宙組大劇場「白昼の稲妻」「テンプテーション!」

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135. 宙組大劇場「白昼の稲妻」「テンプテーション!」

ユーザ名: 金子
日時: 2003/11/14(13:22)

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 こんにちは。宙組大劇場の感想書きました。一言で言うなら、下に書きましたが「『オセロー』知らずして行くべからず」です。芝居は難しい。ショーは陶酔できる。こんなところでしょうか。相変わらず長いですが、お付き合い願える方宜しくお願いします。

「白昼の稲妻」
「テンプテーション!」−誘惑−
宙組 宝塚大劇場
10月9日 1階5列52→音月桂、白羽ゆりさん観劇
11月6日 2階4列26→2階S席隣空席
11月13日 1階12列47→ビデオ収録日

宝塚ミュージカル・ロマン
「白昼の稲妻」
作:柴田侑宏
演出:荻田浩一
 
<解説>
 劇作に打ち込む、頭脳明晰な青年貴族アルベール。かつて自分の家族を追いやった男たちに復讐の念を燃やす伯爵令嬢ヴィヴィアンヌ。優雅でありながら権謀渦巻くサロンと、犯罪大通りと呼ばれる活気溢れる下町の人間模様の中で、二人は次第に魅かれあっていく。19世紀前半のパリを舞台に、人生の哀歓を描くミュージカル。(ちらしより)

<メインキャスト>
アルベール・ド・クレール(男爵家の次男):和央ようか
ヴィヴィアンヌ・ド・ボヴェール(伯爵令嬢):花總まり
オーギュスト・ド・オルセー(アルベールの友人):初風緑
エドモン・ド・ランブルズーズ(侯爵):水夏希
ローラン・サバティエ(古着屋):大和悠河
ギャランティーヌ・ド・マルタン(公爵未亡人、サロンの女主人):貴柳みどり
ベラ・サヴォワ(テアトル・パリの女優、オーギュストの恋人):彩乃かなみ

<感想>
「‘芸術祭参加作品’だけに、予習が必須で、‘エンターテイメント’より‘芸術性’に重きを置いた作品」
端的に言うと
「『オセロー』知らずして行くべからず」

 一言で言うと「難しい芝居だな」という感じである。とにかく『オセロー』を知らなくては劇中劇についていけないし、その劇中劇はヒロインの恨みを晴らすための仕掛であるから、『オセロー』を理解していないと『オセロー』とヴィヴィアンヌの家の事情が重ね合わせてあるのがわからないし、わからないとトイレでよく聞いたのは「結局、どうして『恨み』が晴れたのかわからん」ということになってしまう。11月13日の隣のつくば市からの団体の「オラ、こんないい席でなくともいいのに」と言っていたオジサマは爆睡していた。つきるところ、いくらシェイクスピアでも宝塚を観に来る100%の人が『オセロー』を知っているわけではない、やはり筋が理解しやすい舞台を、ということだ。『オセロー』の筋に関しては、横着しようとすれば、プログラムを買って、中の説明を読めばかなり大丈夫だが(金子はこの手)、プログラムを買わない人(特に団体さん)、劇場内においてある紫のプログラムを買わない人用の紙にも『オセロー』の筋は書いてなくて、演劇関係者ならいざしらず、ほとんどの一般人にはプログラムを買わないとお手上げだろう。また、その劇中劇の『オセロー』が台詞はロック調の歌で録音音声がかぶっており、2階にいると歌詞が聞き取りにくく、これも大変だ。とにかくなんだか難しい、これに尽きる。東京で行かれる方は、先にプログラムを買って予習しておくことが最低条件だろう。55点というところか。
 個人的には、装置(大橋先生)が回り舞台と共に上手く出来ていて芝居の流れを止めないのはいいと思った。
 あとは人別に。

 アルベールの和央ようか(タカコ)。この役は物静かで、知的で、上品な貴族で、行動は受動的で、恋人のために悩む、という一見宝塚のヒーローにはしにくい役だ。和央はこの役を「宝塚の正統派二枚目」という切り口で展開してみせている。確かに下級生の頃から「正統派」が売りの彼女にしてはそれでいいと思うし、持ち前のルックス(フロックコート姿は今の宝塚NO1ではなかろうか)や、スタンス(『傭兵ピエール』と正反対の物腰・声の出し方)、台本以上の「包容力」(「頼っていい」というところなど愛情に溢れた言い方だった)を加味して宝塚のヒーローとして成り立たせている。また劇中劇のオセロー役でも粗暴にならずにアルベールとして知的に演じているところに1本筋が通った主役像が見えた。全編みて、「この芝居はアルベールが主役なの?」と思わせないところはベテラントップの力量だろう。また、友人役の初風とのやり取りは同期同士ということもあるのかとてもナチュラルで「大丈夫?こいつ?」というところなど本当の友人のように受け取れた。

