雪組ドラマシティ「あの日みた夢に」

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247. 雪組ドラマシティ「あの日みた夢に」

ユーザ名: 金子
日時: 2004/9/15(10:45)

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 こんにちは。なんだか「ミス・サイゴン」で盛り上がってますね。この演目は絶対大阪に来ませんから、初演をみただけで我慢します。梅田コマ劇場に「エリザベート」の引き換えに行ってきましたが、「10万なにがし円です」というお姉さんの言葉が飛び交っていて、梅コマでこんな景気のいい話は初めて聞きました。一方ドラマシティ・・・景気悪かったです。それでは。

「あの日みた夢に」
−シカゴ・アンダーワールド・ブルース−
雪組 シアター・ドラマシティ公演
9月13日 3列25→ビデオ収録日
9月14日 3列25

ミュージカル・ロマン
『あの日みた夢に』−シカゴ・アンダーワールド・ブルース−
作・演出/中村暁

<解説>
 1920年代後半頃の禁酒法時代のアメリカ。二人の若者の友情を軸に、滅びに向かって突き進む若者の情熱、自らの信じた道を突き進む若者の情熱、自らの信じた道を突き進む悲しいエネルギーを描き出す。
 シカゴの裏町で幼なじみとして育った二人の少年、マイケルとスティーブ。ある日マイケルは、スティーブを彼の叔母のもとに送るため、二人の盗みの罪を一人でかぶってしまう。そして、その事件が二人の別れとなった。
 十数年後、暗黒街のギャングとしてのし上がったマイケルは、シカゴの街でスティーブと再会する。スティーブはシカゴの診療所に医師として赴任してきた。異なるお互いの境遇を知っても二人の友情は変ることはなかった。
 ある日マイケルは、ギャングのボス、ロッキーに愛人になるように迫られている娘、エリーと出会う。マイケルは、エリーを診療所で匿うようにスティーブに頼む。マイケルはひそかにエリーに恋心を抱くようになるが、彼女に惹かれていたのは彼だけではなかった・・・。(ちらしより)

<メインキャスト>  (プログラムより抜粋)
マイケル(ギャング):朝海ひかる
エリー(歌手を目指す娘):舞風りら
スティーブ(医師。マイケルの幼馴染み):壮一帆
スージー(マイケルの弟分):天勢いづる
ロッキー(ギャング。ボスの息子):凰稀かなめ
ハンキー(マイケルの弟分):緒月遠麻

<感想>
 「あまりにもありきたりの話では?」

 ドラマシティの公演は開場されたころより上演時間が短くなっているような気がするのは金子だけだろうか。初めのころはショーが多かったからだろうか。とにかくフィナーレもいれて、1時間55分で収めなくてはならないのだから、そうこったテーマの芝居をするのは得策ではないと思う。今回のように「裏街道を生きる哀しさ」といったシンプルなテーマにして、雪組の「売り」のダンスシーンを多用するのは間違いではないと思う。

 ここで、あまり比較はしたくないのだが、同時期に大劇場で上演中の花組『La Esperanza』とこの『あの日みた夢に』は共通点がある。テーマがシンプルなことだ。場面も全員の合唱シーンなど似ているところが多い。しかし、前者は観終わったあと、「ああよく出来た話だ」と肩透かしをくらった感じがするが(詳しくは拙稿の花組のほうをお読みください)、後者は観終わったあと「ああ、裏街道を生きる哀しさだね」と納得してしまうのが違いだ。そういう意味でこの9月は観劇してあまり頭を使う必要がないものばかり観たな、という感じがする。最近のミュージカルでは『エリザベート』『ファントム』といった深遠なテーマの作品が人気なのに、このごろの一般の「純愛」路線ではないが、宝塚もシンプルな路線に流れているのかな、とすら感じた。

