり新研1を生かすなど、大人数を上手く回そうという意図は見える。フィナーレナンバーが短いのはちょっと残念だが、博多まで考えると仕方の無いことか。90点。

 安蘭けい。ここからは金子がファンだということを差し引いて読んでいただきたいのだが。彼女の演じるダグの存在感は大きい。主演となってどうなのだろう、と思ってみていたが、しっかりとした人物像を観客に訴えかける。このダグという役は、ジェニファーと楽しんでいるところもあれば、不器用な生き方しか出来なかった父親に自分の生き方を重ねて「人間には弱い人間もいる。人生は完璧ではない。やり直すことが出来る」という今日的な人生観を語るところもある。安蘭はまさに緩急自在。特に心情の表現は深くて心に残る。実際のところ、この役は安蘭に「当て書き」されたような役だろう。彼女の明るさと深遠さ、今までの宝塚での歩み、これらがダグにかぶさっているように2回目観たときは思った。最後に「宝物」を手に入れるダグ。それは他でもない彼女の夢の「主演男役」の位置に他ならないとみえてしまった。現在他の4組はすべて関東圏出身の主演男役だが、今回ジェニファーを着替えさせるところなどを観ていると、「ブルー・スワン」の影響もあるのかもしれないが、元花組トップの真矢みきにすこし似た印象を覚えた。赤の衣装は真矢並みにお似合いである。毎公演着てもらいたいくらいだ。とにかく主演男役就任おめでとうございます。

 遠野あすか。ジェニファーは常に王女の替え玉として生きている女性で、「自分らしく生きたい」「どうしてこんな人生を歩まなくてはならないのか」と心に葛藤を抱えているものの誠実に生きている女性である。1回目観たとき、「割と庶民的な感覚を持つ王女だな」と思ったが最後にどんでんがえしがあり、なるほどと思った。2回目に観たときは、ものすごく「替え玉」であることの伏線を張った演技で、感心した。本物を守るため自分というものがない、などということは考えるだけで苦しい人生であることを観客に示した。歌は最後の銀橋の白いドレスでの歌は高音が美しい。この主演コンビなら版権さえとれれば、早く「エリザベート」をやって欲しいと思うのは金子だけだろうか。

 柚希礼音。豪快で親分肌のセルジオは彼女に良くあっている。2番手といっても主役コンビの出番が多いので、これといってないが、フィナーレのダンスは目を引く。これからの彼女に求められるのは、やはり繊細な心理描写の演技だろう。

 立樹遥。一番の悪人だが、自称「男爵」というように優雅さと執念深さの対比がよく効いていた。部下がまったく戦力にならないというのはおかしいが。

 涼紫央。一見ジェニファー暗殺の黒幕、に見えるのだが、実は一番王室を思って行動している人物。初めのダグの盗みの様子を見て考えるところや、セルジオを脅す振りをしたり、最後までその行動の意図を読み取らせず、なかなかの出来だった。ショーともども存在感があった。

 この後2作「お披露目公演」がつづくが、あと2作は完成された作品なので、出演者しだいなのだろうな、と思う。今回はこの辺で。


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