Re: 宝塚大劇場・宙組「ホテル・ステラマリス」「レビュー伝説」

[掲示板: ミュージカル一般 -- 時刻: 2024/11/28(10:37)]

TOP HELP    :    :

オリジナルメッセージの書き込みオリジナルメッセージの書き込み // メッセージの検索メッセージの検索 // ヘルプヘルプ

上へ上へ | 前へ前へ | 次へ次へ | リプライを全て表示リプライを全て表示 | リプライメッセージを書き込むリプライメッセージを書き込む | 訂正する訂正する | 削除する削除する

295. Re: 宝塚大劇場・宙組「ホテル・ステラマリス」「レビュー伝説」

ユーザ名: 金子
日時: 2005/1/14(16:50)

------------------------------

「ホテル ステラマリス」
「レヴュー伝説」

宙組 宝塚大劇場
1月11日→2階2列51
1月13日→1階11列52

ミュージカル
「ホテル ステラマリス」
作・演出/正塚晴彦

<解説>
 様々な過去、思いを抱えた人々が交錯するホテルを舞台に、ラブロマンスを軸にしたコミカルで、かつ胸をうつヒューマンドラマ。

 ウィリアム・オダネルは、かつてセレブ御用達の超高級リゾートで、今や倒産寸前のホテル、ステラマリスの再建の為カリフォルニアへと旅立つ。翌日から金儲けだけを目論むウィリアムと、彼の派遣を快く思わないオーナーのモーリス、従業員たちとの戦いが始まる。しかし、ホテルを愛し心から存続を願うモーリスの娘ステイシーとの心の交流を通じ、ただただ金儲けだけを目論む自分の改革案には、ホテルや土地への愛情がまったくないことに思い至る。やがてウィリアムはステイシーの力を借り、従業員たちの信頼を勝ち得ていき、ホテルは再建への道を歩み始めるが・・・・・。(ちらしより)

<メインキャスト>
ウィリアム・オダネル(アダムズ・ファイナンスのエリート社員):和央ようか
ステイシー・ランカスター(コンシェルジュ。社長の娘):花總まり
アレン・ケンドール(ホテルの支配人。ステイシーの幼馴染で婚約者):水夏希
ガイ・プレスコット(ホテルの宿泊客):大和悠河
ティモシー・マクファーソン(ホテルの宿泊客。海洋生物学者):寿つかさ
ダニエル・スカリエッテイ(料理長):遼河はるひ
アンソニー・オーウェル(ウィリアムの婚約者):彩乃かなみ
リンドン・マクレモア(ドアマン):悠未ひろ

<感想>
「で、それで結局なんなのよ」

 1回目は2階席で観た。1階6列と同じ値段は割に合わないなー、と思いながらも、手拍子とかそんなに熱心にしなくていいので、「まあ、視覚的・感覚的に概観がわかるからいいや、と思うか」とアバウトに理解しようと思って席に着いた。で、ある。始まって30分位したころから「この芝居はいつ面白くなるのだろうか?」という疑問がうずき始めた。その疑問が払拭されないまま緞帳が下りてしまい・・・「で、それで結局なんなのよ。超つまらん」と素直に思ってしまった。2回目は1階だったが、まあこういうものだ、と観念してみたが、長く感じた。

 しかし、客の入りはいいのである。雪組『青い鳥を捜して』のときは決定的に空席がごろごろ目立っていたので、「あーみんなバカバカしいと思っているよね」と安心してこぶしを振りあげたが、2階も宝塚友の会席以外も結構埋まっていたので、「もしかして、この演目はすごく面白いのか?1作感想を書かないうちに金子の感が狂ったか?」ととても不安になった。しかし、幕間にトイレでふっと話した4人組の客に思わず「いつ面白くなるのかとね・・・思って」とふっともらしたら、「そうそう、ホンマそのとおり!あとどう思った?」と聞かれたのでまあ、感は狂っていないだろう。大劇場の芝居に対しては昨年振り上げたこぶしは下ろせない。30点。

