星組ドラマシティ「龍星」

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386. 星組ドラマシティ「龍星」

ユーザ名: 金子
日時: 2005/10/10(10:34)

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 あ−、安蘭けいが泣きながら歌うの2回目観ました。9日は彼女の誕生日で、ファンクラブからうちわが支給され、振っておりました。東京もお勧めします。

「龍星」
宝塚歌劇 星組
シアター・ドラマシティ公演

10月1日→8列17
10月4日→5列34
10月9日→16列33

「龍星」―闇を裂き天翔けよ。朕(ちん)は皇帝なり―
作・演出/児玉明子

<解説>
 西域や北方民族と領土争いの絶えない中世の中国を舞台に、名もなき孤児に生まれながらも、皇帝になりかわり、その座を掴み取ることができた男。その数奇な運命をドラマティックに描いた中国歴史ロマン。
 中世の中国、宋の時代。宋の皇帝は跡継ぎに恵まれず、男児は正室の生んだ皇太子ただ一人であったが、この皇太子は病弱で、しかも皇帝になる器を持たぬ人格であったため、皇帝は老いと共に、宋国の未来を案じていた。そんなある日、日食が起こり、降るような流れ星の中、側室の一人が玉のような男児を産む。その子はその名を“龍星”と名付けられ、皇帝は寵愛する。皇太子の身を案じた正室は“龍星”の暗殺を企むが、母親である側室が自分の命を引き換えに我が子の身を守り、命を落とす。宋国の李宰相は、皇子“龍星”を守るため、誰にも知られぬよう自分の息子と入れ替え、わが子として引き取り、育てることにする。しかし、不運にも入れ替わった李宰相の息子は、正室の陰謀により、宋国の皇子として、幼くして敵国の金へ、人質として送られてしまうのだった―。
 一方金国では、烏延(うえん)将軍が、人質として送られてきた宋の皇子(実は宰相の息子)を密かに始末し、代わりに名もなき宋の戦争遺児と入れ替える。その日からその孤児は宋国の皇子“龍星”と名乗り、将来、敵国である宋に戻された時、自国である金のための密偵となるよう教育される。
 ついに宋の皇帝が崩御した。“龍星”(実は金国の密偵)は、皇太子となるべく宋へと帰国することになるが・・・・・。(ちらしより)

<主な配役>
龍星: 安蘭けい
李霧影: 柚希礼音
砂浬(龍星の妃として、異国である西夏から送られてきた人質):南海まり
花蓮(金国の女剣士):陽月華

<感想>
「本当の自分と名前のギャップが起こす悲劇」

 簡単にいえばこういうことになるだろうか。もっと言えば「『特別な名前』というアイデンティティを得た男の悲劇」「誰かの振りをして生きる孤独」、その「孤独」とは「自分だけのとき以外ではその『誰か』でいなくてはいけないこと」となるだろう。

 プログラムにあるように名前について少し現実的に考えてみたい。名前がない子供、現在日本では不幸な結婚・出産によって国籍すらない子供たちのことが時々ニュースに取り上げられているが、彼ら・彼女らはどんな名前をつけられているのだろうか。きっと、本当に平凡な名前だろう。かくいう金子でも、まあ平凡な名前で、一度外出すると、同じ名前の女児に遭遇する。親は○十年先の流行を読んでつけてくれたものだ。それでまあいいのである。しかし、一度騒動になった「悪魔くん」、彼はあのあとどうなったのだろうか。法がとおっても、大きくなったら改名したいだろう。もっと具体的に言うと、今年阪神タイガースのセ・リーグ優勝に大きく貢献した投手に、少なくとも野球関係、どう考えてもプロ野球選手が最適な名前にしか思えない選手がいるが(ここで分からない方は、少しスポーツ=野球をかじっている方に聞いてください。有名です)彼は故障とかして、ただのサラリーマンになっていたら、あの名前、改名するつもりだったろうか?ということで、現代でも自分と名前のギャップがあれば苦しいのである。それがこの作品のテーマであろう。宝塚の舞台から言うと『アーネスト・イン・ラブ』のジャックは「♪バンバリ〜」のノリでつけてしまった偽名、アーネスト、それが「誠実・熱烈」という意味を持つもので、それに惚れられてしまうので困るのである。

