宙組バウホール「UNDERSTYUDY」

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427. 宙組バウホール「UNDERSTYUDY」

ユーザ名: 金子
日時: 2006/8/21(10:00)

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宙組 宝塚バウホール公演
バウ・ミュージカル
「UNDERSTUDY」
作・演出/谷正純

8月20日→い 17

<解説>
 1930年代、ロンドンのウエストエンド。古ぼけた一軒のパブを舞台に、舞台への夢を紡ぎ続けるアンダー・スタディ(代役)たちの青春群像を描く。

 今シーズンのウエストエンドの話題は、史上最高のシェイクスピア役者と賞賛されるサー・エドワード・トービーのシェイクスピア劇の連続公演と、新作ミュージカル『アイバンホー』に二分されていた。
 アレックにとっても、このシーズンは特別なものとなった。すべて科白もない役であったが、シェイクスピア劇の連続公演に出演出来るのだ。演劇学校は卒業したものの、仕事を探してエージェントを回る日々が続いていた彼にとって、仕事が貰えただけで喜びだった。そして何よりも彼を興奮させたのは、『マクベス』の鎧持ちシートンの代役を得たのだ。科白は少ないがサー・エドワード・トービーと芝居が出来る、役者冥利に尽きる代役だった。
 そんなアレックが、終演後に決まって足を運ぶのが、「UNDERSTUDY」と云う名の古ぼけたパブだった。この店の主は、その名前が示す通り、サー・エドワード・トービーの代役を三十年近く続けているケビン、そして常連客のアレックと同様、代役という勲章をぶら下げた若き役者たち・・・・『コッペリア』、村娘の代役を貰ったバレリーナのロージー、『アイバンホー』、ロビン・フッドの代役を得たコーネリアス、『嵐が丘』召使の代役リプケンetc。
 ある日、事件が起こった。『アイバンホー』の初日を間近に控えた演出家が「UNDERSTUDY」を訪れた。ロビン・フッド役の役者がイメージに合わず、アレックに白羽の矢を立ててやって来たのだ。しかし、ロビン・フッドの代役はコーネリアス。アレックが引き受ければ、友人の役を奪ってしまうことになる。悩むアレックに追い討ちを掛けるように、『マクベス』の鎧持ちシートンの本役が怪我で、明日からの公演に出演出来ないとの知らせが入った。
 アレックは『マクベス』を選ぶのか、『アイバンホー』を選ぶのか・・・・。(ちらしより)

<キャスト> プログラムから抜粋
アレック・ロックウッド(「UNDERSTYUDY」に集う代役達の出世頭。「マクベス」で鎧持ちシートンの代役を務める俳優):七帆ひかる
ハーミア・グレンフィディック(バレリーナ):花影アリス
ジュリア・ハサウェイ(ケビンの娘。ミュージカル女優を目指している):和音美桜
グロリア・ロックウッド(アレックの妹。ボードビリアン):妃宮さくら
ロージー・ソーンダイク(人形劇の俳優):千鈴まゆ

<感想>
 「役者ばかへの讃歌」

 CS放送でお稽古の様子を見てあまり興味をそそられなかったので、チケットは持っていたが、さばこうか、と思って劇場に出かけた。すると知人に出会ったので、席番を言うと、「え、いい席じゃない。2回目ならもういい、というところかもしれないけれど、まだ観ていないなら観たほうがいいよ」といわれ、観ることにした。
 
 結果は、普段の大劇場では味わえない、ベテランのいぶし銀と、若手の勢いの両方が感じられる舞台で、観てよかったと思う。

 まず、思うことは劇中劇が多く(3つ)、またそれぞれが長いことである。この機会に歌ではないが「♪学ぼうシェイクスピア」というところなのだろうが、実際のアンダースタディたちの素の部分がほとんど見えてこなかった。1幕は劇中劇と人物紹介で終わっているし、2幕に入ってもほとんどの若者たちの人生が見えてこなくて、劇中劇が長く重苦しく感じられた。テーマもはじめから分かっていて、簡単だった。

 それと、アレックとハーミアの関係はあれで宝塚としていいのだろうか。アレックは最後は妹のグロリアをパートナーとしてボードビルに戻っていくわけだから、余計な恋人などいらないのだろうが、もう少し関係があったらな、と思った。むしろ、グロリアのところを父親にして美郷組長にやっていただいて、ハーミアとともにボードビルの世界に戻っていくほうが面白かったように思う。

 あと、他の作品であったので「何をいまさら」といわれるかもしれないが、ジェンヌに着ぐるみを着せるのはやめていただきたい。子供には受けていたが、個人的にはどうにも嫌だ。

 全体として観るべき所はあったし、ベテランお三方もさすがなので、75点。

 七帆ひかる。まずは、ベテランに引っ張られ、下級生に押し上げられて、無難にバウ単独初主演をこなしたというところだろう。終演後の挨拶を聞いていて、まじめな人なのだな、と思った。アレックの素の部分はアレックのシェイクスピア劇に夢中なところと、彼女の単独初主演に一生懸命なところが重なってよかった。歌もレベルには達している。ただ、やはりシェイクスピア劇は難しいようで、「マクベス」では王位を狙う黒い邪念、「真夏の夜の夢」では若者特有の移り気、「ロミオとジュリエット」では恋に盲目となった青年のすがすがしさ、というものがいまひとつ足りなかったような気がする。まだこれからの人なので、またのチャンスまで「宝塚に夢中」でいてほしい。

 花影アリス。彼女は入団当初から宝塚のヒロインにぴったりの容姿で注目されてきたが、どの部分をとっても「荒削り」なところが目立つ。ハーミアはもともとバレリーナなのだから、芝居は上手くない、といわれてしまえばそれまでだが、ジュリエットにはもう少し情感が欲しかった。二幕の歌も、比較の対象としては酷だが、和音とは同じような曲調なのでレベルが良く分かる。やはり、演技には「緩急」をつけることからはじめて、「情感」が出せるようになってくれれば目指すところは近くなると思うのだが。これからヒロインはたくさん回ってくるだろうが、1つ1つを誠実にこなすことで実力をつけていくしかないと思う。

 和音美桜。マクベス婦人もタイテーニアも押し出し十分で、歌はいつものことながら素晴らしかった。また、ジュリアの部分もプライドが高く、自分の実力を認めてもらえないことを不満に思いながら、それでもオーディションに挑戦していく、という人間としての成長が描かれており、主役についで素の部分があるので、正直ヒロインより印象に残った。彼女の歌唱力の高さは宙組ではおろか、宝塚の財産だと思うし、彼女の資質の高さは誰もが認めるところだろう。ただ、ある人とも話したことがあるのだが、宝塚より外部ミュージカルのほうが活躍できそうな感じがするのは確かだ。

 妃宮さくら。主役の妹、ということで目立つ役だが、美声で溌剌とした演技が印象に残った。髪形は一考を。

 千鈴まゆ。ヘレンのときと、人形劇の内気な少女との演じわけができていて、芝居心を感じた。こちらも美声。

 最後になったが、立ともみさんの軽妙さ、汝鳥伶さんの人生の重さ、そして美郷真也組長のどうにも笑えるパックとベテランなしでは成り立たない舞台だったことを書いて終わりにする。


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