月組バウホール「愛しき人よ」

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190. 月組バウホール「愛しき人よ」

ユーザ名: 金子
日時: 2004/4/26(15:04)

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こんにちは。月組バウホール行ってきました。期待していたほど面白くなかったです。それではよろしく。

「愛しき人よ」
月組 宝塚バウホール公演
4月25日 り列23・24 →母と観劇

バウ・ロマンス
「愛しき人よ」―イトシキヒトヨ―
作・演出/齋藤吉正

<解説>
 第一次世界大戦後の不穏な世界情勢のパリを舞台に、フランス駐在武官の日本人・遠藤和実と、フランス貴族の令嬢・ジョセフィーヌとの出会いから別れまでを、川島芳子など当時の歴史上の人物やトピックスを絡めながらドラマティックに描く。

 1930年代初頭。パリに赴任した遠藤和実の表向きの任務は大使警護とされていたが、実は新たな世界大戦を睨むフランスの軍事研究、及び情報収集が真の目的であった。
 ある日、和実はパリ市長主催の晩餐会に招待された大使らと共に、パリ郊外の邸を訪れる。社交界の人々が集う晩餐会で、多くの招待客との会話を楽しんでいた和実の前に、貴族のハーブリーグ男爵が現れる。満州事変で損害を蒙ったハーブリーグ男爵は、日本人を憎悪していた。好機を得たとばかりに、男爵は和実を辱める。対面を傷つけられ憤りを感じた和実は、男爵に決闘を申し込む。一部始終を見ていた男爵の娘ジョセフィーヌは、和実に父親の非礼を詫び、父親は自分の体面を保つためには手段を選ばないだろうと、決闘を止めるよう訴える。楚々とした令嬢の真摯な態度と誠意溢れる言葉に感じ入る和実。運命の出会いはここから始まった。二人の純愛を、やがて時代の波が次第に翻弄していく・・・・・。(ちらしより)

<メインキャスト> (プログラムより抜粋)
遠藤和実(大日本帝国陸軍中尉):霧矢大夢
ジョセフィーヌ・ド・ハーグリーブ(ハーブリーグ男爵の一人娘):城咲あい
ケビン・ヒルデブラント(ナチス親衛隊青年幹部):月船さらら
川島芳子(東陽のマタハリとうたわれた女性スパイ):紫城るい
一乃宮若菜(和実の元婚約者):夏河ゆら
ミシェル・バルデス(ジョセフィーヌの婚約者):楠恵華

<感想>
「なんか、暗い話に色々人が出てきたなあ」

 正直、観ている間も観終わってからも、そんなに楽しいとは思わなかった。先に点数を付けてしまうと、55点。

 それと、上にちらしから丸写ししたストーリーの始まりを書いてあるが、実際の舞台は全然違う。これから行かれる方は「歌劇」か「グラフ」を読んでいってください。ちらしは写真だけ見てください。
 
 ストーリーに関することを書くと、ジョセフィーヌのもっていたネックレスが「ブルーダイヤ」という、国家を大成させるほどの力のあるものだから、川島がそれを手に入れようとやっきになるのだが、身分から言うとたかが男爵家がそんな凄いものを持っていたようにおもわないのだが。このへんは付け足しに思えた。

 また、全体を通してみてみると「愛しき人よ」の題名どおり、はっきりいうとごろごろ「男女の愛」ばかり転がっているのだが、実際の生活においてそんなに男女愛なんてころがっているか?ドラマだからしかたないかーと思った。
 あと、ドラマ的に言うと和実はジョセフィーヌの父を殺したことが重荷になってプラトニックラブを貫こうとするが、ジョセフィーヌが彼を包み込んで・・・のほうが面白かったような気がする。これはあくまでファン思想だが。

 そもそもこれは昨年『巌流』の時にも書いたことだが、齋藤先生の芝居は脇の人物が多すぎる。新人公演を追っかけていないと、だれだがわからないうちに終わってしまう。その上、その脇の人物に物語があるので、どうしても主役に芯をしぼり、主役の背景というものが見えてこない。「主役」というのを立てる舞台である以上、主役が魅力的に、さらに宝塚的にいえば主役が格好よくみえないと「宝塚の舞台」ということは成り立たないと思う。それと、これはCSのOGインタビューで大地真央さんが「主演になってよかったな、と思ったことは、人物に入りやすいこと。だって脚本に主役が一番書き込んであるもの」といわれていた。なるほど、とみていたが、齋藤作品においては、「さあ、これだけの高い鉄棒を作って置いたから皆自分で上って。一番高く登れるのは誰かな」というスタンスを感じる。ある先生は、演技指導の面で男役はもとより、女役までされてしまい、1人でその芝居が成り立ちそうな勢いの演出だそうだが、齋藤先生の場合どういう演出をされているのだろう。

