花組大劇場「La Esperanza」「TAKARAZUKA舞夢!」

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236. 花組大劇場「La Esperanza」「TAKARAZUKA舞夢!」

ユーザ名: 金子
日時: 2004/9/10(12:11)

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 こんにちは。花組大劇場を観て来ました。正直1回で書けたのですが・・・。2回目は久しぶりに2階席でしたが、気楽に客観的に観られました。これもいいかな、と。それではよろしく。

「La Esperanza」
「TAKARADUKA舞夢!」
花組 宝塚大劇場
9月7日 1階11列86
9月9日 2階6列41

三井住友VISAシアター
ミュージカル・ロマン
『La Esperanza』−いつか叶う−
作・演出/正塚晴彦

<解説>
 ブエノスアイレスを舞台に、ドラマティックな音楽に乗せて展開するさわやかなラブ・ロマンス。
 舞台はブエノスアイレス。一流のタンゴダンサーを目指すカルロスはフラスキータとペアを組み、登竜門であるコンテストでの優勝を目指していた。ミルバは画家を目指し、美術界の重鎮ゴメスの屋敷に住み、コンクールでの入選を目指している。ある日、カルロスとミルバはクラブで知り合い、ペンギンを見に行くという共通の夢が元で意気投合する。お互いにコンテストやコンクールを控えており、もし目的が果たせたら、長距離バスのターミナルで会おうと約束する。しかし、カルロスはギャングのボスである兄のために命を狙われ、また、ミルバはゴメスの妻のせいで美術界を追われるはめに。窮地に追い込まれた二人の行く末は・・・・。(ちらしより)

<メインキャスト>
カルロス(一流タンゴダンサーを目指す青年):春野寿美礼
ミルバ(画家志望の娘):ふづき美世
ベニート(ダンサー。カルロスのライバル):水夏希
ファビエル(クラブのオーナー。フラスキータのパトロン):霧矢大夢
マイケル・ゴールドバーグ(往年の名映画俳優):未沙のえる
ファン(ホテルのボーイ。カルロスからタンゴを習う):彩吹真央
トム(ドキュメンタリー映画のディレクター):蘭寿とむ
フラスキータ(カルロスのダンスパートナー):遠野あすか

<感想>
「なんか、出てきた人みんな『いい人』ばかりだったなあ」

 今回は題名が「希望」ということで、ストーリーもシンプルで、副題とあわせればこの芝居のメッセージは「希望を持てばいつか叶う」ということだと思う。そういうわけでタンゴの群舞から始まって、調理場のシーンや遊園地のシーン(その遊園地が昨年まで隣にあって閉園したというのは皮肉だが)などダンスナンバーも多く、ミュージカル色が強く感じられた。

 その一方、メインキャスト以外は役が小さくなってしまって、一人何役もやることになってしまい、ファンなどもう少し大きな役でもいいのでは、と思ってしまった。もう少し皆の役を通したものにして欲しかった。特に退団者には。

 さて、ここから書くことは初期の正塚作品によくあった「賛否両論」というところに入るのだろうと思う。この作品を観て「ああ、よく笑った」とか「つぼに入って面白かった」という人もいるだろう。しかし、金子はそうは感じなかった。以下は金子の天邪鬼の考え、と思ってもらっても構わない。この作品を見て80点しか付けられない理由を書こうと思う。

 大体、観劇というものはスポーツ観戦と違って、観終わってから少なくとも1つはある作品から発せられるテーマ・メッセージを自分で反芻することが観客には課せられていると思う。確かにスポーツの場合は観客が一体化して筋書きのないドラマに高揚するのが醍醐味だろうし、演劇でも「ああ、楽しかった」で終わるものもある。しかし、それは正直演劇とはいえないのではないかと思う。代表格が宝塚OGの「狸御殿」だと思うがあれは1年1度のイベント・お祭りだと思う。だから、感想を書くのも気恥ずかしいのだが。しかし、大劇場で芝居を公演する以上、「ああ、楽しかった」では何か足らない。緞帳が下りた後の余韻が欲しいというか。今回の場合、緞帳が下りてぱっと思ったことは「出来すぎた話だな」ということである。確かに、ゴールドバーグがモデルを得て作った御伽噺だと思えよ、金子、といわれればそれまでだが、「さわやか」というより「噛み応え」がない、という気が強くした。

