[掲示板: ミュージカル一般 -- 時刻: 2024/11/27(09:30)]
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こんにちは。新年早々から、宙組次期体制の、トップ貴城けいのオスカルと二番手大和悠河の「青春のプリンス」と観ました。美貌に関しては他の組を寄せ付けないな、と。
「不滅の恋人たちへ」
宝塚バウホール 宙組公演
1月9日→り列6
バウ・ミュージカル
『不滅の恋人たちへ』
作・演出/太田哲則
<解説>
19世紀フランス文学界に実在した女流作家ジョルジュ・サンド、伊達男アルフレッド・ミュッセの情熱的な恋をモデルに、大人の愛の物語を描く。
1830年代、パリは学生運動や新しい革命の機運に溢れていた。パリの名門校に進学したミュッセは、やがて文壇に颯爽と登場し、その上品な容姿、ダンディな服装、ニヒルな眼差しは、女性の心を揺さぶるには充分だった。しかし彼は愛していた女性の裏切り以来、女性を蔑視するようになり、勝手気ままな生活に明け暮れながら、その伊達男ぶりを発揮していた。そんな時、彼は7月革命の騒乱に巻き込まれたサンドを救う。
ミュッセは過激な才気のあるサンドの意見に驚きながらも、その情熱、才能に興味を持つ。サンドもまた、ミュッセの繊細でありながら子供っぽいわがままさに惹かれる。二人の恋は、強烈な個性のぶつかり合いだった。繊細で敏感な彼と、自由奔放な彼女。二人の関係は文壇のスキャンダルとなる。やがて二人は運命に導かれるようにベネチアへ出発するが、そこで待っていたのは・・・・。(ちらしより)
<メインキャスト> (プログラムから抜粋)
アルフレッド・ド・ミュッセ(新進気鋭の詩人):大和悠河
ジョルジュ・サンド(男装の女流作家):紫城るい
<感想>
「愛しすぎたゆえの苦い恋の結末」
結局言いたいことはこういうことだったと思う。つまり、恋は隣の大劇場でやっている「あ〜あ愛あればこそ♪」ですべて解決しませんよ、という現実。
ミュッセとサンドははじめ互いの才能に惹かれて火がついたように結ばれるが、所詮現実路線のサンドと、多分女性に対しては、真実の愛、母性、そして時には自分に寄り添ってくれる、といった「女性的なもの」を必要としていたミュッセとは個性が違うのだ。その違う個性の2人が互いの違いを認め合うことも、お互い歩み寄ることもしなければ、こういう結末はなるべくしてなった、ということになると思う。新春早々、現実的な恋愛話だった。それと、世紀が変わろうとも、本当は男より女のほうが強いというのも現実だな、と改めて思った。
台詞劇に近いし、その台詞は2人が文芸家ということなので、バイロンに始まって韻文的な、平たく言うと高尚な日本語が多い。こういう台詞は完璧に聞き取れないと意味がないし、美文調であるがゆえに、ミュージカルとしてみると劇のテンポが遅くなるのは今回ばかりは仕方ないか、と思う。台詞を聞いて実感として捉えるには少し時間が必要となるのだが。
最後に、現在宙組の「和央ようかライブショー」チームは事故により休演中である。今回のこのバウのメンバーをみると、8日間だけの出し物に対しては豪華すぎるし、半分でも戦力になるメンバーをライブショーチームに回しておけば、主役が事故で休演でも、完全休演せずに、希望者だけ払い戻しにして、花總まり中心にコンサート的なもので、2・3日休めば代替公演ができたのではないか、と思う。劇団には主演男役は不死身ではないのだから、そういう「万が一」のときへのメンバーの割り振り、というのも今後考えていただきたい。
あとは主役2人について。
大和悠河。ミュッセは名門のお坊ちゃまだが、最初の女性に裏切られたことで、自由奔放に、放蕩生活を送りながら、なにもかも中途半端なのだが、思いつきで書いた詩が好評となり、世間でちやほやされて、その伊達男ぶりに磨きをかけるだけで、その日その日を無為無策に生きている男である。まず、本物のミュッセは「青春のプリンス」といわれたそうだが、大和の容姿はまさにその言葉にぴったりで目を楽しませてもらった。ミュッセはサンドとの距離が遠のいていくうちに、自暴自棄になり、酒にのめりこみ、破壊的な人生を送るのだが、これは今度再演する、アメリカの作家フィッツジェラルドとかなり共通項があり、この点はやりやすかったかな、と思う。だんだん破滅していくさまは、外見とまったく逆なので余計人間らしく見えた。大要望となるのだが、台詞に気持ちが少し入り込みすぎて聞き取りにくくなるところはもう一歩。特に今回はマイクが耳の上にあるので。大和は月組の新人時代はいわゆる「フェアリータイプ」だったが、宙組に変わってだんだん人間くさい役に説得力を持たせてやれるようになってきたように思う。どちらかというと「役にのめりこむ」タイプか。これは、彼女にとっても、劇団にとっても大きな収穫だろう。また、次の宙組主演を彼女にしなかった「劇団の我慢」は報われると思う。
紫城るい。サンドも名門の出で、若いときに意に染まない結婚をしたことから、自我に目覚め、女性の存在価値、そして自由を主張する、生まれてくるのが1世紀早すぎたような女性である。紫城は最初にミュッセとであった時に、自分の主義主張を述べる中で、凛としていながら躍動感があり、また最後ミュッセを自分から訪ね、あれほど愛撫しあったあとに、彼の態度に対して別れを決断するのだが、そのあと「永遠に愛し続けるわ」と未練を少し残すところ、など硬軟使い分けていて好演だったと思う。元男役という彼女ならではの特徴を生かすことが出来、また次の主演娘役に決まったからだろうか、舞台から自信が気迫となって伝わってきた。下手に男役に寄り添うだけの役を与えて欲しくない。
メンバーが豪華すぎて、書き出したらきりがないのだが、事実では話のはじめのほうに死んでしまうのだが、ミュッセの心と話し、観客への狂言回しをかねる、専科の箙かおるさんの緩急自在さがすばらしかった。
まあ、バウホールだけでの公演、というのはかなりもったいないところ。是非、東京の方にも大和の「青春のプリンス」を観ていただきたい。このへんで。
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