雪組大劇場「霧のミラノ」「ワンダーランド」

[掲示板: ミュージカル一般 -- 時刻: 2024/10/7(18:33)]

TOP HELP    :    :

オリジナルメッセージの書き込みオリジナルメッセージの書き込み // メッセージの検索メッセージの検索 // ヘルプヘルプ

上へ上へ | 前へ前へ | 次へ次へ | リプライを全て表示リプライを全て表示 | リプライメッセージを書き込むリプライメッセージを書き込む | 訂正する訂正する | 削除する削除する

342. 雪組大劇場「霧のミラノ」「ワンダーランド」

ユーザ名: 金子
日時: 2005/7/6(15:19)

------------------------------

 こんにちは。大劇場公演が「エリザベート」を除いて今年に入ってまともなものがない。全国ツアーは観ないと決めていたのに、星組「ベルサイユのばら」のB席買ってしまった・・・もう来年まで待てない!これと、星組ドラマシティが安蘭けい主演なので、「モーツァルト!」はとうに、次の「レミゼ」もカットだ。宝塚ばかり観ている一年になりそう。

 尚、この公演、「これから観にいくので、結末を知りたくない」という方は観劇後お読みくだされば幸いです。

雪組宝塚大劇場
6月26日→1階6列1
7月5日→1階6列25

ミュージカル・ロマン
「霧のミラノ」
作/柴田侑宏
演出/中村暁

<解説>
 1850年代後半のイタリア。誇り高い貴族のオーストリアに対する抵抗と、ふと関わり合った令嬢との恋、二人の前に立ち塞がるオーストリア将校との確執を軸に、当時の耽美的ながら混乱するミラノで、様々な人間模様を繰り広げていく19世紀的ロマン。
 フランス革命後のヨーロッパは混乱期を経て、北イタリアは現在オーストリアの占領地と変っている。由緒あるミラノの貴族ロレンツォは、市役所の職員として務めており、かつての友人ジャンバティスタは羽振りのよい商人として亡命先から帰ってきていた。
 そんな折、ロレンツォは兄のオーストリア活動のかどにより財産没収の通告を受けたマルティーニ家の令嬢がオーストリアの上級将校に食って掛かっているのに出くわす。
 女性はフランチェスカ、将校は情報部少佐カールハインツ。見かねたロレンツォは二人の間に割って入りその場を収める。実はロレンツォはこの地区の復興運動の束ねをしており、その動きをカールハインツがいつまでも気付かぬはずがなく、ロレンツォとカールハインツはまたもや対峙する。
 オーストリアとの確執が避けられなくなってきた1858年冬、ミラノは霧に閉ざされ、その中でそれぞれの人生が変っていく・・・・。(ちらしより)

<メインキャスト>
ロレンツォ・クローチェ(ミラノ市職員。伯爵):朝海ひかる
フランチェスカ・マルティーニ(ミラノの織物業者マルティーニ家の娘):舞風りら
カールハインツ・ベルガー(オーストリア軍情報部少佐・子爵):貴城けい
ジャンバティスタ・サルバトーレ(商人。元ミラノ貴族):水夏希
エルコレ・バローネ(ミラノのジャーナリスト):壮一帆
エンマ・シャンピオーネ(カジノのマダム。元ミラノ貴族):天勢いづる

<感想>
「霧は終幕寸前まで晴れません」

 結論から言うと、星組に引き続き「あー2時間観ていたか」という内容だった。起承転結の「起」と「結」しかなく物語がだらだらと続く、という感じだ。5日に観たとき、隣の男性はダンス場面も含めて全編寝ていた。(ちなみにショーでは寄りかかられたので、まさに「興ざめ」であった。チケット代かえして欲しい)

 ではどうしたらもっと面白くなるのか。やはり主人公の二面性を「裏」の顔、つまり「レジスタンスを束ねるリーダー」のところをもっと入れるべきだろう。2回目カウントしてみていたかぎり実質3場面ぐらいだろうか。ダンス場面もカジノのシーンではなく、レジスタンスでオーストリアと戦っている場面を作るべきだろう。主役の書き込みが少し浅く感じる。

