梅田コマ劇場「奥さまの冒険」感想

[掲示板: ミュージカル一般 -- 時刻: 2024/10/7(16:30)]

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119. 梅田コマ劇場「奥さまの冒険」感想

ユーザ名: 金子
日時: 2003/10/7(11:56)

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 こんにちは。この作品は「音楽劇」ですが、もりさだ様のご許可を得ていますので掲載させていただきます。東京では昨年、芸術座で上演されたそうなので、お付き合い願える方、宜しくお願いします。

「奥さまの冒険」
−わたしバカよね−
梅田コマ劇場
10月6日 1階4列25

なかにし礼=原作・脚本・演出
製作=東宝

<メインキャスト>
山田桜子(奥さま):松坂慶子
山田太郎兵衛(桜子の夫):草刈正雄
笠ノ場強(謎のカラオケ教師):井上順
由美(銀座のバー「マスカレード」のママ):江波杏子
ルミ(山田太郎兵衛の愛人):高嶺ふぶき
山崎(ボイストレーナー師範代):尾藤イサオ
声の出演:三輪明宏

<ストーリー>
 山田桜子(松坂慶子)、青森県青森市出身。三十九歳、身長165センチ、体重五十ンキロ。ド近眼でビン底眼鏡をかけたボサボサ頭のさえない主婦。その彼女が、「大変身」した。
 平成十?年、東京のごくありふれた生活。さえない主婦、山田桜子は亭主の太郎兵衛(草刈正雄)と二人暮らし。子供はまだない。亭主はカーレーサーを目指していたが、夢は儚く消え、今は宅配便の配達員をしている。夫婦は多少のマンネリもあるが、ハードな労働とテープ起こしの内職で手に入れた、東京タワーの見えるマンションで、幸せな生活を送っていた。
 そんなある日、隣にカラオケ教室が越してきた。あまりのうるささに桜子は思い切って苦情を伝えに隣の扉を叩く。するとそこに現れたのはいかにも怪しげなカラオケ教師。しかし彼の真の姿はカラオケ界の第一人者、笠ノ場強(井上順)だった。ここは素人相手のカルチャー教室などではなく、全国のカラオケ教室の先生方が真剣にお稽古する、言わばカラオケ教室の教室だったのだ。しかしそんなことは桜子には関係ない。静かに歌えと訳のわからぬ抗議をするのだが、逆に笠ノ場にカラオケを勧められてしまう。もちろん桜子は断るが、そこは百戦錬磨の笠ノ場、歌うことの素晴らしさを語り、桜子の磨けば光る感性を引き出そうとする。桜子は今まで感じたことのない不思議な気分になってくるのだった。
 数日後、笠ノ場に誘われて連れて行かれた銀座のカラオケ劇場「マスカレード」。ここは笠ノ場の長年連れ添ったママ・由美(江波杏子)が経営するカラオケ好きの集まるクラブである。ここで桜子は笠ノ場に促されるままに、眼鏡をはずし、綺麗な衣装に身を包む。そして構わず流された音楽に乗って歌い始めた瞬間、今までさえない主婦だった桜子が嘘のように変身!
 −歌は日常から非日常への旅立ち−桜子は歌を歌うというかつて経験したことのない冒険によって、もうひとつの人生を発見したのだ。(ちらしより)

<舞台を彩るヒット曲(なかにし礼作詩)>
♪心のこり、♪恋の奴隷、♪恋のフーガ、♪花の首飾り、♪あなたならどうする、♪わが人生に悔いなし、♪石狩挽歌、♪時には娼婦のように、♪雨がやんだら、♪まつり、他(ちらしより)

