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436. 月組大劇場「パリの空よりも高く」「ファンシー・ダンス」
ユーザ名: 金子
日時: 2007/1/21(15:33)
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こんにちは。ドラマシティに行った後だと、大劇場の機構の良いのを再確認。ちなみに新歌舞伎座の松井誠の「くらわんか」も観ましたが、宝塚のほうがずっと上等なのにびっくり。それと、松井さん、いくら宝塚がすきでも羽根しょうのはやめてください。あれはやっぱり女がしょうものです。
月組 大劇場公演
1月15日→1階6列81・82(父と)
1月20日→2階2列22 (お安く譲っていただきました。すみません)
宝塚ロマンチック・コメディ
「パリの空よりも高く」 −菊田一夫作「花咲く港」より−
脚本・演出/植田紳爾
<解説>
菊田一夫の名作「花咲く港」をモチーフにした、初春らしい明るく華やかなコメディ作品。
1887年、パリは2年後に迫った万国博覧会の話題で賑わっていた。1851年にロンドンのハイドパークで第1回が開催され、続いてパリ。1867年以来2度目の万国博覧会ということで、パリの人々は期待と興味で盛り上がっていた。
パリの場末のホテルに滞在する稀代のペテン師アルマンドとジョルジュは、これを餌に一儲けしようと虎視眈々とその機会を狙っていた。そんな時、ホテルに長逗留するエッフルが夢見ている。世界一高い塔を作りたいという話に閃いた。これを口実に金を集め、持ち逃げしようと企んだのだ。
二人は世界的な万国博覧会の会場に、世界一高い塔を建設するという夢のような話をぶち上げた。しかし、それは思わぬ方向に進んでいく。1867年には水晶宮を作り世界中の話題をさらっただけに、第2回の目玉にしてフランスの国威高揚にしようと、人々は動き出したのだ。二人のペテン師の意図が、純粋な人々の熱意に支えられ、思わぬ方向へと展開していく。
そして、春まだ浅い小雪の舞うサクレクールの丘の上で、見事に出来上がったエッフェル塔を眺める二人の姿があった・・・・。 (ちらしより)
<メインキャスト>
アルマンド・ジャッケ(ペテン師):瀬奈じゅん
ミミ(パリの花売り娘):彩乃かなみ
ギスターブ・エッフェル(建築家):霧矢大夢
ジョルジュ・ジャッケ(ジュリアン・ジャッケの遺児):大空祐飛
ジェラール・ロルボン(ロルボン財閥の御曹司):遼河はるひ
<感想>
「古きよき時代にタイムスリップ」
植田先生の新作ということで、最近は再演物以外これというのがなかったのでどうなのかな、と思ったが、原作が日本を代表する劇作家・菊田一夫氏のものということで少し期待して出かけた。しかし、やはり植田作品は植田作品で、説明台詞の多用、少々難しい熟語(粗相・失敬な、など)がでてきて、結論から言えば1度観れば充分という内容だった。(2度目は隣の人は寝ていた)
プログラムによると、植田先生は「昭和にコダワリ」をもたれているようだが、時代は平成であることはいかんともしがたい事実である。やはり、冒頭にレビューを入れても、話の内容が上演時間に対して薄い、という印象がする。時代的には現代につながる時代で、宝塚といえばパリだから好きなのだが、もうひとつ筋が加わるといいと思った。個人的にはミミが実はアルマンドたちの上前をいくペテン師で、正体がばれつつエッフェル塔建設に協力するうちに恋が芽生えるとか。昭和の筋をそのままやっていては、多様化し、現実に近くなりゆく宝塚の芝居としては苦しいと思うのだが。
あと、月組は瀬奈・霧矢・大空と3人が強力なタッグを組んでいる組なので、配役はこれでいいと思うが、もう少し自由なシュチュエーションコメディにしてアドリブなどを入れられるようにしてもらったほうが楽しかったかな、と思う。ファンとしては「コメディ」と銘打たれたからにはそちらのほうを期待して出かけたのだが。
音楽は主題歌の最近の主題歌では珍しいくらい一度で覚えられる曲でいいと思うが、やはり、彩乃・霧矢・大空の3人も銀橋の歌が欲しい。本編では音楽が少なく感じられた。
新年の作品としては明るくて観光の団体向けだと思うが、もうひとつ奥深さが欲しいところだ。70点。
瀬奈じゅん。エッフェル塔の話で金の持ち逃げをたくらむものの、最後には欠損してまで塔建設に協力してしまう、所詮悪党になれないペテン師。闊達に膨大な台詞をこなしながらも、「金を持ち逃げしたらエレノールが悲しむだろうな」と期待にこたえたいと思うところや、最後に堅実に生活しているミミには自分はふさわしくないと引くところは人物の良心を感じさせた。
彩乃かなみ。ミミは弟と二人花を売りながら堅実に生きている女性で、そんな彼女の誠実さやけなげな態度に3人にほれられてしまう、もう今の宝塚では古典的といっていいヒロイン。彩乃はその美声に加えて、ドレスで着飾れる役柄でもないのに、心の美しさが伝わってきた。一度彼女の悪女など観てみたいのだが。