 また、ジャーナリストがルポルタージュを書くために主人公を追跡する、という枠組みだが、主人公は始め普通の人物でそのあと別の顔で戦争に加わるのだから、回想形式のほうがいいかと思う。

 次にカールハインツのキャラクター設定と最後の行動だが・・・。ちらしを読んだら冷静で知的で抜け目のない二枚目敵方軍人かと思ったがそうではなかった。しかし、この方がドラマの構図が明確になったと思うが。この芝居では、彼は一言で言うと高潔な人物に描かれていると思う。そういう人が、最後あのように自分の責任を取るために主人公を不意打ちするだろうか。いきなり人格が低くなるようにおもうのだが。

 ということで、賛否両論どころかファンでは諸説持ち上がる最後の「どんでん返し」だが。宝塚的には緞帳が下りて2分後には「そんな都合のいいことはないだろう」といわれてもハッピーエンドのほうがいいと思う。カールハインツはオーストリア軍司令部に出頭して処罰されることにして。(ジェンキンスさんみたいに)ただ、悲劇にするなら、カールハインツは「自分としてはこれしか責任の取り方がないのだ」といってから主人公を殺して、自分も自決するほうが潔いと思う。やはり大劇場ではラストシーンは全員か主役2人のほうが分かりやすいと思う。

 ということで60点。霧にずっと包まれて、最後のどんでん返しで「えっ」で終わる作品だ。あとは人別に。

 朝海ひかる。見かけはうだつの上がらない、やる気があるのかないのか分からない市の職員だが、実はレジスタンスを束ねているリーダー、という二面性を持つ男。職員の顔のときオーバーに困った顔をして裏の顔をカールハインツに気付かれてしまうところなどはよかった。また、貴族としての品位がずっと保たれていたのは人物の基本がきちんと押さえられていた。そして、フランチェスカとのデートの場面で自分の過去、現在の2つの顔を持って生きていることに葛藤を感じている、そして彼女にすべて告白するところは台詞と気持ちの動きがあっていていい場面だった。

 舞風りら。しっかりした、物分りのいい恋人である。というか「いやーつ」という台詞しか印象に残らない。兄が放蕩しているから家業を全部引き受けている、という責任感から営業停止の命令に対して抗議に行く、というところから始まるのだが、もう少し鼻っ柱が強くてもいい。そのほうが、ロレンツォを愛していることに気付き惹かれていく女心との表現の違いがついていいと思うのだが。ただ柴田脚本らしいきれいな日本語の台詞はとても女らしく聞こえて「現実われわれはこんなきれいな言葉はしゃべれないな」と思ってみていた。

 貴城けい。優雅なセレブで、軍人には向かないし思ったことも素直に話す紳士的な人物で、高潔な人物である。「卑しい男にはなりたくない」というのは彼のキャラクターを象徴している台詞だろう。その上、このキャラクターにぴったりの人がやっているので(新人公演は大変だろうな)とても魅力的に見えた。問題の最終場面がないととても納得できるいい役だし好演していると思う。最近の貴城の演技には説得力を感じる。

 水夏希。はっきり言ってしまえば「主人公のお友達」である。エンマとの仲も最後はよりが戻るようであるが、かなりの「大人の関係」である。ダンスシーンではほとんど中心にいたが、商人なら商売をしている場面や、ロレンツォと再びレジスタンス運動をすることで意気投合する場面を作るべきかと思う。実質的には宙組にいたころより「格下げ」に見えるのは仕方ないか。今ひとつ「見せ場」がないように思う。

 壮一帆。ストーリーテラーの役である。山科愛との掛け合いもよかったが、まだ初日近くにして、観客と遊べるようになっているほど余裕があるらしい。自信を持ってやっているように見えた。最近「勢い」を感じるスターの一人だ。

