月組バウホール「なみだ橋えがお橋」

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106. 月組バウホール「なみだ橋えがお橋」

ユーザ名: 金子
日時: 2003/9/12(11:27)

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 こんにちは。金子です。月組バウホール行ってきました。今回はそんなに長くない感想ですが、短く終わりたい方へ。「代役公演といってもチケット代のもとはとれますよ」。以上です。とにかく楽しかったです。それではあとはお願いします。

「なみだ橋 えがお橋」
月組 宝塚バウホール
9月11日 ほ 17→ビデオ収録日、立樹遥さん観劇

バウ人情噺
「なみだ橋 えがお橋」
作・演出:谷正純

<解説>
 古典落語の中で身投げが噺の発端となっている、「文七元結」「おせつ徳三郎」「辰巳の辻占」「星野屋」「身投げ屋」の五編を中心に、落語噺の数々が、奇妙に、巧妙に入り乱れる人情喜劇。
 川向こうの吉原の明かりも眩しい浅草・吾妻橋。放蕩の末に五十両の借金を抱え、身投げするほかない大店の若旦那・徳三郎は、馴染みの遊女・十六夜と道行き宜しくやって来る。念仏を唱え同時に入水する手筈。だが、吾妻橋は身投げの名所。次から次へと身投げ志願者がやって来る。その誰もが五十両の金に縛られて、二人は身投げを助けたり助けられたり、五十両を貰ったり呉れてやったりの大忙し・・・・。そして商人・徳三郎の本領が発揮される時が来る。『身投げは金になる』、二人は『身投げ屋』なる新商売を思いついた。(ちらしより)

<主な配役〜プログラムより抜粋>
徳三郎(蔵前の札差・星野屋の若旦那):月船さらら
十六夜(吉原・佐野槌の遊女):城咲あい
卯兵衛(鼈甲問屋・近江屋の主人):光樹すばる
喜瀬川(吉原・朝日楼の遊女、十六夜の姉):美原志帆
お喜世(吉原・佐野槌の内儀):美々杏里
長兵衛(本所達磨横丁の左官):嘉月絵理
おさき(左官・長兵衛の女房):瀧川末子
お染(身投げ屋):花瀬みずか

<感想>
「代役公演もまた『ええじゃないか』」

 この芝居、題材にされている古典落語を知っていたらもっと楽しかっただろうなと思う。しかし、関西ではテレビで放送されるのは桂一門の創作落語が多くて、高座にいくお金は大劇場に回っているので、金子は予備知識まったくナシで行った。それでも結構面白かった。しかし、ななめ後ろの男性は、幕間に「オチがくどい」とか、2幕では舞台に聞こえてしまうほどの声で先にオチを言ってしまったりするので、そこは、と思った。ビデオ収録日のせいか、客席・舞台ともにノリのいい状態で、結局「人間万事塞翁が馬」ということだな、と笑い飛ばせるすかっとした舞台であった。主役降板というアクシデントがあったが、そんなことは感じさせず、4500円は高くないと思った。また、日本物、というとメイクが上手くいってないとか、変な着付けのままでてしまう人がいる組が出現するのだが(どことはいわないが)、月組はこの間まで日本物ショーをやっていたせいかそこら辺は安心して観られた。

 谷先生の脚本だが、『野風の笛』と同一人物が書いていると思えない楽しさが溢れている。谷先生は正直、シリアスな作品より、コメディのほうがいい時が往々にある。『フイルム・メイキング』とか。大劇場でもコメディをやられたらどうだろうか。ただ1つだけ疑問を覚えたのは、十六夜は姉の喜瀬川が卯兵衛をだましているところを先に陰から見ているのに姉と気付かず、2幕になっていきなり「姉さん」となるのは変だと思った。姉なら見たらすぐに気付くと思うが。
 また、音楽だが(吉崎先生)、どう考えてもちゃんとした(フルコーラス)あるのは主題歌だけだが、これが覚えやすく、それこそ「粋」であった。
 まあ、上演までになんやかんやあったが、観た後は主題歌にあるように「ええじゃないか」で終われる面白い芝居であった。観て損はない。あとは人別に。

