星組梅田芸術劇場「コパカバーナ」

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424. 星組梅田芸術劇場「コパカバーナ」

ユーザ名: 金子
日時: 2006/6/16(15:00)

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星組 梅田芸術劇場メインホール
6月3日→3階1列16・17(母と)
6月8日→1階11列26
6月15日→2階1列26

ミュージカル
『コパカバーナ』
音楽=バリー・マニロウ
作詞=ブルース・サスマン、ジャック・フェルドマン
脚本=バリー・マニロウ、ジャック・フェルドマン、ブルース・サスマン
演出=三木章雄 
日本語脚本・訳詞=高平哲郎
翻訳=青鹿宏二

<解説>
 アメリカン・ポップスを代表するシンガーでありソングライターであるバリー・マニロウが、自身の大ヒット曲「コパカバーナ」をベースに作り上げた、ファンタジックなミュージカル・コメディ。
 若きソングライターのスティーブンは、今日もミュージカル作りに夢中である。妻サマンサとの会話も上の空で、作品の世界「トニーとローラの恋の冒険!」に誘われていく。
 1947年、舞台はニューヨークで一番のナイトクラブ“コパカバーナ”。なかなか芽の出ないソングライターのトニーは、この店でバーテンとして働いている。そこへブロードウェイのスターを夢見てやってきたローラというダンサー志望の女の子が、店のオーディションを受けることになる。トニーは一目でローラに恋をする。
 やがてローラはダンサーとして採用され、トニーも彼女のためにショーアップした曲のおかげでショーの作曲家に選ばれる。大喜びの二人。
 しかし、ハバナでナイトクラブ“トロピカーナ”を経営している冷酷で女たらしのギャング・リコがローラに目をつけた。
 さて、スティーブンは、このミュージカル、どのように展開していくことやら・・・・。
(ちらしより)

<メインキャスト>
スティーブン(若きソングライター)/トニー・フォルテ(美貌と才能に恵まれた若者。昼は売れない作曲家で、夜は「コパカバーナ」で働いている):湖月わたる
サマンサ(スティーブンの妻)/ローラ・ラ・マール(ブロードウェイ・スターという叶わぬ夢を抱く若く可愛い娘):白羽ゆり
リコ・カステッリ(ハバナの「トロピカーナ」を経営する紳士だが危険なギャング):安蘭けい
コンチータ・アルヴァレス(長年、リコの女として悩み続けているラテン系悩殺美女):遠野あすか

<感想>
 「おーい、3階席まであるんだよ」

 初日に3階席で観た。終わって「おーい、ここまで届かないよ」と思うと同時に、昨年月組のこの劇場での『アーネスト・イン・ラブ』を観てした「昨年と同じ思い」が2つした。それは後で。それより、初日・2日目(これは知人からの情報)だが音響が悪すぎる。前に集中しなくてはならず、ものすごく疲れた。初日英語詞だと思っていたところが、後日1階席で聞くと日本語詞だとわかったほど。

 ナンバーはすべてもともと歌謡曲のようだからスケールに欠け、圧倒的なメロディラインがある曲がない。宝塚のショーで聴く曲はおおく、覚えやすいことは認めるが。やはり、インパクトのあるのはタイトル曲だけのような気がする。ただ、曲に関してはかなり好みが分かれると思うが。

 日本語脚本・訳詞は『雨に唄えば』と同じ高平先生だが、日本語脚本においてはアメリカンジョーク(出身地があだ名のところか?)や日本語としての語感(例「あなたの腕はごきげんよ」「僕はナイス・ガイだろ?」)に少々現代語との違和感を覚えた。また、訳詞も原詞にならってか韻を踏んでいたが、(「♪夢ではないきみ」)、今まで宝塚においていろいろな訳詞を聴いてきたが、総じて、韻の多い英語詞に準ずるより全体を捉えたほうが、日本語として収まりがいいと思う。また、タイトルも「♪スウィート気分」などは日本語として変。オリジナル版実況CDを売るより、プログラムに原題と曲の特徴(いつヒットしたとか、曲調の説明)の解説にページを割くべき。

