星組大劇場「ベルサイユのばら」-フェルゼンとマリー・アントワネット編-

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412. 星組大劇場「ベルサイユのばら」-フェルゼンとマリー・アントワネット編-

ユーザ名: 金子
日時: 2006/2/5(21:06)

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 星組 宝塚大劇場
1月5日→2階S席
1月12日→1階A席
2月5日→1階A席 (サイン色紙当たり・・・・欲しい人のものでラッキー)

宝塚グランド・ロマン
『ベルサイユのばら』―フェルゼンとマリー・アントワネット編―
〜池田理代子原作「ベルサイユのばら」より〜
脚本・演出/植田紳爾
演出/谷正純

<解説>
 オーストリア帝国ハプスブルグ家に生まれたマリー・アントワネットは、14歳でフランス、ブルボン家の王太子ルイ(後のルイ16世)の元に嫁いだ。
 華やかな宮廷生活を送りながらも、孤独と虚しさに苛まれていたアントワネットはオペラ座の仮面舞踏会で、スウェーデンの貴族フェルゼンと出会い運命的な恋に落ちる。そしてまた、王妃付き近衛隊隊長を務める男装の麗人オスカルも、叶わぬ恋と知りながら、密かにフェルゼンに心を寄せるのだった。一方幼い頃からオスカルだけを愛していた幼馴染のアンドレは、自分の気持ちを抑えつつ、オスカルを見守っていた。
 フェルゼンとアントワネットは密かに逢瀬を重ねる。お洒落で遊び好きなアントワネットの浪費振りは財政難に拍車をかけ、その上、アントワネットとフェルゼンの不倫の恋。貧困に喘ぐ民衆はアントワネットを憎悪し、各地で暴動を起こすようになる。
 やがて、暴動は革命の様相を見せ始めた。フェルゼンとアントワネット、そしてオスカルとアンドレは過酷な運命に翻弄されていく・・・・・。(ちらしより)

<メインキャスト>
ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン(スウェーデン伯爵):湖月わたる
マリー・アントワネット(フランス国王ルイ16世の妃):白羽ゆり
オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ(男装の王妃付き近衛隊隊長):
1/5 貴城けい
1/12 霧矢大夢
2/5 大空祐飛
アンドレ・グランディエ(オスカルの幼馴染):安蘭けい
ルイ16世(フランス国王):英真なおき
ジェローデル(近衛少佐):涼紫央

<感想>
「普通にそのまま再演しておけばいいのに」

 今回の星組の「ベルバラ(「ベルばら」と新聞などには書いてあるが)」ほど、平成版からすべてみている金子、消化不良で終わった。いろいろ書き出すと、もうとんでもなく長くなりそうだから、なるべくいいたいことだけ。

 某新聞評にも書いてあったのだが、「ベルバラ」は名場面を大切なピースとし、その間を新しい場面や再演の場面というピースでつなぎ合わせるパズルのようなものであり、宝塚においてはいつもピースが同じではないので、植田先生いわく「いつも新作」になるのだ。さて、今回の星組は名場面のピースはあるものの、それをつなげるピースの形・色が適当ではないと思う。だから、正方形か長方形といったきちんとした形のパズルに仕上がらなかった。だから消化不良になるのだ。全国ツアー版は「ダイジェストベルバラ」といった感じでコンパクトにまとまっておりあれはあれでよかったが、今回は「ピックアップベルバラ」という感じで、「あ〜あそこがないと困る」というところも多々あり、「そんなところいらない」も多々あり、で「はあ?」とトイレで言うファン多々あり、という状態だ。

 根本的にはフェルゼン・アントワネット・オスカルの比重がほぼ3等分であるところが問題なのだろう。やはり、主役がフェルゼンをやるなら、もっとフェルゼンの見せ場、をやって欲しかった。例えば、スウェーデン王宮脱出シーンとか。

 金子のように何度も観劇し、また原作を読み尽くした人なら、まあ話の前後も分かるだろうが、始めてみる人にはどうか、と思う。原作から離れすぎているのではないか、と思うのだ。だから最初に書いたように、01年から何も変えずにやっておけばいいのに、と思うのだ。この調子で雪組も行くのかと思うと少々怖い気もする。60点。

 最後に、「これはやめて欲しい」と「これは絶対やって欲しい」を厳選して3つずつ。

「これはやめて欲しい」から
1、アントワネットが大人になったらいきなり「革命です!」。ブルボン王朝の繁栄振りとして、あの「ざあます」の奥様&令嬢を先に出しておけばいいのに。
2、オスカルとアンドレはやはり1幕で消えるほうがいい。ジェローデルの回想では時系列的におかしい。
3、出雲綾さんに文句を言うわけではないが、エトワールが専科、というのは。星組で歌える人はいる。
「これは絶対やって欲しい」は
1、最初はフェルゼン一人で彼の主題歌「♪愛の面影」を歌う。後ろから、アンドレも出てくるべき。
2、フェルゼンとアントワネットが出会うパリの仮面舞踏会の場面。
3、ベルサイユに民衆が押し寄せてきて、それに対して超然と「マリー・アントワネットはフランスの女王なのですから」という名台詞。