 天勢いづる。雪組大劇場娘役第一弾、としてどんな役をするのかと思っていたら、歌まである二番手娘役の位置である。もう少し柔らかさは欲しいが、ジャンバティスタに最後までレジスタンス運動の拠点にいることを明かさない意志の強さなどは表れていた。これからどういう方向性で使われるか分からないが、新戦力といっていいだろう。
 

ショー
「ワンダーランド」
作・演出/石田昌也

<解説>
 朝海、舞風、貴城、水・・・・雪組の歌とダンスの「総合力」、そして出演者の個性を活かした「個人技」の場面がクロスオーバーする舞台。
 大きな発見、小さな冒険、夢の世界、未知との出逢い。運命がもたらす喜び、悲しみ、そして執念。本能と理性。そして明日への讃歌、希望、勇気を歌い上げる娯楽性にとんだバラエティー構成でお届けするショー作品。(ちらしより)

<感想>
「芝居と同じで、また見所は終盤」

 典型的なバラエティショーだった。しかし、バラエティショーというのは各スターの見せ場を振ることも大切だが、1つ1つの場面(ブロック)が魅力的でないと全体的に優れたものにはならない、という難しさもある。そういう点ではスターにちゃんと場面を振ってあるのはいいが、その場面のほとんどがつまらない、ということで「見所」があまりないショーになってしまった。せめて1つぐらい、「これは名場面になる」というブロックがほしい。石田先生の作品だが、5年ぶりといえど、「上京させないでほしい」とまでファンに言わせた『スナイパー』(98)を作った方だから期待はしていなかったが、やはり芝居のほうに専念されたほうがいいと思う。50点。

第1場〜第4場 オープニング
 セットが何を意味しているかはじめさっぱり分からなかったのだが、とにかく全員集合、で始まる。あのひゅっとあがってくる朝海ひかるが最初に乗ってくるセリはどういう仕掛けなのだろう。とにかく始まる、という感じ。

第5〜第7場 白鯨へのレクイエム
 メルヴィルの小説「白鯨」をイメージした場面だが、セットが舞台後ろの半分を占めていて、前で水夏希を中心に踊るのはもったいない。また、そのセットが中途半端な屋台崩しと鯨の尾だけ、というのは漫画みたいで2回目観たときはあきれを通り越して「アホなセット作るなら、衣装費に回さんかい!」といいたくなった。あごひげまでつけて、一生懸命踊っている生徒さんが不憫に思えてきた。

第8場〜第11場 大砂塵に消えた恋
 やっと朝海中心の場面がきたか、と思ったら、よく観てみると、筋金入りの鍛え上げた女役:舞風りらVS男役出身成り立て女役天勢いづるのバトルだった。これは結構いい勝負だった。内容はそれこそ無声映画時代の西部劇の設定で、またセットがなさけなくて、幕もかつてのMGM映画の書割みたいで、愛耀子の歌う「♪ジャニーギター」が聴き物というだけ。もっと中堅から下の自分が芯の場面がない男役を効果的に使わないと。

第12・13場 クラシック・メドレー(中詰)
 ここもどこかできいたことがあるクラシックの曲に歌詞がついて、若手から朝海まで歌い継ぐ、というなんの工夫もない中詰だった。クラシックの曲では盛り上がらないし、なんで衣装がトランプを模しているのか必然性も感じられない。また「♪威風堂々」は以前石田先生のショー『ミレニアム・チャレンジャー!』(00)の中で歌われていて歌詞も同じように聞こえた。一番よかったのは未来優希・美穂圭子・愛の「♪白鳥の湖」か。

第14場〜第16場 ハーレム・イン・アラビア
 雪組の前作『タカラヅカ・ドリーム・キングダム』(04)でも、『レ・コラージュ』(03)でも貴城けいはプリンスの設定だったのに、またプリンスだ。その上芝居と同じくちょっとどんでん返しもある。いい加減、貴城=プリンスはやめて、浮浪者→紳士とか、「宝石泥棒」とかにしません?この辺でテンションは完璧に下がっていた。