<○○タリアンだらけ>
 正直、この興行、梅田コマ劇場、苦しいのではなかろうか。行って少しお弁当を買うところで話していると、下に書いた金子のように「半額チケット」が出回っているようだ。正規の料金を払って座っている人が何人いたのだろう。で、いざ客席に座ると1階1列センターが空いていて、1階S席は下手ブロックごっそりと人一人いなかった。平日夜だし、東京の芸術座とはキャパ数が違うのだから簡単に比較は出来ないが、2階・3階は新聞社招待席しかいない状態。「やっぱり、ミュージカルで儲けるしかないねー」と思ってしまった。
 で、客層なのであるが、正直「一度松坂慶子を見てみるか」といった○○タリアンだらけで、金子は「この中では『私は演劇ファンです』と胸を張っていえるな」という感じ。よって、客席は社交場。幕前・幕間はうるさい!プログラムが集中して読めない!しかし、我慢した。でも、開演中に食べ物のやりとりやおしゃべりは勘弁して欲しい。一応、これでもない袖ふってお金を払っているのだから。観劇マナーという放送もあるし。特に後ろの2人連れは凄かった・・・・。一応「うるさくてゴメンね」と金子に言うのだか、喫茶店で話せよ、といいたいぐらいマシンガントーク。しかし、この2人が「次は『放浪記』にこようね」と話しているのである。一応観劇する予定の金子、またこんな目にあうのかしら、と思ったら頭が痛くなった。やはり、ファンでなくても下のドラマシティの「紫吹淳コンサート」にいくのが良かったのか・・・・。ふう。

<感想>
「『歌う』ということは、少しの間の『非日常的な自分』への冒険である」

 プログラムのなかにし礼さんによると、これは「アチャラカ芝居」であって、「堅苦しい理屈もない」わりには、「結構、人間の深遠に迫る物語」だそうだが、金子が感じ取ったメッセージは「人間、心の持ちようで変われるのです。それがこの物語のヒロインの場合は『歌』というきっかけがあったのです」という話だと受け取った。確かに、そう考えるところもないしコメディといってもいいぐらいだが、一言で言えば「もう一度自分を見直してみよう」という女性への激励、という芝居だと思った。

 しかし、この芝居のメタファーはカラオケ、であるが、「歌なんて大嫌い。高校の専門は迷わず書道です」といった、カラオケ嫌いの人にはいま1つ共感できないかな、と思う。金子などはミュージカルファンであるから歌は好きだし、ときどき自分の気持ちにぴったりの気持ちの歌が頭から浮かんでくると、心が満たされる気持ちがするのだが、「そういうことはまったくわからない」という母のような手合いには「カラオケ1つでそう変われるか」で終わってしまう出し物だと思う。ここに危険性も感じた。

 また、「音楽劇」というだけに、なかにしさんの作詞の曲がたくさん歌われるのだが、金子、この歌がヒットした頃をリアルタイムで知っていたらもっと楽しかったと思う。別に自分が若いことを言っているわけではないが、なにせ小学生高学年まで歌番組を見るのを禁止されていた金子にとって大体の曲の発表された年が古いので、もう少し歌詞を知っていたら面白かったと思う。これは年配の方の勝ちかな、と思う。そういう点で客層が絞られてしまうもの惜しいと思った。その曲もプログラムによると「しっくりとはまっている」とあるが、少なくとも金子は少々こじつけもあるように感じた。
 
 最後に脚本であるが、やはりいつも舞台の脚本を書いている人と書いてあるスタンスが違うな、と思った。小説のように、1つ終わって次、そして、となっているのだが、ある程度テンポをつけるには、回想やショーアップしたところなど必要だと思った。いまひとつ、コメディに必要なポンポンとしたテンポが感じられなかった。やはり、舞台の脚本家の方と共同制作にしたほうが舞台的な視点が入ってよかったのではないかと思う。
 あとは人別に。

 松坂慶子さん。心が綺麗な純粋無垢と言ってもいいようなヒロインは、この大女優にとってはまるで「赤子の手をひねる」役だと思うが綺麗な方がやるとまた可愛く見えるものだ。この人のいいな、とTVでも思うところはコメディになると、ある意味アメリカ的でからっとしているところである。日本人がコメディをやると「なんとかテンション高く、明るくやっています!」という「努力姿勢」の方が先に見えてしまうのだが、そういうところを感じさせない女優さんだと思う。ぼさぼさの小心者の主婦も面白かったし、元のぼさぼさの姿から急にセクシーな姿に変わったら、堂々とセクシー路線で行くのかと思ったら、歌が終わると急に元に戻って恥らうところなどギャップが上手く演じられていて十分変身とコメディを堪能させてもらった。しかし、黒のレオタードにガーターストッキング姿や最後のスパンのダルマ姿に羽根を背負った衣装(どうみても宝塚のパクリだな)など露出度の高い衣装もそれなりに見られるのは日ごろの鍛錬だろう。実年齢とはとても思えなかった。ただ、残念なのは歌が、特に振りが入るところは、4分の3が口パクで「音楽劇」と銘うつのなら全部生で歌って欲しかった。映画・テレビで難しい役をやっていらっしゃるので、たまにはこういう明るい楽しい役もいいかな、と思った。