 ヴィヴィアンヌの花總まり(ハナちゃん)。復讐に燃える令嬢役だが、この人はどんなにキャリアを経ても「令嬢」というのが良く似合う。その努力には脱帽するが、いまやどんな役でも安心して観られる。今回も追い詰められたところになると、さっと涙が溢れるのは流石、と思ってみていた。ドレス捌きからしても他の組のトップ娘役とは格段の差を感じさせる。この「花總まり神話」はいつまで続くのだろう。

 オーギュストの初風緑(ガイチ)。貴族を捨ててまで演劇に情熱を燃やす主人公の友人役だが、彼女にとっては前作の『ガラスの風景』の犯人の教授役などに比べると簡単すぎるような気がするし楽々とこなしていた。また、劇中劇のイアーゴーも楽しんでいる様子すら伺えた。もう少し歯ごたえのある役でもいいのではないか、と思うが久々にこういう好青年も気分が変わっていいのだろう。ただ、前回の雪組の樹里咲穂の時も思ったのだが、いまや2人だけになった、いわゆるスター専科なのだから、特別出演したときはもう少し重い役を先生方には振ってもらいたいところである。

 ランブルーズの水夏希。自分の権力の維持のためにはどんな手段も選ばず、女は利用するためと、愛欲の対象でしかない、といういわゆる「色悪」の役である。出番は少ないが、考えてみると、やりようによっては「悪」の印象をのこせる、おいしい役だと思う。ここから苦言になってしまうが、どうみても「ランブルーズをやっている水」としか観えないのが惜しい。最近の水の舞台を拝見していると、どうも「○○という役をやっている水」としか見えなくて、「○○という役になりきっている水」とか「○○という役が話しているのか、水が台詞を喋っているのかわからない」(これはハイレベルだが)に至らないのがどうも、である。これは歌にも言えるのだが、今の水にはもう一つ「情感」が必要だと思う。ダンスは名手だし、CS放送を見ていると、気配りが出来、頭の切れる人だと思うので、もう少し「舞台感」を養っていただきたいと思うところである。(水ファンの方ごめんなさい・・・)

 サバティエの大和悠河(タニ)。パリの下町で豪胆に野太く生き、弱いものや困っているものには誠実である、兄貴分的な人物である。髪型も工夫していて兄貴分の貫禄も見せるが、もう少し下品で肝が据わっているところを出したほうがよかったのではないか。そうしたほうが、ヴィヴィアンヌやルネに対してみせる誠意が「サバティエの泣き所でね」という台詞に直結すると思うのだが。しかし、月組ではなかった役で、宙組に来てまた引き出しを増やしていって欲しい。

 ギャランティーヌの貴柳みどり。処世術と恋愛の酸いも甘いもかみ分けたサロンの女主人だが、エキセントリックな役が多く、またそれが上手いこの人がどう演じるか興味をもって観たが、いさかいを裁くところなどはそれこそ台詞にあるように「風にように」だったし、ランブルーズとの恋愛を諦めてアルベールに協力するところは知的に落ち着いて行動しているさまが良く分かった。ただ、1ついうならば、サロンの女主人、というつややかさがもう少し欲しいところである。こういう役は脇役でありながら芝居において大きな役割を担っているので上級生に頑張って欲しいところである。

 ベラの彩乃かなみ。ある意味「女」を武器にして、計算高い女優だが、ランブルーズの申し出に対して「あら、私も侯爵の持ち物」というところなど、ただの「可愛い女」に終わらなかったのが良かった。したたかな庶民を演じられたのは進歩が伺える。

 あと、悪徳銀行家でしっかり脇を締めた美郷真也、儚い命と下町の生活を表現したルネの花影アリス(少し痩せすぎではと心配してしまう)、美しい歌声の音乃いづみ、和音美桜が印象に残った。

ロマンチック・レビュー
「テンプテーション!」−誘惑−
作・演出:岡田敬二

<解説>
 「熱く激しく・・・・美しく妖しく・・・・」
Temptation=誘惑をテーマに展開される、ロマンチック・レビューの第15作品目。宙組の和央ようか、花總まりのゴールデン・コンビが甘い陶酔の大人のレビューをくりひろげます。(ちらしより)

<感想>
「『偉大なるマンネリズム』に陶酔できるショー」
〔ひとこと 10月9日編〕
終演後、三人連れの女性客「いやー、綺麗だったね。ね、『テンプテーション』ってなに?」
金子「(心の中で)ガク。世の中には自分より英語が苦手な人がいるのだー。しかし、あなた方はなにを観たわけ?」

