星組バウホール「それでも船は行く」涼紫央主演

[掲示板: ミュージカル一般 -- 時刻: 2024/10/7(12:29)]

TOP HELP    :    :

オリジナルメッセージの書き込みオリジナルメッセージの書き込み // メッセージの検索メッセージの検索 // ヘルプヘルプ

上へ上へ | 前へ前へ | 次へ次へ | リプライを全て表示リプライを全て表示 | リプライメッセージを書き込むリプライメッセージを書き込む | 訂正する訂正する | 削除する削除する

309. 星組バウホール「それでも船は行く」涼紫央主演

ユーザ名: 金子
日時: 2005/3/6(20:22)

------------------------------

 海の話が続いています・・・。この公演、もっと下級生の分までついていけるか不安です。

「それでも船は行く」涼
星組 宝塚バウホール公演
3月6日→い列13

バウ・ミュージカル
「それでも船は行く」
作・演出/太田哲則

<解説>
 大西洋航路の客船を舞台として、二組の男女の恋物語を中心に、乗り合わせた乗客達の不思議な出会いと、それぞれの人生哲学を描いた軽妙なタッチのミュージカル作品。

 1920年代、大西洋航路の豪華客船コンコード号に乗り込む乗客達。一等船室には、米財閥の御曹司であるジョニー・ケイス、米社交界の名花スーザン・トレイシー、その婚約者で貧しい炭坑夫から這い上がった青年実業家ヘンリー・ファーリントン、そして三等船室には新聞記者のマイク・コナー、ピアノ教師のジュリア・ガーネットが乗船していた。
 ジョニーとスーザンはかつては恋仲で婚約までした仲だったが、スーザンの完璧主義にジョニーは疲れ酒に溺れ、スーザンもジョニーの大まかな性格に嫌気がさして、婚約を解消。スーザンはヘンリーの成功への飽くなき努力に心酔し、周囲の反対を押し切って婚約した。
 かつては小説家を目指していた文学青年のマイクは、港で、学生時代の友人ジョニーと再会し、かつてはピアノ演奏家としての夢を持っていたジュリアも、港で学生時代の友人スーザンと再会する。
 ジョニーは嫉妬心も手伝ってかつての恋人・スーザンの婚約をブッ潰す計画をするが・・・。
 さまざまな人生模様を乗せて航海する豪華客船。やがて船は港に着く。さて、下船する人々の運命は・・・・。(ちらしより)

<主な配役>
ジョニー・ケイス(米財閥の御曹司。スーザンと婚約までしたが・・・):涼紫央
ハロルド・ハロウェイ(男爵・・・・):立ともみ
リンダ・ボーモン(伯爵夫人・・・):朝峰ひかり
ヘンリー・ファーリントン(スーザンの婚約者。野望に燃える青年実業家):美稀千種
ジュリア・ガーネット(船上ピアニスト。スーザンの学友):仙堂花歩
マイク・コナー(新聞記者。ジョニーの親友):銀河亜未
スーザン・トレイシー(米社交界の名花、ただし氷の花):妃咲せあら

<感想>
「お互い素直になろうよ」

 花組の『くらわんか』で上々の出だしの、今回の若手主体のバウホール公演。これが第2弾で、テンポが悪いとは決していえないのだが、正直『くらわんか』が良すぎた。その上、金子は一昨日に劇団四季の『マンマ・ミーア!』というノリで押すようなミュージカルを観たばかりなので、見劣りしてしまうのは個人的な理由で仕方ないかもしれない。しかし、よくある2組の男女の恋物語、それも女同士・男同士がそれぞれ自分の立場を相手と変わって、一方はもとの鞘に納まり、もう一方は新しい恋人同士になる、という古典的な内容であった。そこには2人の大人の男女もいて、人生哲学をほのめかしてくれる。筋としては見慣れたものであった。宝塚ファンに簡単に筋を説明するなら、97年の花組バウホールの『君に恋してラビリンス』の意地の張り合いモード、とでもいえばいいか。

 で、テーマであるが、それは上に書いたとおりである。意地の張り合いのジョニーとスーザン、本当の自分を偽ったマイクとジュリア、そして本当はこそ泥とペテン師の男爵と伯爵夫人、結局みんな本当のことを素直に言えば理解しあえるのである。これは現在の例に挙げると若者の自殺願望が多いことからなども、生きるにおいて虚勢を張っている人間たちへの普遍的なメッセージだと思う。そういう意味で『くらわんか』とは違ったさわやかな気持ちが観劇後に起こる。

 また、花組に続いて15人のメンバーによる公演だが、主演者を中心としてよくまとまっていて、タカラジェンヌの団結力の強さを感じさせられた。続いてもっと若手での公演が待っているが、そちらも期待したい。あとは人別に。

 ジョニーの涼紫央。メンバーの中で上級生だけあって、実力は3拍子そろっていて安心してみていられた。スーザンに対抗して心と裏腹のことを言ったり、いたずら心からわざと状況をややこしくしたりしても嫌味が感じられなかったのは御曹司らしくてよかった。またスーザンよりロマンティストなところも、男性のほうが案外、というのが良くわかった。単独主演1作目としては無難な船出であった。ただ、こういう2枚目だけではなく、これからは個性の強い役をやることも必要だろうと思う。新人公演が終わって一番難しい時期だとは思うが。

 立ともみさんと朝峰ひかり。初めから胡散臭かったが、最後に正体がばれると「なるほど」と思わせる演技だった。そして、立さんの「最後にあなたのハートを盗もうと思いましてね」という台詞は小粋で印象に残った。また、人生哲学的な台詞も分からない語がなかったので、ぴりりと効いた。

 ヘンリーの美稀千種。本当に成金趣味でやたらキザる上に女たらし、という人物としてはどうしようもない男をコミカルに演じていた。これではスーザンに嫌われても仕方ないか、納得してしまう。

 ジュリアの仙堂花歩。スーザンに比べて堅実で実直な女性である。彼女が一番嘘を知らされていないことに気づき、怒るところでは、むべなし、という感じである。新人公演ヒロイン経験もあり、演技も落ち着いている。歌は出演者の中で一番か。

 マイクの銀河亜未。どちらかというとジョニーにいいように振り回されてしまうのだが、ジュリアに対しては詫び状も書いていた、こちらも真面目な人物である。ただ新聞記者という職業が、スーザンの顔を知っているということにしか生かされなかったので、偽のスーザンを演じるジュリアにもっと探りを入れるような場面があると面白いと思うのだが。もう少し押し出しがあるといいと思う。

 スーザンの妃咲せあら。彼女がちらっとCS放送のニュースの一部に写ったとき、金子は「あ、この人はいけるな」と思った宝塚らしい容姿の持ち主であり、その後順調に、スター街道が約束されているといっていい「スカイフェアリーズ」になり、さてバウのヒロインと聞いて、別に驚かなかった。スーザンは完全主義だからそれに合わない男は許せないし、お嬢様だから自己中心的で、思ったことはぱんぱん言う、という外面的にはあまりかわいくない女の子である。しかし、本当に終盤にジョニーに「ショールを取ってきてあげよう」といわれ、「有難う」というところからやっと素直になれて元の鞘に納まるのだ。下手にやると気の強いきつい女の子に思われるが、最後のところが納得できたのでまあ及第点だろう。ただ、歌はもう少し確実な声が欲しい。

 といろいろ書いてきたが、後発組もがんばって取り組んで欲しい。こんなところで。


▼リプライ


Maintenance: MORISADA Masahiro
KINOBOARDS/1.0 R7.3: Copyright © 1995-2000 NAKAMURA, Hiroshi.