雪組大劇場 「ベルサイユのばら」―オスカル編―

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416. 雪組大劇場 「ベルサイユのばら」―オスカル編―

ユーザ名: 金子
日時: 2006/3/14(17:26)

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 この雪組は当日券の様子で分かりますが、星組より人気あるみたいです。東京のアンドレ役は手前味噌ながら安蘭けいの日をお勧めします。

宝塚大劇場 雪組公演
2月16日→2階7列28(ビデオ収録日)
3月14日→1階12列5

宝塚グランド・ロマン
「ベルサイユのばら」―オスカル編―
〜池田理代子原作『ベルサイユのばら』より〜
脚本・演出/植田紳爾
演出/谷正純

<解説>
 18世紀のフランス。幼いころより男子として育てられたジャルジェ将軍の末娘オスカルは、王妃マリー・アントワネット付きの近衛仕官として仕え、宮廷の夫人達の憧れの的であった。一方、アンドレは、祖母がオスカルの乳母であったことから、オスカルと兄弟のように育つ。そして身分違いの恋と知りながらも彼女に想いを寄せ、常に影のように寄り添っていた。
 栄華を誇ったブルボン王朝だが、国家財政の危機による重税に飢饉も加わり、人民の間には不満が渦巻いていた。そのことを知ったオスカルは、王宮守護の近衛隊から人民を守る衛兵隊の隊長に転属を願い出る。オスカルの屋敷で小間使いとして働き、彼女を姉のように慕っていたロザリーは、今では革命家ベルナールの妻となっていたが、オスカルの転属を聞き、その身を案じていた。
 フランス国内はますます混迷を極め、ジャルジェ将軍はオスカルを男として育てたことを悔いて結婚話を進める。それを聞き絶望したアンドレは、オスカルに毒酒を飲ませ共に死のうとするが、危うく思いとどまる。オスカルはアンドレの秘めた愛情の深さを知り、その想いを受け入れるのだった。
 しかし、その時革命はすぐそこまで押し寄せ、二人はその渦に巻き込まれていく・・・・。(ちらしより)

<メインキャスト>
オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ(男装の王妃付き近衛隊隊長):朝海ひかる
ロザリー(ジャルジェ家の小間使い):舞風りら
アンドレ・グランディエ(オスカルの幼馴染みで乳母の孫):
貴城けい(2/16)
水夏希(3/14)
ジェローデル(近衛隊士官。オスカルの求婚者):
壮一帆(2/16)
貴城けい(3/14)
アラン・ド・ソワソン(衛兵隊士):
水夏希(2/16)
音月桂(3/14)
ベルナール・シャトレ(革命派の新聞記者):未来優希

<感想>
「意外とまともだった」

 星組の「ベルばら」を観ると、あまりにも原作とかけ離れているような気がして、ものすごく消化不良だったので、正直、「この延長なら」と雪組は全然期待していなかったし、こわごわ出かけた。結論から言うと「まあ、これならまともやん」というところ。

 その理由は、オスカル一人に焦点を置いたことだろう。彼女の成長、悩み、恋愛、非業の死と「悲劇的フィクション」としてはエピソードてんこ盛り状態で、すべてオスカルに集中して楽しめる。下手な大河ドラマや、深遠なテーマのなんとか文学賞受賞小説より、明快で物語に入り込めやすい。星組より立ち見が多いのも、まあ分かる。2月に観たときは両脇号泣(1人は男性)だった。星組に続きパズルでいうと、漫画のオスカルのエピソード+今まで再演したときのおおむねよかった漫画にない場面+オスカルの名場面、でパズルとしてはきちんと成り立っている。ロザリーとの交流の場面は、主演娘役には悪いが「脇筋」と割り切ってしまえば、少しボリュームがあるが目はつぶれる。

 しかし、この「オスカル編」のテーマは、今までは「いわゆるキャリアウーマンの苦悩」と「真実の愛とは」だったが、今世紀版から次のテーマが見えてきた。それは「愛国心とはなにか」である。「愛国心」というと、現在日本では神経質になる言葉だが、あえてこの時代に宝塚は提起しているのではないか、と思えてくる。オスカルは「最後まで陛下に忠誠を尽くす」と父親に教えられていながら、今回では、まず衛兵隊に転属するところから始まるが、その後いろいろの道を通って、最後は真の主権者である民衆と行動を共にして生涯を終える。オスカルの行動を見ていると、「愛国心とは、真の国の主権者の声を聞き、彼らにとってよい方向へ国を動かすことだ」となる。それには、父や王妃を裏切るのも仕方ない、ということだろう。フランス革命の時代ほどではないが、格差社会になりつつある現代日本にある意味、警告かもしれない、と思ってみていた。

 「客席に飛び出すペガサス」はご愛嬌で、いきなりパレードから始まろうが、よく考えたらほとんど貴族が出ていない、とか言い出したらきりがないだろうが、91年の「♪我が名はオスカル」にあわせて、外国の少女が馬で疾走する映像を延々と見せられるよりはましだ。ただ、フィナーレはアントワネットの曲を使っているそうだが、どうしても同じ曲調に聞こえて、めりはりのある場面が欲しかった。80点。

 朝海ひかる。一言で言えば「タフ&スイート」というところか。オスカルとしての容姿は十分。普段は男っぽい役が多いこの人だが、今回が一番よかった。オスカルの衛兵隊士に対して敢然とかつ理性的に対応する「強さ」、隊の責任者としてまた「アンドレがいて自分は一人前なのだ」と認める「誠実さ」、隊士と家族そしてロザリーに対する「優しさ」、アンドレに「今宵一夜」という「儚さ」、書かれているどの面も的確に表現している。3月に行ったときは、このオスカルを観て彼女のファンになった、という人にも会った。こういうのを「はまり役」「当たり役」というのだろう。ただ1つだけお願いするとすれば、フィナーレまでオスカルで通している髪形だが、鬘の都合もあるだろうができればフィナーレはリーゼントでばりばりの男役でいて欲しかった。

