宙組ドラマシティ 「A/L」(アール)

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441. 宙組ドラマシティ 「A/L」(アール)

ユーザ名: 金子
日時: 2007/3/27(15:13)

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宙組 シアター・ドラマシティ公演
3月26日→11列32 (お安く譲っていただきました)

『A/L』(アール)−怪盗ルパンの青春−
作・演出/齋藤吉正

<解説>
 モーリス・ルブラン著「怪盗紳士」をもとに、文学界が生んだヒーローの一人、アルセーヌ・ルパンの生い立ちから怪盗へと至るまでを描いた冒険活劇。明るく躍動感に溢れ、クラッシックな雰囲気が漂うミュージカル作品。
 19世紀末。パリ近郊の城館では、その日も、スーピーズ伯爵夫妻主催の夜会が華やかに催されていた。伯爵夫人が登場すると、客たちの目はその胸元に釘付けとなった。ダイヤモンドが輝く「王妃のネックレス」。マリー・アントワネットの首を飾った伝説のネックレスである。伯爵家の親戚にあたる貴族ローアン枢機卿から譲り受けたという。
 夜会の翌朝、伯爵夫人はネックレスが盗まれたことに気付く。一人息子ラウルと共に城館に身を寄せていた女中のアンリエットが容疑者として浮上するが、結局、事件は迷宮入りする。容疑をかけられたアンリエットとラウルはパリを離れ、それ以来二人の消息を知る者はなかった。
 それから10年。ソルボンヌ大学創設以来の秀才と謳われる青年が、街の話題をさらっていた。その男の名はラウル・バラン。アンリエットの息子ラウル、その人であった。事件後間もなく母親は他界。ラウルは乳母のビクトワールと再会し、彼女の援助で教育を受けた。ビクトワールは作家で、彼女が書いた「怪盗紳士」はベストセラーとなり、その主人公であるアルセーヌ・ルパンは国民的人気を誇っていた。ラウルにはビクトワールにも言えない秘密があった。彼の引き出しにはあの首飾りがあった。正妻でないアンリエットのために、ローアンは首飾りを手渡し、スーピーズ伯爵に母子を託してこの世を去った。しかし二人を待っていたのは、宝石に目がくらんだ伯爵夫妻の欲望であった。ラウルの心には、伯爵夫妻への拭いきれない遺恨があった。すべてを察していたアンリエットは「王妃の首飾りはスーピーズ奥様のもの・・・・・必ずお返しするのです」という言葉を残して息を引き取る。ラウルはその言葉がずっと気にかかっていた。
 そんなある日、事件は起こった。「怪盗紳士」の発売禁止。スーピーズ伯爵の仕業だった。ビクトワールとアンリエット、ラウル親子の関係を知った伯爵は、未だ首飾りの犯人をアンリエットと信じ込んでおり、盗みを犯す主人公が人々に賞賛されることが許せなかったのだ。この出来事が、ラウルに伯爵夫妻への復讐心を目覚めさせた。「怪盗紳士」を奪い返すため、ラウルはスーピーズ家に挑戦状を送る。「伯爵の宝物アニエス嬢を頂きに参上参る。怪盗アルセーヌ・ルパン」ラウルは「怪盗紳士」の主人公アルセーヌ・ルパンとなり、伯爵夫妻に立ち向かうのだった。 (ちらしより)

<メインキャスト>
ラウル・バラン(A/L)(パリ大学ソルボンヌ校にて科学を学ぶ明るく聡明な学生。実は“怪盗紳士アルセーヌ・ルパン”):大和悠河
アニエス・ド・スーピーズ(将来を嘱望されるバレリーナ。お転婆な女の子):陽月華
ルイ・アントワーヌ・レオン公爵(資産家。アニエスの婚約者):悠未ひろ
シャーロック・ホームズ(ロンドンからやってきた名探偵):北翔海莉

<感想>
「漫画から抜け出したような主役が演じる漫画のような話」

 劇場に入ると、ルパンとアニエスの可愛い漫画が描かれた紗幕が下ろされていて「ああ、こういう漫画みたいな感じ?」と思ったが、結局人が演じる漫画で終わってしまった印象。

 なにが漫画かというと、テーマがないことである。一応主人公の初恋と別れがテーマなのだろうが、なぜラウルはアニエスをあきらめるのか、彼の心情が書き込まれていないのでこちらへ訴えかけるものが無いのである。こうなれば、物語をもっとシンプルに刈り込んでルパンの縦横無尽の活躍というファンが溜飲を下げられるような冒険活劇にしてしまうか、主人公の心理描写やポリシーなどメッセージを盛り込んでエンターテイメントに仕上げるかのどちらかを取るべきだと思う。そのどちらでもないので中途半端な印象を持った。予想並みの内容、技術であった。