 ということで『巌流』以下ではないが、主役はあまり書き込まれていない。書くならば「過去を引きずりつつ生きる陰のある男」というぼんやりとした輪郭しか浮かび上がない。むしろ、主役でない、信じていた思想に裏切られたケビンと、国のためならなんでもする、女性スパイ川島芳子のほうが人物像ははっきりしていた。先生もプログラムに「イトシキキリヤン」(キリヤン=説明するまでもないが霧矢大夢の愛称)と思って書いてくれるのなら、もう少し「たっぷりキリヤン」が観たかったのがファンの想いだろう。

 あと、時代背景が暗いから仕方ないとは思うが、あんなに人を殺すことはないだろう。(ピストルは音が出ます)また、磯野千尋・嘉月絵理のベテラン勢は役が余りにも小さいので下級生でなんとかまかなえるのではないだろうか。全国ツアーとの比重を同じにして欲しい。専科・ベテランを使うのなら、今までの実績を踏まえた役を振ってほしい。

最後に、少人数でやるバウホールだから、多くの人に多くの役を割り当てたいのはわかるが、やはり主演者に多くのことをさせる方がいいと思って劇場を後にした。後は人別に。

霧矢大夢(キリヤン)。よかった、バウに戻ってこられて・・・と言いたいが、なにか前と違う(これ以上は観た方ならば察してください)。しかし、相変わらずきちんとバネのようなステップを踏むダンスは健在だ。今回はプログラムより書くと「実直な辛抱役」なのだが、まずどうして陸軍の情報活動にたずさわるようになったのか、どうやって若菜と知り合って恋に落ちたのか、ケビンとはどういういきさつで手を組むことになったのかなどもっと書いてもらわないと和実がどういう過去をひきずっと生きていて、パリに来る前はどういう心情だったのかわからない。キリヤンというと「跳躍力」という言葉がぴたりといままでは当てはまっていたスターだが、今回は「落ち着き」「陰」というのが良く分かった。ただ、宝塚ファンとすれば、いきいきしたキリヤンをみたいので、最後の少しだけあるショーはせめてもの救いだった。

 城咲あい。令嬢でありながら、父を殺され、婚約者は帰ってこず、日本人を憎むだけの虚しさから、和実にあうことによって互いに魅かれあうのだが、和実が父の敵だと知って彼から遠ざかるという役だが。もう少し憂いがほしいところだが、品を落とすこともなく心の葛藤もよくわかって、出来としてはいいと思った。

 月船さらら(さららん)。この芝居ではほとんどいない、陰のない人物で、ナチスが世界を平和に幸福へと導いてくれると思っていたものの、最後には恋人を殺され、自分もちる、という情熱的で直線的な考えを持つ人だ。昨年のバウから腕をぐんぐんあげている様子が良く分かった。それと観ていてなんとなく思ったのは「さららんって宝塚向きだなあ」と理由とか関係なくそんな文句が金子には浮かんだ。

 紫城るい。男役出身者ならではの役ではなかろうか。きつい口調で相手に詰め寄ってみせたり、こわく的に相手に攻め寄って見せてみたり、声の切り替えなど見ていて面白かった。(特に高い声で笑うところ)普通の女役さんでは出せないパンチが効いていて、彼女を代表する役の1つとなるだろう。一度、洋物で小またの切れ上がったような粋な女性役を見てみたい。
 
 夏川ゆら。夫が死ぬと元婚約者をおって、日本→パリ→上海→中国、と台詞にあるとおり「どこまでも追っていくわ」とやってきて、最後に川島につかまり殺されてしまう、という幸薄い女性なのだが、組長には悪いが、やはり若い娘役さんに・・・(暴言お許しを!)それでも流石組長、出てくるたびにがらりと変わっていて、若菜の哀しい凋落振りが良く分かった。

 ミシェルの楠恵華。行方不明だったが帰ってきたジョセフィーヌの婚約者なのだが、文芸家で知的で紳士で超二枚目、と型にはめなくなるような人物なのだが、意外とこういう役はすっと立っているだけで感情を表さなくてはならず難しいだろうが上手くまとめていた。始め和実の手紙をジョセフィーヌに手渡さなかったので「あ、知的二枚目の策士か」と思ったのだが、最後ジョセフィーヌに和実を助けに行くように言い、指輪を抜き取るところでは彼の誠実さがわかった。目障りにも、控えめに盛らないのは上級生でこその実力だろう。

 色々書いてきたがこのへんで。


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