 「昨年と同じ思い」その1。都心の3階席まである劇場でこのような小粒の作品ではだめであるということだ。一度考えていただきたいが、「梅田コマ劇場」時代、主に大地真央・一路真輝が主演して上演してきた作品はなんだったか?いわゆる「大作」というやつである。となれば、オン・ブロードウエイの作品またはウイーンミュージカルとなる。やはり、大作でないと3階の客まで満足できないのである。3階席にいても「ミュージカルを観た」という気分に客をさせられるものでないと困るのである。「3階にいて遠くて音が聞こえなくて疲れた」という今回はいかに初日とはいえ、決して望ましい作品選択とはいえないと思う。(2階4列に座ってらっしゃった岡田敬二先生。2階の客の入りを見てどう思われたのでしょうか?)問題は著作権料なのだろうが、梅田・博多・日生と回せばなんとかなるのではないか?そう考えると今年の日生の『オクラホマ!』は、はじめは「現代のテンポにできる?」と思ったが、やはり古典でも映画化、スタンダードナンバーになった曲が多数あるということで脚色しだいでこれのほうがいいのかもしれないなどと思えてきた。博多座も轟悠の問題さえなければ『オクラホマ!』のほうが劇場の大きさを考えるとあっているかも。でも、この『コパカバーナ』、絶対3階席でなどごらんにならない偉い評論家の先生たちは「ボーイ・ミーツ・ガーツの王道を行くポップなミュージカル」とかおっしゃって、昨年の『アーネスト〜』とおなじくらい高評価をだされるだろうな。1階席で観ると楽しいもの。

 「昨年と同じ思い」その2。今回、筋というか話はあってないようなもの。トニーとローラが互いに売り込むところなどテンポが悪い。テンポアップして1時間半にできるのでは?そのあと45分でもショーをしてほしい。「梅田で宝塚」ときいたら、「ああ、大劇場までいかずに、宝塚のショーが気軽に観られるのか」とあの近辺のオフィスの人たちはまずそう思うのではないのだろうか。1度3階席に修学旅行の男子高校生をみたのだが、「宝塚って羽根とかでてくるところとちがうのか」とかもらしていた。「宝塚はこんなミュージカルもやります。もっと宝塚の真髄をご覧になりたければ大劇場においでください」といういまのスタンスでは正直「出し惜しみ」の感がする。宝塚は日本で唯一ショー・レビューをやっている劇団。既成のもののつぎはぎでも、短くてもショーをやるべき。「こんな素敵なショーを上演していますから、もっと観たい方は大劇場へ」と道筋をつけるべきだと思う。梅田の客足促進にはこれしか手がないのでは?梅田芸術劇場さんのあの手この手の営業努力をみているとさらにそう思った。

 よかった点は3つ。オンステージのオケの人数と出演者が昨年よりも多いことと上演時間が長かったこと。及第点の60点。あとは人別に。

 湖月わたる。実生活のほうは想像と現実がどっちつかず、という芸術家はこうなんだろうな、という主人。一方、夢のほうでは、自分とローラに言われているが、イタリア人らしい情熱的な好青年。湖月はどちらも明るくおおらかで彼女の柄にあっているようで、のびのびという言葉が一番あっているように観えた。

 白羽ゆり。サマンサはしっかりした妻でそこはあでやかだったが、やはりローラの都会の流儀を知らないのでしっかりしていないようにみえるが、若く可愛く純粋な女の子、というキャラクターは宝塚のヒロインにぴったりで、また白羽もぴったりだった。主演娘役としてただ可愛いだけでなく、セクシーに歌い踊った後は「あら、どうしよう」というような表情をしてみせたり、工夫をいろいろしていたように思う。問題なのは1階で聴いても歌詞がはっきりしないところがあったこと。あれだけ口元に近いところにまであるマイクを使っているのだから、そこは改善の余地ありと見た。また、彼女中心のナンバーが3つもあるなど、大劇場ではない経験を踏めたことは大きかったと思う。

 安蘭けい。主人公の典型的な敵役のギャング。2番手がやるにしてはもったいないような役だが、さすが安蘭だけに少ない出番で押し出しと凄みは十分だった。一曲だけのソロ「♪愛のボレロ」は公演が終わりに近づくにつれ熱唱だった。ひげはなくてもよかったのでは。

 遠野あすか。世の中の裏も表もしっている「いい女」なのだが、愛した男がどうしようもないやつで悩んでいる、という役。初日から存在感がありすばらしかった。リコに「おばさん」といわれるにはとんでもない、という色気、リコには甘えるように口を利くところ、ローラを脅しにきたつもりなのにローラがあまりにも無知なのでとうとう力になってしまうところ、去っていくときの独特の歩き方、などどの場面もよかった。役を非常によい役にしており、改めて彼女の実力がよく分かった。現在は専科だが、彼女ほどの実力者をこのままにしておくのは歌劇団としてどうしたものか、と再考を促させるような出来だった。

 最後に人生の機微を心得たこちらも「いい女」のグラディスの組長・英真なおきさん(ママのところのパンツスーツのはきこなし方は2階席では絶賛だった)と、まじめなのだかとぼけているのか分からないが、なんともいい味を出して、流石と思わせる未沙のえるさんの2人にしっかり脇をしめてもらってこそのこの作品だと書いて終わる。


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