 なぜこんなに面白くないのか、と考えてみると、「起承転結」がほとんどないのである。筋は言ってみれば「初めにホテルの再建ありき→恋も芽生え→世界遺産にもなれるかも」という簡単なもので、「起」にあたるホテルの再建が75%くらいをしめていて、あとはばたばたと片付く、という感じである。また、テーマというものが感じられず、何を訴えたいのがよくわからない作品である。頭をひねってもう一度考えてみれば、「熱意があればどんな困難も乗り越えられる」ということだろうか。しかし、熱意のある従業員がいてもホテルは倒産してしまうわけだし・・・・なにがテーマ?とにかく、テーマがなくてはこちらも共感・感動のしようがない。ナンバーを少し削っても、筋をもっと充実させるべきだと思う。

 そのナンバーだが、これもちょっと多いと思う。いきなり従業員が踊る、という感じのところはあるし、主演2人+2番手2人のソロがそれぞれあるからそれだけでも歌が多いのに、コーラスナンバーまで豊富すぎて、やはり筋にかかわる台詞をもっと多くするべきだと思う。その筋だが、いきなり「ワークシェアリング」といわれても、金子はピンとこなかった。家に帰って辞書を引いた・・・・。そういう言葉を使うなら芝居の中でもっと説明して欲しい。

 正塚先生の作品は大劇場デビュー作から拝見しているが、最近の作品は初期のころにあった奥深いテーマが欠けているように思える。正塚作品の魅力は以前書いたので省略するが、終わったあと客席に漂う共感性、というものが魅力の先生だけに、今回は「どうかしたのですか?」としかいいようがない。

 東京まで書き直しの時間はないし、東京は宙組だし毎日「満員御礼」になるぐらい人は来るだろうが、人気に甘えずに内容がしっかりとした作品、見ごたえのある作品をお願いしたいものである。あとは人別に。

 ウィリアムの和央ようか。上のちらしからみると、冷徹で営利追求主義のエリートが、彼から見ると不器用だが熱意あふれるホテルの従業員たちの再建への願いを見ているうちにそちらに引き込まれてしまい・・・、というところかと思ったが、「皆さん、今までの一切の価値観を捨ててください」とはいうものの、始めから「プランB!」などといって再建を楽しんでいるような設定で、アレンではないが「いいやつ」という一面しか描かれていないように感じた。しかし、ここはベテラン主演男役、アリソンとステイシーとの感情の表し方の区別や、最後まで責任を持とうとするところ、特に終幕のステイシーとの「今は一緒にいるから何も言わない」という馥郁とした愛情の交し合い、など細かく演じ分けていた。この台本ならこれで十分である。

 ステイシーの花總まり。どちらかというと派手なタイプではなくて、素直で真面目さはホテルNO1、という女性だ。ホテルが倒産すると知ったら、卒倒してしまうほどホテルを愛しているのだから。(しかし、あのいきなり倒れるシーンは違和感が・・・1回目見たときはアクシデントかと思ってしまった)コンシェルジュとしてのビジネスウーマンぶりとホテルを愛する社長の娘、という2面性がきちんとでていたのでこちらも十分。特に最後の「言わなくても・・・」のシーンは良かった。

 アレンの水夏希。支配人としてのビジネスマンである面と、ステイシーを潔くウィリアムのもとに送り出してやる、という包容力のある面が見せ所だが、前者は良かったが、後者はもうすこし心の広さというものが感じられると良かった。どうしてかステレオタイプに走りがちなこの人だが、演技の面ではまあ合格点だと思う。ただ、ステイシーを送り出してからの歌のリーダーだが、これは人選を間違えたというのか、声がひっくりかえっていた。歌はまだまだである。

 ガイの大和悠河。大体今の時代に「賞金稼ぎ」なんて実存するのか?これだけでも疑問だ。その上、出番ややたらキザったソロの歌といい、正直「取ってつけたような役」とはまさにこのこと、と思ってしまった。振られた大和もやりにくいであろう。工夫の仕様がないものなあ。
 
 海洋生物学者の寿つかさ。『BOXMAN』から快調である。一番おいしいところを持っていってしまった。人工呼吸をされるときの体の動かし方といい、海岸をうろうろするところといい、最後のどんでん返しといい、観客の笑いを取っていて印象に残る。