 しかし、ここからはこの作品のファンの贅沢な要望、と書きたいが、3列目・後段の空席・隣の人の言葉からここははっきりいってしまおう。こんな筋は月並みすぎる。観劇しなくとも上に記載したチラシにあるプロットを読めば、最終シーンを連想できる人はかなりいるのではなかろうか。その上、その最終シーンがプログラムには写真で載っていて・・・。正直この文章も1回観ただけで書ける気がしたのだが、もう少し捻りを利かせられないものか。同じ先生の『大海賊』もテーマは「勧善懲悪」と水戸黄門状態であったが、柴田先生の監修もあったせいか、脇の人物が1くせもあったし、ヒロインと主人公の間には壁があったし、上演時間が短いのでそれなりに観られたが、今回はあまりにもありきたりすぎる。隣の人は「つまらない」と切り捨てていた。TVの2時間ドラマのほうがいろいろ捻ってあるぞ、いや、こんな簡単な話を観るのに7000円も払って正解だったのだろうか、とすら思ってしまった。同じ国・時代でやるのなら、手近なところならロッキーの手下をもう少し色をつけるとか、「純愛」路線で主人公とヒロインの間にもっと高い壁を立てるとか、スティーブの医者のステレオタイプはやめて嫉妬させるとかなんとかならないものか、と2回目は観ながらそんなことを思っていた。

 1人のヒロインをめぐって2人の水と油のような男がいて2人ともヒロインを愛する。しかし一方はしがらみから抜けられなくて悲運の死をとげる。書いてしまえばこれだけの話だ。シンプルも結構だが2回観以上観たいとおもう人はスター目当ての人だけではないか。それこそ花組で書いたが余韻が残るような舞台をお願いしたかった。前作『永遠の祈り』が良かっただけに残念の一言である。甘く見ても60点。後は人別に。 

 マイケルの浅海ひかる(コム)。スーツがばしっと決まってクールでタフなギャングが、偶然であったヒロインに光明を見出して、ボスの跡目争いから逃げ出して、2人で町を出ようとするが逃れられず・・・。とまあこんな話には典型的な主人公だ。組の主演男役がやるのには簡単すぎるか、と思ったが、格好よくて頼りがいがあるところはもちろん、母と妹との日々を回想するところ、エリーに対しては1人の男として普通に振舞うところ、エリーを巡ってスティーブと感情をぶつけ合うところなど場面ごとの色をきちんと演じ分けていたのは主演男役ならではではある。スーツで踊るところはひらすら格好いい。今回は2回とも席がすばらしく良かったのでよく見えたこともあって、コムさんを堪能させてもらった。

 エリーの舞風りら。素直で清楚で誰からも愛される、というこれまたこういう話の典型的ヒロイン像だが、こちらも楽々こなしている、という感じがした。『スサノオ』のときも書いたのだが、歌の声がしっかり安定して出るようになると、あのダンスがあれば鬼に金棒なのに。ただ、髪型はご一考願いたい。

 スティーブの壮一帆。医師のよくあるすっきりとした知的二枚目、というこれまたステレオタイプだが、すっきりとしたところはこの人も持ち味であるのですんなり観られた。バウの主演経験が大きかったのだろう、押し出し・安定感が1年ほど前よりはずっと出てきて、特に朝海とエリーのことで感情をぶつけあう場面は朝海と互角にやっていてよくなったな、と思った。

 スージーの天勢いづる。『送られなかった手紙』のときに「娘役に転向したほうがいい」と書いたら、本当に転向してしまったのは書いた金子本人がびっくりしたが、今回は「女だか男だか」というズボンをはいた役で、転向過程(?)としては考慮された役だと思う。マダムに言われてマイケルが好きだ、と女心を漏らす場面とそれ以外のいきがったところとの対比が効いていた。娘役の台詞の声はどうか分からないが、フィナーレでは歌で裏声が出ていたので、これからだがあせらずに大成して欲しい。しかし、体、細いなー。

 ロッキーの凰稀かなめ。ボスの「度胸だけはあるが評判のバカ息子」で、マイケルを目の敵にしている、という敵役だ。CSから出てきた彼女だが、なかなかの売り出しぶりである。組長さん・主役と絡む三番手扱いの大きな役だ。力演だが、まだ、若さと勢いでやっているようなところが見受けられるが、これから計算して役作りをできるようになったらもっと伸びるだろう。それだけの容姿とロッキーではないが舞台度胸はある。今後注目しなくても出てくるだろうな。

 ハンキーの緒月遠麻。ちょっとおっちょこちょいで単細胞のところがあるマイケルの弟分だ。この芝居の緩衝材となっており、エルザとの絡みや、最後に「自分はくずだ」というところはロッキーより実は頭がいい、という人物像を作っており、アクセントとなって好感が持てた。

 あと、歌も聞かせ、ロッキーに取り入って店のマダムにのし上がろうとするしたたかな女を演じたフラニーの舞咲りんと超楽天的だがいじらしいハンキーのガールフレンドを演じたエルザの涼花リサが印象に残った。


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