 草刈正雄さん。生活にマンネリを感じている亭主関白と、その仮の姿のカーレーサーのジョージと実質2役だが、亭主の方はうんざりという言葉が顔に書いてあるようでダンディな役柄が多い草刈さんの別な一面を見た感じがした。一方のジョージであるが、リーゼントも似合ってさすがミュージカル役者の面目躍如である。この人はミュージカルに限らず、時代劇などなんでもこなしてしまわれるので役者として貴重な存在であると思うが、またミュージカルが見たくなってしまった。

 高嶺ふぶき(ユキちゃん)。相変わらずスリムで踊れるところは宝塚出身の強みであろう。ジョージの恋人のふりをした、実は外務官僚夫人なのだが、ルミ(仮の姿)の方は思い切り弾けていて派手な衣装も違和感がなかった。宝塚時代を知る人間としては、もう1曲ぐらい歌が聴きたかったが。2ヶ月連続の舞台だそうで、それは素晴らしいことである。

 尾藤イサオさん。ジャッグルやソロの1曲などは聴き応えがあり芸達者ぶりをアピールしたが、少し役が小さい気がした。もう少し胡散臭くても良かったのでは。しかし、こういうミュージカル畑の人がでてこそ「音楽劇」が成り立つのだろう。

 江波杏子さん。この人が一番芝居をしないといけない役だが、ヒロインが笠ノ場のところに行こうとすると行かせないで「あなたは歌の魔法にかかっているだけ」と説き、笠ノ場の心はしっかり握っているのは自分だけだ、という自負と愛情が溢れるいい女を演じていた。いかにも銀座のママというつやっぽいところは言うまでもなく表現されていた。

 井上順さん。一見はこのうえもなく胡散臭いカラオケ教師だが、カラオケをしにカーネギーホールにまで行きたい、という夢を持ち、ヒロインにもう1人の自分を気付かせ、思わず恋をしてしまいそうになる、という難しい役である。役名からしてあのカサノバを思わせる役だが、結局ヒロインは彼の本当の恋人(ママ)に説得されて彼の元から去る、というところも意味深だ。結局は「カラオケをカーネギーホールに!」という夢を持った人物、というように終わっていて、1本筋の通った男性になっていて良かったと思う。胡散臭いところはもう順さんの独壇場で、歌もあり、やりがいのある役なのではないかと思う。なかなか見所満載で面白かった。

 最後に一人だけ。大蔵大臣の穂積隆信さん。2場面しかない出番だが、阪神タイガースまで例に出して、ものすごいテンションで面白かった。あれだけに集中するのは大変だろうな、と思った。

 それでは感想はこの辺で。「まあ、面白かったよ」というところでしょうか。

<金子のコラム>
 今回は「安いチケット」。実はこの公演、ちらしをみただけで「あー、面白そう。行きたいな」と思ったのだが、SS席12000也、である。半分諦めていたら「梅田コマ友の会会員様へ」というハガキが来た。金子、下のドラマシティと梅田コマ、この2つの劇場は宝塚の関係でよく行くので会員になっている。ちなみにこのごろ良く行くようになった新歌舞伎座(大阪・難波)もいつもTEL予約するたびに「金子様ですねー、いつも有難うございます。会員になりませんか!」と勧誘されるのだが最低チケット代10枚込みで85000円は大きい。それに年10回行くと限らないし。しかし、ドラマシティと梅田コマはチケット代別なのでまあ入っている。で、今回のハガキだが、「いつも1割引で提供しておりますお席のチケットを、この公演はSS席のみ、昼の部7000円、夜の部6000円でご提供します」とあった。夜に行けば半額だ!会費の元も取れる!ということで、あるコンサートチケットを売って乗り換えたのである。さてTEL予約日。なんと10時スタート同時にかかった。よって4列目のサブセンターの一番センターより角席。ああ有難い。梅田コマは年に1回、こういう激安チケットを提供してくれるし、後の公演でも1割引の席で3回ほど行けば、十分元はとれる。こういう「元の取れる」劇場会費は大歓迎です。まったく。来年2月の森光子さんの「放浪記」も安くしてくれないかな、平日夜だけでもいいから。行く予定なので。それでは今回はこの辺で。


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