 料理長の遼河はるひ。ホテルの料理長としてのプライド、ボスとしての頑固さは出せていたと思う。また、イタリア人という設定の熱血漢ぶりは良くわかった。

 アリソンの彩乃かなみ。自己本位の嫌味なお嬢様かと思ったら、最後、別れるところで苦渋をにじませつつ、ウィリアムに「何の言い訳もしないのね」といいながらも、ステイシーに軽くキスするところは、品性の高さを感じさせ、こちらも潔かった。月組主演娘役となっても心配することはないと思う。

 リンドンの悠未ひろ。妻を安楽死させてしまって逃亡中の元医者なのだが、隠している過去があるように見せるのが難しいと思うのだが、人工呼吸のところ以外はいつも引いているような演技をしてそれらしく見えた。

 ということで、ショーがなければ2回はいかなかったろうし、2月まで上演していれば2月はがらすき、が予想される演目であった。次は『エリザベート』だから大丈夫だ、と安心している次第である。

グラン・ファンタジー
「レヴュー伝説」−モン・パリ誕生77周年を記念して−
作・演出/草野旦

<解説>
 日本初のレヴュー「モン・パリ」が岸田辰彌によって上演されて、2005年は「モン・パリ」誕生77周年にあたることから、ノスタルジックでレトロなパリ・レヴューを今の時代に再構築する。
 「モン・パリ」の主人公クシダ氏も今は亡く、宇宙の彼方からパリを懐かしく見続け、街々に伝説の源流を探して回る。しかしどこにも見つけられず、彼はレヴューの亡霊たちを引き連れ宇宙に飛び立つ。そして辿り着いた場所こそタカラヅカの地であった・・・・。(ちらしより)

<感想>
「たまにはこういう『判りやすいショー』もあっていいかもね」

 「判りやすいショー」、と草野先生はプログラムに書いておられるが、観客としてこれはこれで正解だと思う。確かに、たまには芸術祭で賞を取った『ロマンチカ宝塚´04』のようなアンニュイで大人向けのショーもあっていい。しかし、ああいう頭を使うショーばかりではこれはだめだと思う。「お子様向き」という筋があっても、ショーはまず、判りやすいのが一番だ。なぜなら、宝塚の2本立てにおいては、ショーは芝居を理解できなかった子供の観客の救済の場でもあるからだ。かくいう金子も、芝居が本当にわかったのは、小学校高学年で、それまではショーを観に大劇場に行っていたといっても過言ではない。「あーきれい」「あーすてき」「あー男役の○○さん格好いい」「あの女役さんのドレス着てみたい」、といった憧れが宝塚のショーを味わう第一歩だと思うのだ。

 ということで、今回の少し筋があり、そのあとでフィナーレがつき、というスタイルは「宝塚らしい」という言葉でくくれると思う。こちらは1月公演、正月気分も味わえる夢のあるショーで金子としては旧大劇場の3階でへばりついてみていたころの自分を思い出させてくれるようなショーだった。85点。

 
第1〜3場 星の国(天上界レヴュー)
 装置が大掛かりなものだから(大橋先生)、2階席で観ていてもスターが近くに見える。その中で地上界の「♪ジジのテーマ」はすごくシャンソンらしくて(高橋先生)主題歌より覚えやすい。総踊りは長身が多い宙組メンバーで豪華に幕が開く。

第5〜6場 告知
 水夏希を中心に本当の楽器を持って踊るのだが、重そうだ。そして、パリの話なのにここは、曲がジャズでアメリカンテイストを感じさせる。

第7〜8場 変身
 ここの和央ようかのプリンス振りは、ジジでなくても「素敵」といいたいぐらいばっちりで、変身したジジの花總まりとの2人の見栄えはさすが5組最高である。片腕だけのリフトがあるのだが、(CS放送を見ていて、父が「わー、大変やなあ」といっていた)それもしっかりこなして最高のコンビ結成である。

第10〜13場 エトワール座
 パリでなぜスパニッシュのレヴューをやるのかはわからないが、名曲のメドレーで中詰めへと盛り上がる。ここでは完成された宙組のショーが見られる。