「岡田先生のショー」というと「衣装がゴージャスで、各章満足させてもらえる場面が多くて、結局最後の豪華な羽根で締めくくられて、まず『スカ』はない」という既成概念が出来上がってしまっている。このロマンチック・レビュー・シリーズも15作目となるともう「安心感」がある。多分、「宝塚初体験」の連れがいるなら、岡田先生のショーが入っている作品を選べば、芝居は少々、でもなんとか無難に宝塚を満喫してもらえると思う。そういうことで、ファン歴のある者としては、まず新場面に期待するし、このごろ多いリバイバルの場面も「キャストが変わったらどうなるのだろう」と期待もする。今の宝塚のショー作家の中では一番安心と期待でショーを観られる先生だ。ただ、リバイバルの場面はいいのだが、このごろは新場面があまりリバイバルして欲しいような場面がないのが今ひとつ新鮮味を欠いているような気がする。それでも、他のショー作家の先生たちとは一段格上のショーを観られることはファンとして嬉しい限りだ。

 今回は、中詰めが「静」のストーリー的な場面であり、少し構成が異なったが、「スカ」の場面もなく、十分満足できた。98点か。


 1回目に行ったときに、「あー、どこかで聞いた曲だな」と思ったが、そのあとたまたまCSで見ていたら『ル・ポアゾン 愛の媚薬』(90年)で涼風真世が歌っていた曲である。今回は水夏希が歌っているが、1回目は「なんか違う」と思ってしまった。3回目の観劇のときは良くなっていたが、やはり水には芝居のほうに書いたように「情感」が必要なようである。

第1章 プロローグ
 はっきり言って、スターだらけ!次から次へと出てくる感じ。ラベンダーの衣装といい「岡田ワールド」の始まりを意識させる。

第2章 デュエット
 銀橋で和央・花總のトップコンビがブルーのドレスとタキシードで歌うのだが、なんとも図柄が良くて、ちらしにある「ゴールデン・コンビ」という言葉に「広告に偽りなし」だな、と思った。今、この2人を主役に、と言われたら演出家の先生諸氏はいろいろ案が尽きないのではないだろうか。

第3章 ブロボカメ(挑発)
 初風と大和の場面であるが、大和はキュートだが、ちょっと衣装がタイトすぎるので、東京公演では変えたほうがいいと思う。初風がこんなに大勢の女役に囲まれているシーンははじめてみるような気がするのだが、軽妙でいい。

第4章 ヒート・アップ
 え、早くない?中詰め、と思うのだが、男役中心のラテンで盛り上がるシーンである。大和はここでも女役だが月組時代と違ってこういう使われ方をすると宙組に来た価値があると見るべきだろうか。

第5章 インドシナ
 本当の中詰めである。ストーリー性のあるシーンである。ロマンチック・レビューではいままで、東洋のシーンは色々あったが、いきなり西洋のシーンにショーとして入れるより(昨年の『With a Song in my Heart』)いいと思った。また、歌われる「♪白い蓮の花」は歌詞にあるようにふくよかで覚えやすいいい曲だ。贅沢を言うなら、白い衣装でのトップコンビのデュエットダンスをもう少し長く観たかった。

第6章 パーフェクト・マン
 新場面では一番金子のお気に入りだ。初風・水・大和の3人がそれぞれの「男役ぶり」を競うのだが、初風の「軽妙洒脱」、水の「粋」、大和の「ヤング」と三者三様で面白い。歌詞もそれぞれでじっくり聴いていると楽しい。また、3人スターが揃ったらやってほしい場面だ。

第7章 熱愛のボレロ
 『ラ・カンタータ!』(94年)のリバイバルだが、和央の「♪熱愛のボレロ」の歌はトップとして確立された歌唱で安定感があるが、あえていうが初演の紫苑ゆうの「これが最後」と絶唱する様子も忘れがたい。和央の後を受けて歌う、出雲組長の確実な歌唱もこの曲のスケールの大きさを引き出している。そして最後に銀橋でトップコンビが抱き合うところは、もう「目の保養」というしかない。

第9章 フィナーレ(1)テンプテーション
 ショーの題名が『テンプテーション!』なのだから、名曲「♪テンプテーション」をどこでどう使うか観る前から期待していたのだが、男役の黒燕尾の総踊りで、ときた。確かに宝塚の男役の黒燕尾は、宝塚の「売り」であるし、名曲に合わせて全員踊ると壮観である。そして最後に赤いドレスの花總が絡むのだが「これぞ宝塚」で陶酔の粋に入ってしまう。

第10章 フィナーレ(2)パレード
 普通パレードは書かないのだが、今回は羽根がゴージャスなのには驚いた。文章で書くと、今まではトップの羽根、というのは背中に丸い大きな輪があって、その後ろに滝のように長いのが付いている、というのが常識だったが、今回はその丸い大きな輪が2重なのである。昔の羽根なんかほとんど付いていない時代を知っている人間としては、「はー、ここまできたか」という感じである。どこまで進化するのだろう、羽根。

>yasukoさま→この公演の東京の役替わり公演の感想、できればお願いします。今のところ上京予定がないので。


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