 湖月わたる。プログラムにあらかた池田理代子先生が書かれているが、フェルゼンという役は、大人の男としての思慮、他人に迷惑がかかるのなら自分が辛抱すればいいという分別、大貴族の寛容さ、包容力、など理性的な面が多い人物なのだが、そんな彼も最愛の人の命の火が消えようとするなら情熱のままに彼女の元に駆けつける、という面も持つ難しい役だ。湖月は全国ツアー初日のころは、まだ「貴族をやっています」という感じだったが、本公演になって2倍とまでは行かないがすごくよくなっていて、なかなか立派なフェルゼンだった。特に、誠実さ、包容力が印象に残る。以前にやっていたアンドレのほうが似合う人かと思っていたが、ここまで自分のものにするところはやはり主演男役の自力か。

 白羽ゆり。この「ベルバラ」におけるアントワネットは「若いころに政略結婚でフランスにやってきて、取り巻きに囲まれて、贅沢のし放題で、何も知らずにすむところが、革命が起こったことで、運命が変わり、所詮は普通の女性で、哀れなことだった」と観客が思えばいいのだろう。白羽は歴代で美貌も一番、度胸も一番だが、いい線をいっているがぎりぎりアウトというところだ。あとは「牢獄」の場面に尽きる。今ひとつ、台詞、表情以外に感情のひだというものが感じられなかった。だんだん良くなってきているのだが。あと、子供たちを引き離されるところは、本当の親ならもっとヒステリックになると思う。むしろ、90年版の息子を起こさせて前に連れてきて、「ルイ17世陛下」とひざまずくほうがよかったかも。しかし、現在の宝塚中を見回しても、彼女以外にアントワネット役者はいないし、久々の大器だということは、彼女が初ヒロインをしたときからの確信に変わりはない。

オスカル。いわゆるキャリアウーマンとしての苦悩、決断という面と、「女」としてのもろさ、弱さ、という両面を併せ持つ魅力的なキャラクターである。今回の大劇場は特別出演なので、それほど出番も歌もないと思っていたら結構あって、5人は大変だなとおもった。オスカルの潔さ、理性的というところは今回のメンバーは軽くやれると思う。しかし、プログラムで貴城が指摘しているのだが、今回は「女」としての面の比重が多くて、その辺が今回の特別出演メンバーほどの男役のキャリアがある人には難しいかと思った。

 貴城けい(1/5)。役替りの初日に見た。ポスターなどを見て、「美しいだろうな」と思っていたが、最初、劇画の後ろから出てきたときは、まさに「劇画から抜け出した」ようで、容姿はばっちり、であった。ただ、この人は普段どちらかというと「線の太い」男役なので、オスカルの女性らしさをどう表現するかと思ってみていたら、下級生のころの売りだった「はかなさ」復活全開で、「今宵一夜」の場面も安蘭との息もあっていて、まず納得のできる出来だった。ただ、フィナーレでの湖月とのデュエットダンスは表情が硬すぎる。

 霧矢大夢(1/12)。こちらも役替りの初日に見た。全体的に「かわいい」という感じ。このバージョンでは上に書いたように、オスカルの「女」としての部分が多く書かれているのだが、霧矢は女役経験者であるからか、こちらの部分はよく表現されていた。しかし、一方、オスカルのクールさ、強さ、といったところが少し伝わってこなかった。例えば、ブイエ将軍にサーベルを突きつけて「黙れ!」というところなどは、背伸びして言っているように見えた。月組は、ここのところ、西洋の歴史物+コスチューム物に当たっていない上に、この演目は様式美を必要とされるので、決められた枠一杯一杯で演じているように感じた。いつもの霧矢の「キレ」「冴え」が感じられなかった。しかし、デュエットダンスは表情も笑みも出ていて余裕だった。
 
 大空祐飛(2/5)。千秋楽の前日に見た。始め「あ、前の4人のいいところをとったか」と思ったがちがった。キーワードは「憂い」である。オスカルの口ではきっぱり否定しているものの普通の女性として育ったなら・・・・という「憂い」、現代で言えばキャリアウーマンなのだが男社会の軍隊では認められない、バカにされる・・・という「憂い」、愛するフェルゼンはすでに王妃様のもの・・・という「憂い」。この脚本ではオスカルは先に書いたように、「女らしい」もっと言うと「女々しい」ところが多いのだが、そこを「憂い」で乗り切って、バスティーユのところは男役のモードにシフト、と意外なつき方で、伊達に最後に控えてなかったな、考えたな、というところだ。しかし、この人もデュエットダンスは硬い。

 安蘭けい。まず、アンドレは「ベルバラ」のメインキャラクターではないのか?これではオスカルの番犬状態だ、と感じた。次に、安蘭が東京でオスカルをやるから、宝塚では5人のオスカルに対する技量が必要とされるから、という劇団側の都合を抜けば、正直ファンとしては外部出演でもしていて欲しかった。アンドレとしては、歴代が引いたレールにぽんと乗った感じで、あれだけの場面では工夫の仕様もないだろう。死ぬところはもっと派手に動いたほうがいいのだけれど。暇だろうな〜。

 英真なおき。ルイ16世は、国王であることを除けば、気が弱くて優しい普通の人だったのだろう。十分そう思った。普段は豪快な組長さんも流石役者である。

 涼紫央。歴代ジェローデルのなかでは一番いい役になっているのではなかろうか。メインキャラクターの邪魔をせずに、すっきりと演じていた。

 最後に、メルシー伯爵の未沙のえるが01年に比べてより万感こもっており、「メルシー伯爵は王妃様の死を見送ったあとどうしたのだろう。ウイーンに帰りつけたのだろうか」とその後が知りたくなった。

 次の雪組が怖いような、もうこうなったら全組やってしまえ(宙組がよさそうな)、とも久々に「ベルばら」を観て思った。


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