第17・18場 栄光
 やっとまともな場面になった。それは朝海中心にシンプルな黒の衣装と帽子でみんなが踊るところ。始めの、未来の「♪グローリー・ハレルヤ」のちょっとしかない歌はすごくて2回聴いても「おおお」と客席で思い、ここでテンションがあがってくる。とにかくみんなでがんがん踊る。「ショーの雪組」の売りはこれでいい。下手な設定やセットなどいらない。

第19場〜第22場 フィナーレ
 「♪青い影」を使った後半は、デュエットダンスは珍しくアップテンポで雪組主演コンビは気持ちよさそうに息もぴったり、だったし、そのあとの人数は多くないが男役の総踊りもみんなキザって気持ちよさそうだった。ここの衣装はいい。
 エトワールは舞風だったが、彼女は基本的に声量があって朗々と歌うタイプではないので、定番の美穂・愛をはずすのなら、いっそ若手で晴華みどり(新人公演ヒロイン)あたりにお願いしたかった。
 ということで、ポスターメンバー以外は中詰と同じ衣装で羽根もなく「衣装費そんなにきついのか〜」と思いつつ終わった。
 

<金子のコラム>
 感想にするまでないのでここで。
6月6日 羽山紀代美 振付家30周年記念ダンシング・リサイタル「ゴールデン・ステップス」宝塚大劇場
 また、催し物が宝塚友の会で当たってしまった。(本当に来年が怖い)2階A席。一言で言えば、「名場面オンパレード」。プログラムを読んで、上演時(リアルタイムの)の写真を見れば、「おお」の連発であった。観劇前から無茶苦茶テンションが上がってしまった。
 
特に1部の1995年『ダンディズム!』の「ハードボイルド」のシーン。真矢みきの代表場面でストライプのシーン、といえばわかってもらえるだろうか。ここを、安蘭けいがやるとなっていた。ファンだった真矢のインパクトの強い場面を現在ファンである安蘭がやるのである。ファンのスターのコラボレーション(?)などありえないことだ。ただ、前日に『ダンディズム!』をCS放送で見てしまった。また、真矢の歌い方からなにまで、完璧に残っている・・・・。で、結果であるが、「ビデオ何回みた?」といわんばかりのスーツの翻し方など安蘭はかなりコピーしていた。歌は「ああ、上手い人が普通に歌うとこうなるのだ」と真矢の曲者ぶりが分かった次第。あと、安蘭は1991年『ジャンクション24』の中詰めのところでも、真矢のところだったのだが、ピストルの回し方などかなりの努力が。個人的には1部でかなり落ち着いた。
 
2部は大階段での男役の総踊りがほとんどだったが、世の男性にこのタカラジェンヌの燕尾で揃ったところの美しさを見てもらいたいものである。こちらは1996年『パッション・ブルー』のフィナーレ前(演出の三木先生、ご自分の場面はここだけとはご謙遜がすぎますよ)「グラン・ブルー」のタンゴをトリに女役で朝海ひかるが出てきて大胆かつクールに決めたところが印象に残った。朝海ファンは全体を通して堪能されたのでは。

ただ、日程や出演者のことを考えると、「またやってくれ」とは言いがたい。顔合わせ的な意味で歌が多いTCAスペシャルに比べて踊るのだから、星組は3回公演になるなどハードだ。次の7日の星組大劇場公演に出かけたのだが、みんなショーは気力勝負で、水曜日は人事不省で寝てそうであった。
 また、やはりオリジナルは偉大だ、ということである。名場面を作るスターというのは、個性、もう少し言うなら「誰にもコピーできないもの」をかもし出すから名場面になるのだ、とつくづく感じ入った。インパクトが強い場面ほどそうである。
 あと、「宝塚はよく衣装が残っているな」と感心した。10年位前からは完璧にそのものがでてきた。最後にほとんどの場面がビデオではなく、リアルタイムの舞台での印象がある自分の宝塚ファン歴にもあんぐりしてDVDを予約して帰ってきた。


▼リプライ


Maintenance: MORISADA Masahiro
KINOBOARDS/1.0 R7.3: Copyright © 1995-2000 NAKAMURA, Hiroshi.