第14場 成功
 ロケットの場面なのだが、大和悠河がロケットボーイである。確かに水のほうの出番が多いので大和の出番を作ったのだろうが、あまりにも軽すぎるような気がする。ロケットボーイって若手の役割では?
 かつて、花組で主演男役2人、という時代があったのだが、あのときは出番や役の配分が難しくて、中日(なかび)で2人が役を交代するという荒業(?)もあった。これほどではないが、二番手2人、というのも配分が難しいなと思う。やはり、1人がすっきりしているかと思う。

第15場 愛ひとつ〜第16場 誕生日〜第17場 オーレリアンとジジ
 この1連の場面の始めに歌う曲で、なぜヒロインの名前をジジにしたか分かった。映画『恋の手ほどき』の主題歌が歌われる。この映画の原題は『ジジ』なのだ。ああ、この曲を使いたいのでジジにしたな、とすぐ分かった。こういうのが分かるようになるとショーは面白い。ただ、著作権大丈夫なのだろうか?
 そのあとでカクテルパーティ(選曲はあまりいいと思わないが)、その幸福の絶頂でジジは息絶える。「♪ジジのテーマ」が切ないが、希望が持てる本筋の終わりだ。

第21場〜24場 奇蹟
 ここで『モン・パリ』の主題歌が歌われ、そのあと白のコートと帽子を使った男役のダンス、主演二人のデュエット、と「宝塚そのもの」が繰り広げられる。宙組は人材が豊富なので男役のダンスも見応えがあるし、和央・花總のデュエットも再び流れる『恋の手ほどき』の主題歌に乗せて美しく、魅入ってしまう。
 また、最後に記念写真でポーズで終わり、というのもバウホールではあったが、大劇場では初めてだと思うがみんなが茶目っ気のある表情で一ひねりしてあって面白かった。

 ということで、なんとも宝塚らしいショーで、大いに納得し、芝居のことは忘れることにして家路に着いた。今年は1本立てが大劇場ではないので、ショーはいろいろ出てくるだろうが期待が持てそうな新年1本目だった。

<金子のコラム>
 今回は「舞台中断」。
 長い観劇人生だがこんなことは初めてだった。12月13日3時公演、雪組大劇場に行ったときである。前楽だったのだが、平日だったので(普通大劇場の前楽は日曜日)運良くチケットが取れて、行った。前楽に行くこと自体15年ぶりぐらい。
 芝居の3分の2ぐらいが終わったところだった。朝海ひかるが銀橋で何事もなく歌い終えて下手に引っ込んだあとであった。オケボックスの中に、救急車のサイレンがなしのあの赤いぐるぐる回るランプがついた。オケは中止、暗いまま5分ぐらい待たされた。そして、とうとう緞帳が下りてしまった。そして客席電気点灯。やっと、観客の私たちはがやがや言い出した。金子はトイレに行きたかったので、隣のご婦人に「トイレいける時間あるでしょうか?」と聞いてみたら、「行けるよ」といわれたので走って場内を出たら、結構トイレには人がいた。そして、トイレから帰ってきたころ、中断から10分ぐらいして、「ただいま舞台機構の故障により舞台を中断しております。おそれいります」とアナウンスがあった。そして、あと10分、計20分後中断したところのあとから舞台再開。しかし、教会のセットがなかった・・・。とにかく芝居終了。
 このあとの休憩は、5分短縮された。化粧変えがない公演なので、15分休憩にしてもいいかと思った。
 で、ショーは滞りなく終了。終演は15分遅れ。
 しかし、これは前楽だったから良かったのである。次の日の千秋楽なら、遠方から観劇に来ている人の帰りのバスだの、飛行機だの、新幹線の時刻に支障が出ただろう。前楽だから、遠方組は泊り込んでいるので問題はなかったわけだ。
 大劇場も今の劇場になって来年で12年。そろそろコンピューター関連など見直すときがきているのかもしれない。


▲リプライ元

▼リプライ


Maintenance: MORISADA Masahiro
KINOBOARDS/1.0 R7.3: Copyright © 1995-2000 NAKAMURA, Hiroshi.