 舞風りら。完全に脇の話なのだが(新聞にはオスカルとロザリーの「外伝」説も出ていたが)、ロザリーのオスカルへの思慕は、例えば高校時代に同性の素敵な先輩がいた人とかは共感できるのだろう。こればかりはいかに思ってもどうしようもないことなので、その「どうしようもなさ」を切なく見せる。

 アンドレ。オスカルのことだけを想って大きな愛で包んでいるものの、身分の違いがあるので、決してオスカルを愛していることを口に出さずに耐える男。そんな彼でも、ジェローデルというライバルが現れると、オスカルへの想いが堰を切って溢れ、彼女を毒殺しようとまで思いつめる。しかし、もう少しのところで自分の過ちに気付き耐え続けるが、最後にオスカルは彼の愛を受け入れてくれる、という現代日本でちょっと探しても見つかりそうにない「壮大な愛」そのものだろう。出番に関しては、1幕は特別出演を考えてか少ない。2幕は毒殺の場面、「今宵一夜」の場面、橋の上での死の場面と名場面がずらずらと並ぶ感じだ。というか、オスカルに対しては少なくともアンドレならばこれぐらいは絡んで欲しい、というところはきちんと入っている。歌も新曲あり。

 貴城けい(2/16)。もうこれはどうしようもないことなのだが、どうしても彼女の容姿をもってするとコスチュームものでは「貴族」だろう。(『霧のミラノ』ははまり役だった)1月に星組で彼女のオスカルを観てしまったから余計そう感じた。まだ、役替りが始まって3日目だったこともあるが、少し「計算」が垣間見えるところもあった。アンドレとしては、現代物には出している、もっと男として線の太さが欲しいところ。ビデオ録画はもう少し先に回して欲しかった。彼女が主演として求められるあとの技術は「歌」に尽きる。個人的要望だが、宙組で貴城のオスカル、大和悠河のアンドレでこの脚本でやって欲しい。

 水夏希(3/14)。結論から言うと「他人のをみて、自分なりに工夫しすぎて、この演目の特長である『様式』が抜けてしまった」という感じだ。多分他人を見すぎてしまったのだろう。1幕・2幕と彼女独特のちょっとしたリアルな「目が見えない仕草」から感じていたのだが、1幕最後の独白は説得力がなく、2幕に入ると毒殺場面はまるで現代劇のようだった。だから、「今宵一夜」の場面は朝海との「間」が合わなくて、朝海の目が「どうしたの?ちかちゃん?」と訴えているように思えた。この上言うか、とファンの方には怒られるのは承知だが周りで声が上がっていたので歌ももうひとつお願いしたい。東京までに他人を見ずに修正ができるか。

 と、2人観たが、正直どちらも消化不良で、「特別出演分を余分なお金を使ってでもとっておけばよかった」とか「旅費さえあれば、東京まで行って安蘭けいのアンドレみたい」と思ってしまった。

 ジェローデル。「超紳士」というイメージが強い役だが、本質は「貴族の寛容さ」を表現しなくてはならない役だろう。だから「嫌み」が少しでもあると、もう合格点は出せない、というよく考えると難役でマルとペケがはっきりしている役だ。
 壮一帆(2/16)。これは彼女の芸質によるものなのかもしれないが「貴族の余裕」になってしまっていた。ちょっと合格点は出せない。彼女はここ2年ぐらい「伸びる」作品とそうでない作品がかなりはっきり分かれていて、前者では成果をあげているだけに、今回は難しかったか、というところである。
 貴城けい(3/14)。やはり彼女に貴族は似合う。「嫌み」は一切なしの紳士。「貴族の懐の深さ」みたいなものは良くわかった。最後に「身を引きましょう」といって去っていくところは、拍手が起こった。壮との差は歴然だった。言うことなし。

アラン。柄が悪く、悪たれてもいるのだが、一度信用した人間には最後までついてゆく、気骨あふれる「これぞ男」という役。「オスカル編」では出番も多く衣装は1着でもかなりやりようによっては印象に残る役。
 水夏希(2/16)。彼女は2年ぐらい前までは、役を与えられると、その役から演繹される
人物像のステレオタイプを作ってしまって、それにはまりこんでそこからの工夫がないのが、演技者としては残念だと常に思っていた。しかし、数々の組替えを経て(特別出演を含めたら5組制覇では?)、「自分の○○役」というようになってきたので、今は安心して観ていられる。アランはかなりステレオタイプ的な人物なので、やりやすかったのでは。安定した出来だった。星組で見逃したので、全国ツアーの彼女のオスカルもどうやるかチケットが手に入れば観たいところ。
 音月桂(3/14)。観る前から「あー、ステレオタイプな『気骨のある男』でやってくる」と思っていたが、意外と台詞と表情がいい意味リアルで人物として立体感はあった。ただ、ちょっとおとなしめで人物としてのインパクトは薄かった。もっと、ディアンヌを思っているところとか出番の多さを利用しては。

 未来優希。すぐ演説口調になるところなどよくあっていた。政治に関してはあんなに能弁なのに、恋愛に関しては訥弁な2面性が面白かった。

 役替りをもっと楽しんでおけばよかったが、なにせいわゆる「大物」ばかりなので、雪組現有勢力で終わってしまったが、まあそれもよし、というところである。このへんで。


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