霧矢大夢。ギスターブは建築のことを話すとき以外は訥弁で、思いを上手く他人に伝えるのが下手、といういかにも技術者にありそうな性格で、また人をすぐ信用してしまう人のよさも併せ持った人物である。終盤の「アルマンドたちを捕まえないでください」と必死に訴えるところは彼の人物像をあらわしており、霧矢も説得力がありよかった。
大空祐飛。ジョルジュはアルマンドなしではどうにもならず、気が弱く、あまり戦力にもならないペテン師だが、そんなジョルジュをアルマンドは実は信頼している。大空というとアダルトな役柄が似合う人なのだが(フィッツジェラルド役はよかった)、今回はいつもとまったく違う面を見せてもらえてなかなか楽しかった。瀬奈との相性はオフの関係もあるのか抜群。
遼河はるひ。利益至上主義でなにかあると株主のことを心配してしまう、現代の経営者に通じるような財団の御曹司で、少し間違うといやみな人物に見えてしまうのだが、塔の話に出資できないといらつくところや、塔の構造を聞いてへんな驚きの声を上げるところなど、ちょっとぬけたところもある人物になっていた。
最後に、新組長・出雲綾のどっしりとした安定感と、未沙のえるの味は欠かせない芝居になっていた。
レビュー・ロマネスク
「ファンシー・ダンス」
作・演出/三木章雄
<解説>
ショーの華であるダンスの魅力にスポットを当て、バレエの名作をモチーフにしながら、夢を掴もうとする男たちの熱い思いを、瀬奈じゅんのソフィスティケイトで、ナイーブかつエネルギッシュなショーマンとしての魅力で追求するショー。 (ちらしより)
<感想>
「瀬奈さん、ようおどらはるわあ」
全体的にジャズが多いバラエティ・ショーだとおもう。プロローグ・中詰め・フィナーレ以外はほとんどバレエの題材を、状況を変え、タンゴにジャズにアレンジしてあり平均的なショーだと思う。「この場面を観たいから通いたい」というところもなければ、「この場面はダメだ」というところもないという感じだ。
ただ、主演男役瀬奈じゅんが中詰め前から急に出番が続く、という構成はどうだろう。やはり、霧矢大夢か大空祐飛中心の場面のどちらかは中詰めの後にもって来るべきだと思う。75点。
しかし2階から観劇して思ったのだが、宝塚大劇場はかなり優れた劇場機構を持っている。セリや盆のみならず、大階段、布がさっと落とされるところなど、これほどの劇場は関西では1番ではないか、と思う。その上生オケである。今回のショーはベテラン三木先生だけに、大劇場の機能を使えるだけ使っている感じがしたが、同じ2階で観た「タランテラ!」のときはそういう感じがしなかっただけに改めて演出の先生には劇場をフルに使っていただきたいと感じた次第である。
第1〜4場 ファンシー・ダンス〜オン・ザ・ビート
静かなジャズから始まり総踊りへと続き、観ているほうもテンションがあがっていくプロローグ。舞台が少し八百屋になっていることで、1階席でも後ろのメンバーまで良く見える。
第5〜7場 アイ・ワナ・ダンス
ここはバレエの筋の場面でもないし、結局チャンプは譲ってしまうのか、という感じだが、大空祐飛初の中心の場面ということでなんとなくそれに目を奪われて終わってしまう。次の場面も黒の衣装が使われるし、衣装の色だけでも変えて欲しいのだが。
第8〜10場 タンゴ・ノワール〜ペトルーシュカより
はじめに説明があるので筋は良く分かり、霧矢大夢も人形の振りは上手いが、まあそれだけ、という場面。遼河はるひのムーア人はなかなか押し出しがある。城咲あいがぐっと大人っぽくてよかった。
第11〜13場 ラスト・ダンス〜オルフェより
退廃的な町に迷い込んだ瀬奈じゅんが、人々に巻き込まれていくうちに恋人は去ってしまうという話。彩乃は髪型に一考ありだが、退廃的な感じは良く出ていた。ここで低音でブルースでも歌ってもらえたらな、と思っていた。場面の最後には瀬奈が1人舞台で踊るのだが、お披露目のショーからこれは月組の売りだと思うので、毎公演観たいところ。しかし、ここから出番が続きすぎる。
第14〜18場 ダンス・ウィズ・ミー!
映画の黄金時代を背景にし、ジャズの古典的名曲をずらりと並べた中詰め。ダレン・リー先生の振りはステップが細かくて他の先生との違いが良く分かる。それに加えて曲を聴いているだけで、アメリカ、という感じが一番する場面だ。
第19〜21場 パープル・ヘイズ〜シェラザードより
上にも書いたが、2階から見ているとアメリカから一転してハーレムになる舞台機構も大劇場ならでは、と思う。彩乃のシェラザードが美しい声に相手を包み込むような母性を感じさせて印象に残る。
第22〜24 フィナーレ〜オン・ザ・メロディ
定番の黒燕尾の大階段での男役の総踊りをむしろはずして、白手袋での群舞だったが、これはまた新鮮でよかった。最後の3組のデュエットダンスは久しぶりの登場で安定感あり。
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