 正塚作品の魅力、というのは『BOXMAN』のときに書いたが、独特の会話のような台詞、実際にいそうな登場人物、実際にありそうなストーリー、でも終わってみるとお話だった、というところだと思う。今回は台詞、人物は実際にいそうだが、確かに同じ時期に2人が挫折することはあっても、同じ時期に立ち直るということはまずないだろうし、なによりも登場人物すべてが善人、そのうえ前向き、というのは現実社会では絶対ありえない。そこに違和感を覚えてしまった。昨年の大劇場作品『Romance de Paris』は構成に疑問を感じたが、愛し合えない主役2人が「いつでも心の窓を開けておこう」というところは心に残った。こういう愛仕方もあるのか、と。以上のような理由でやはり80点だ。

 大橋先生の装置は盆をうまく使ってスムーズな場面転換を助けている。また、城先生の音楽も硬軟あっていいのだが、ちょっと長くて覚えにくい。後は人別に。

 カルロスの春野寿美礼。企業に就職していたら人望を集めそうな、一言で言うとナイスガイである。『飛鳥夕映え』のときに書いたから省略するが、こういう二枚目はあまり人間的魅力を感じないので、今の春野ならもう一ひねりした役をお願いしたかった。しかし、タンゴの場面も格好よく踊っており、もう堂々とした座長ぶりだ。アドリブも出るほどなのだから何も言うことはない。

 ミルバのふづき美世。登場人物の中では1番前向きでひたむきに生きる女の子だが、女性らしい優しさを表現してこの人に向いた役だと思った。歌は頑張っているのは分かるが、もう少し歌詞がはっきりすればいいと思う。

 ベニートの水夏希。カルロスのライバル、となっているが、二番手によく回ってくる「主役のお友達」。こちらもナイスガイでカルロスとの差を出すのが難しいだろうが、コンテスト会場で熱弁を振るうところが一番の見せ場か。もう少し場面があってもいいかと思う。

 ファビエルの霧矢大夢。お金も地位も名誉もあるのだが、フラスキータのことだけは自分の思い通りにならないので、カルロスを追放してしまうのだが、あとで狭量を認めて和解する、という成熟したいい大人の役だ。フラスキータへの銀橋での告白など、印象に残る。霧矢はひげをつけて重厚さを出しており、新たな抑えた一面を観た。

 ゴールドバーグの未沙のえる。狂言回しで、最後は中に入っていくのだが、時に若い二人をからかいながら、なんともこの人らしい味が出ていた。

 ファンの彩吹真央。難病を抱えて必死に生きている青年か、とプログラムを読んだときは思ったのだが、病気など臆面にも出さないやんちゃ坊主、という感じであった。しばらく続いた「理知的な役」から離れて、こういう役もいいだろう。ダンスもなかなかだった。

 トムの蘭寿とむ。ビジネスライクなディレクターに見せながら、これも気のいいやつ、であるが、未沙と絡めることはいい勉強になるだろう。

 フラスキータの遠野あすか。プログラムを読むと女らしい人なのかな、と思ったが、挫折にもめげず、てきぱきとした、嫌味のない女性像で好感が持てた。

 最後に体は細いが、中身はしっかりとした女性を演じた、ベニートのパートナー・イネスの桜一花が印象に残った。

三井住友VISAシアター
『TAKARAZUKA舞夢!』
作・演出/藤井大介

<解説>
 そのタイトルの示す通り、「夢に舞う宝塚」を美しく華やかに再現。
 ギリシャ神話に登場する数々の英雄、神の中からゼウスを主人公に、神話の中に見る愛の形を、華麗にダイナミックに描くレビュー・ファンタジー。
 プロローグの天地創造に始まり、ゼウスの誕生、ゼウスとヘラの結婚、トロイア戦争、戦争により廃墟と化した神殿で世界の終わりを感じたゼウスが流した涙により輝かしい神殿が甦るまでがストーリー性を持って綴られていく。(ちらしより)

<感想>
「バランスを考えようよ」

 観終わって客席で「ううん」とうなってしまった。その理由として3分の2は明るくてトロイア戦争のところだけ暗い、というバランスが取れていないことにあるのだろうと思った。ギリシャ神話にある神秘性、歌詞にもある伝統、そういうシーンが1つぐらいあってもいいのではないかと思った。こういうテーマを扱うなら、藤井先生より荻田先生のほうが向いているのではないかとも思う。