 児玉先生の作品、といえば「つじつまがよく考えたら合わない」=『聖なる星の奇蹟』(02・宙・ドラマシティ)や、「やはり勧善懲悪か」=『天の鼓』(04・花・ドラマシティ)など、観客としては今ひとつ物足りないところも多いのだが、今回は普段気にしないところをつかれた感じで、テーマとしてはよかったと思う。緊迫した場面もあり、最後の結末も、予想とは反対だ。しかし、わかりにくい。これが今回の最大の難点だ。その理由は「龍星」という名前を巡って3人が出てくるので、開演前にちゃんとプログラムを読んでおいても、本当にクリアになるのは2幕中盤なので、やはりここは、本当の李宰相の息子を全国ツアーメンバーから1人もらってやらせるべきだと思う。また、プロローグとエピローグは削ってもいいから、「名もなき彼」が将軍によってどのようにスパイ教育を受けていったのか、「本当の龍星」が宰相の息子として大切に育てられ、あのすごい剣の腕を磨いたか、そして「龍星にいれかわった本当の霧影」が幽閉されてどのような日々を送ったか、という場面を作ればすっきりすると思う。あと、1場面以外息が抜けるところがなかったので、重い感じがする。

 正直、前評判はあまりだったが、最後の3日は完売だったし、平日の夜の公演の当日券を求めて人が並んでいたので、それだけの魅力ある作品にした生徒さんたちの頑張りに敬意を表して、少し甘いが80点。後は人別に。

 安蘭けい。先に書いておくが、金子は彼女のファンなのでこれから書くことはある程度差引いて読んでいただきたい。この役は、「安蘭けい」からはじめると、A「名もなき彼」が、B「『龍星』の振りをして皇帝として生きる彼」、と3段に演じなければならない。そして、Aがやれるのは歌と、妃への乱暴な愛しかたぐらいで、最後霧影に詰め寄られて「ずっと龍星になりたかったのだ」と告白するところではAとBの接点が結ばれなくてはならない。かなり難しい役である。安蘭は、初日の次の日から、詰めの甘さが見えず、最後に観たときは、ラスト玉座に座るときは自嘲すらうかべて、場内すすり泣きが起こっていた。歌に関してはどれもいいが、特に1幕最後と2幕本編最後の歌は、「歌は3分のドラマ」の状況で、大げさかもしれないが、「この歌を聴くために7000円払った」と思って損はしないという感じだった。分かってはいるのだが、本編終了後、紗幕が閉まったとき、「安蘭けいここにあり」と改めていわれたような気がしたのは金子だけだろうか。

 柚希礼音。「いい人」といわれる霧影だが、確かに包容力のある若者だったが、もう少し内側も計算して作って欲しい、というのは今の彼女には難しいだろうか。今の彼女は外枠から作ることはできているが、その役の人物の内面の分析、歌詞の解釈力などは、やはりまだ新人公演のレベルだと思う。主演者とのレベル差ははっきりしてしまう。(ファンの方ごめんなさい)今回は安蘭のそばにいて、彼女から学べるものは学んだらいいと思う。殺陣はダイナミック。

 南海まり。初ヒロインだが、王の娘であり、一言で言えば気位の高い女性である。台詞まわしは王族らしくていいのだが、表情・しぐさにもう少し王族の気品・誇りといった工夫が欲しかった。歌が上手いので、もう少し歌わせては。

 陽月華。まず、殺陣は女役さんとしては見事。また、霧影と話すとき、おなかを押さえるところなどはいじらしくてよかった。柚希とのコンビも新人公演をやっているせいか、自然に見える。この役を男役さんに回さずに正解だったと思う。

 専科のお二人(星原・磯野)は出てくださるだけで、流石、芝居に重みを与えてくださる。

 以上、書いてきたが、あまり期待しないで行った公演なので、「以外とええやん」と十分満足して帰ってこられた。


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