 月船さらら。よくやった。必死・熱演、この言葉以外のなにもない。この主人公は、「粋」を気取っている割にはそれがやりとおせなくて、人が良くて、腰が引けているといった人物なのだが、いざとなると女より弱いところなど良く表せていたと思う。本来、バウホール公演というのは彼女くらいの新人公演卒業組が主演するところであったのに、今年など各組2番手の競演ということになり、チケットが取れず、あるところでは高騰、などということは本来の目的と違う気がする。そういう意味でも、これだけ必死に熱意をもって舞台に取り組んでいる姿をみせてもらえれば、それで十分である。ただ1つ心配するところとしては、台詞の量と怒鳴るところが多いので、声が日本青年館千秋楽まで嗄れないか、ということである。このまま突っ走れば問題はないだろう。「やるやん」。

 城咲あい。この人のいいところは台詞・歌の声が綺麗に安定して出ているところで、そこは安心して聞いていられた。十六夜は遊女だから、根性が座っていて、男よりここ、というところは大胆な女だが、それでも徳三郎と一緒に身投げしたいというロマンも持つ、ある意味調子のいい女である。一歩間違えれば嫌味な女になるところだが、「まあ、江戸時代も現代もいざとなれば女のほうが強いよね」と共感できる人物にしあがっていた。及第点を十分与えられる出来であった。

 しかし、この2人が良く見えたのはこれから書く脇のメンバーががっちりしているからに他ならない。

 光樹すばる。大店の主人の割には1人、本当に身投げして、最後には50両払うことになるそそっかしい人だが、ここは副組長、きちんと締めていた。

 美原志帆。金の亡者となった遊女で、この人だけは悪人か、と思ったら最後には「家族のためー」となり、結局善人だったのだと思わせるどんでんがえしをちゃんと演じ切れていた。特に4人から結婚の約束をした紙を突きつけられ、逆に居直るところなどさすがベテランの演技だった。月組はこの作品には出演していないが、組長の夏河ゆらをはじめこういう上級生の女役さんが多いのが作品に厚みを加えている。貴重な戦力だ。

 美々杏里。この人も強面だが、人情溢れる女将をどっしりと演じていた。また、月組でこの人の歌を聴かずには帰りたくない(笑)。歌はソロなど流石で、たぶん今の宝塚の女役の中で、この人の歌がNO1ではないか、といつも思う。歌の実力に目がいきがちだが、この人の演技もまた充実しているので大劇場でも考えた配役をして欲しい。

 嘉月絵理。なんとも上手い。気が良くて、金にだらしない大工だが、台詞を言っているのか、長兵衛が口から出るままに喋っているのか錯覚してしまうほどだ。また、歌も上手く、「芸達者」とはこういう人のことをいうのだろうな、と感心していた。

 その女房の瀧川末子。演技が上手い人だとは思っていたが、包丁振りまわしての古女房ぶりには笑わされた。思い切った演技の出来る人だ。

 本職の身投げ屋の花瀬みずか。この人は新公のヒロインを何度もやっていたので、こういう汚れ役はどうか、と思ったが、新米身投げ屋の徳三郎が感心し、だまされるほどの身投げ屋ぶりであった。現在は若手が中心の月組娘役であるが、同期の瀧川とともにこういう中堅にも頑張って欲しい。こうやって書いてくると、月組の女役は、ベテラン・中堅・若手ときちんと揃っていて他の組なら羨みそうな層の厚さである。

 いろいろ書いてきたが、とにかく「なにもメッセージとか心に残るものはないけれど、とにかく面白かった!」の一言で終わる芝居だった。たまにはこういうのもいい。これで感想を終える。


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