 あと、スターにさせることのバランスも悪い、と思った。春野&彩吹は歌ってばかりいた印象がするし、一方水はそう歌わず踊りが多い、という印象だ。宝塚のスターはなんでも出来る人がなっているのだから、偏らずにいろいろして欲しいのがファンの希望だ。これといって印象に残る場面も少なく、散漫な感じで終わってしまったので65点だ。

序 カオス
 舞城のどかと桐生園加のダンスから始まるのだが、全編を通してこの2人がレベル高い振りをよくこなしており、印象に残った。

第2・3場 ゼウス誕生〜第4場 オリンポス
 プロローグであるが、これは顔見世の総踊りで衣装も豪華でよかった。

第6−8場 ゼウスの恋
 結婚式の後、いきなりゼウスが誘惑されてしまうシーンだが、結婚式ぐらいちゃんとやって、主演コンビのデュエットダンスをここに入れればいいのに、と思った。歌詞の「不倫は文化」って何年前の流行語?と思ったし、もう言ってしまうが「ちょっと趣味が悪いのでは?このショー」とだんだん思えてきた。ただ、愛音羽麗の美少年ぶりは見事。

第9場 パンドラの箱
 霧矢大夢が女役に扮して、『ガイズ&ドールズ』のアデレイドばりのダイナマイトぶりで男役をノックアウトしていく場面だが、すかっとした。赤い爪もつけてがんばっているが、『愛しき人よ』の時より声がずっと出るようになって安心した。あと、歌詞がもっと聞けるようになればいいのだが。

第10場 ナルキッソス
 まあ、この設定は何回宝塚で観たか。別の神話でも良かったのでは。水夏希のダンスは言うことはないが、対する蘭寿とむもよく伍して踊っている。

第12−14場 男と女・レビュー
 2階席にいるとなかなか見えない場面、つまり客席降りから始まる場面だが、男役ばかりタキシードでの総踊り、というのもこのところ黒燕尾の総踊りが多かったのでこれもいいな、と思った。みんなバリバリにキザっているので男役の美学を味わえる。盆が回り次々と乗っていく振り付けも面白かった。

第15場 レディ・オリンピック
 今までラインダンスのところなど書いた覚えはないのだが、今回は1回目見たときはそれまでずっと隣にいわゆる爆竹拍手をされ続けていたせいもあるかもしれないが、正直白けてしまった。ギリシャ神話→アテネ→オリンピック→聖火ランナー→強い人→ヘラクレス、という簡単な着想と誰でも知っている曲、ちょっとここに書くのが気恥ずかしいような簡単な歌詞、もうオリンピックは終わったぞ!といいたくなった。これ10月の東京公演でもこのままなのだろうか。10月なんてそれこそオリンピックは過去の話だから、普通のラインダンスに変えたほうがいいと思う。2回目に観たときはお揃いのピンクの鬘も合わせて「趣味が悪いのでは?」と思ってしまった。「楽しめた」という方にはごめんなさい。

第16場 パリスの審判
 なんでいきなりゼウスが女神の審判を自分でせずにパリスに任せるのかわからないが、ここは宝塚歌唱力ベスト10圏内の春野寿美礼と彩吹真央の歌いあいなので聴き応えがあった。じっくり2階席で聴いていると彩吹の歌詞がはっきりしているのに好感が持てる。このあとは映画『トロイ』の宝塚版となる。

第19・20場 ゼウスの涙
 ここがこのショーのハイライトだと思う。春野が歌うYOSHIKI氏から提供された曲はスケールが大きくて、春野も泣きながら歌っていたが、心を揺さぶる。確かに歌謡曲みたいだが、1曲ぐらいはこういう曲があってもいいだろう。キーが広そうな曲をそうともみせないでたっぷり歌う春野はさすがの歌唱力の持ち主である。

第23場 クラシカル・ドリーム
 ここで主演コンビのデュエットダンスと3人揃い踏みのダンスの両方が観られるのだが、ここは3人だけにして、結婚式のところでデュエットダンスは済ませておいたほうがいいと贅沢な希望が生まれた。

 エトワールは彩吹が務めており、「やりたかった」といわんばかりにかっとばすのは聴いていて心地よかった。

 と書いてきたが、やはり散漫な印象しか残らないので65点。現体制の花組は最初の『エリザベート』、これはよかったが、それ以降はいまひとつ作品に恵まれていないように思うので来年を楽しみにしたい。


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