 これを観劇した前々日に星組大劇場「シークレット・ハンター」を観たが、こちらは笑いありシリアスな場面あり、主人公の現代に通じるポリシーあり、最後はハッピーエンドと盛りだくさんでエンターテイメントとしては比較してしまうと星組に軍配が上がると思う。

 矛盾点は多くある。ラウルはソルボンヌ大学の優秀な学生ならば、教授の知恵を借りずとも恩人のためならば自分がルパンになることくらい考え付くだろうし、また昼間街中で顔を隠しているのはアニエスに指摘されずとも悪目立ちだ。「ルパンではありません」と堂々としていればそれで済むと思うのだが。それに最後のルイとの立ち回りになるとフェンシングがばりばりに出来るというのはいつ練習したのだ?と突っ込みたくなった。一番疑問が残るのは、ラウルの乳母のヴィクトワール(美風舞良)である。ラウルの母とローアンの家でどのような関係にあったのか、いつから「怪盗紳士」を執筆していたのか(ラウルの少年時代に本を刊行していたという設定ではこちらを専科の光あけみさんにやってもらうべきでは)、ラウルをどういう経緯で引き取って資金の面はどうしたのか、突っ込みどころ満載の人物である。また敵のルイであるが、スーピーズ家より身分は高いし、名誉もあり、株の裏取引もやっているのだから、「王妃の首飾り」くらいのものにそんなに執着するのだろうか?確か本物はアントワネットをだました連中が手に入れてばらばらにして売りさばいたはずで、どうやってもとの形を取り戻したのか?最後にホームズも若き日、ということだが、別にホームズを持ち出さずとも、架空の名探偵でよかったのではないか?

 最後に衣装は一見して有村先生のものとわかる衣装だが、新調のものは少々時代に比べてモダンすぎて、ほかの衣装との差が見えてしまった。55点。

 大和悠河。今回の役は脚本に人物の書き込みが少ないので少しかわいそうかな、とおもうところもある。こうなればもう格好良く決めるしかない。しかし、ルパンのときは上に書いたように彼女の美しい顔が半分隠れているし、衣装も裾が長すぎて動きにくそうで、ファンならば演出家にうらみつらみいいたいところだろう。彼女は早くからスター候補生でありながらよくここまでがんばったと思うが、彼女を生かすも殺すも脚本次第、ということを痛感した。一番のネックは歌で、もうこの立場では歌詞が分かるように歌っていただきたい。ビジュアルに関しては、鬘の都合があるようだがラウルのときから長髪というのは当時のソルボンヌの学生としてありなのか、と思った。ルパンのときだけ長髪か、いっそ髪の色を変えるといったビジュアルの変化は宝塚ファンとして彼女に期待するところだ。それと、全席完売でないから仕方ないとしても、どうみても熱心なファンクラブのメンバーが座っていると思われる最前列だけ視線の集中砲火というのはいかがなものか。後段(16列以降)は取り残されてしまう。大劇場ではやめていただきたい。

 陽月華。“お転婆天使”という設定だが、これが予想そのもので、なんとか彼女にちがうイメージの役をあててもらえないか、と思った。親にいいように振り回されて、カフェにすらいったことの無い不自由で不満が多い毎日を過ごしている彼女が、幼いころからあこがれていたルパンの出現によってひとときの自由を満喫する。しかし、最後はラウルと別れバレリーナとして華々しくデヴューする。最後ラウルが待っていてくれないと知り、悲嘆にくれる場面はこの人らしく可愛かった。ただ、将来有望なバレリーナという設定ならば、「歌劇」に案があったように、1場面でもトウシューズで踊って欲しかった。それがないということは、やはり劇団側としてはダンスが売りの彼女に怪我をされたくないからかな、と思った。今望むことは怪我だけは避けて欲しい。大和とのコンビは相性がよさそうなのでこれからに期待する。

 悠未ひろ。村上世彰被告に若さと身分と地位を足したような人物だが、この人はその背の高さが威圧感となり悪役が似合う。ただ、もっとどろどろとしているところと、善人のふりをしているところとの対比が効くと面白いと思う。演じ方では面白くなる役だ。

 北翔海莉。渋いイメージがあるシャーロック・ホームズの若き日だが、あの定番のスタイルで踊られるとなんとも不思議なのだが、一見ただの旅行者のようで、実は頭脳明晰、という設定は北翔の外見や物言いと芸とのギャップを投影しているようで面白かった。しかし、ホームズで無くともこの設定ならフランス人のばりばりの名探偵で充分だったのでは。幕が開く前から大活躍で印象に残る。

 最後に和音美桜の歌と台詞は非常に聴きやすく、このメンバーのなかでは清涼剤であったことを書いて終わる。


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