花組大劇場 「愛と死のアラビア」 「Red Hot Sea」

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259. 花組大劇場 「愛と死のアラビア」 「Red Hot Sea」

ユーザ名: 金子
日時: 2008/6/2(15:03)

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 大劇場座席料金値上げ・・・・年間10公演。この不景気な時代に?自衛策としては、観る回数を減らす、しか考えられません。しかし、ヨン様のテレビを舞台化するなら大劇場にハングルの案内、いやプログラム、必要では?それに日生とか梅芸とかやっているヒマあるのだろうか?早く来年の概要が知りたいところです。

花組 宝塚大劇場
5月12日→当日B席
6月1日→1階1列81
宝塚ミュージカル・ロマン
「愛と死のアラビア」
−高潔なアラブの戦士となったイギリス人−
(山本史郎訳『血と砂』原書房刊を参照)
原作/ローズマリ・サトクリフ
脚本・演出/谷正純

<解説>
 風のように生き、砂のように消えたアラブの英国人、トマス・キーズの真実の物語。

 1807年春、スコットランド兵トマス・キースはオスマン・トルコとの敗戦で捕虜になった・・・・「アラビアのロレンス」に先駆けること100年、アラブの戦士として生涯を終えた、実在の人物を描いたローズマリ・サトクリフ著「血と砂−愛と死のアラビア−」を元に、国家・人種・宗教を超越した友情と愛情が確かに存在することを描き、人と人との心の交流の大切さを訴えかけます。

<メインキャスト>
トマス・キース(イギリス軍スコットランド高地78連隊所属の狙撃手):真飛聖
アノウド(アラビア人の娘):桜乃彩音
イブラヒム(ムハンマド・アリの長男):大空祐飛
トゥスン(ムハンマド・アリの次男):壮一帆
ドナルド・マクラウド(トマスの同僚。イギリス軍軍医):愛音羽麗

<感想>
「男同士の国・文化・宗教をこえた篤い友情」

 アラビア、というとあまり上演されていないところだな、とタイトルを聞いたとき思った。一番初めに思い出したのが『ブルージャスミン』(雪組・1980年代・・・それ以上は忘れた)である。あれはお衣装も斬新だったし、きちんと主演二人の幻想場面もあり、とロマンティックかつ異国情緒あふれた作品でよく覚えている。しかし、今回のこの作品では娘役の出番がほとんどないのだ。イスラム世界では女性は隠された存在だそうだし、映画『アラビアのロレンス』に女性が出てきた覚えはほとんどない。『ブルージャスミン』はヒロインが西洋人(確かイギリス)だったので西洋人ならではの自我自立があるから上手く主演コンビの絡みがあったわけだ。

 さて、書いてきたように今回の作品は正直娘役にとっては寂しいかぎりだ。ヒロインのアノウドでさえ出番が少なく、完璧に「男の物語」という感じがした。男同士のことに関しては主役のトマスからイブラヒム、トゥスン、ドナルドまできちんと国と肩書きをこえた友情が盛り込まれており、骨太な作品だと思う。2回目に観たときは初日近くの1回目とちがって、それぞれの人物造形がはっきりしていて、最後の監獄のシーンは胸に迫るところがあった。宝塚も座席料金値上げなど、また激動期にはいってきたような気がするが、「骨太の男性ファンでも楽しめる作品」というのもこれからの1ジャンルとしてさらに確立されていくのかな、と思ってみていた。75点。

 しかし、いいたいことはある。まず、言葉の問題から始まってトマスが異文化にあまりとまどわないこと。世界中飛行機で行くことができて、目にすることができる現代ですら外国と自国の文化の違いはけっこうとまどうのに。また、あれくらいの交流でトマスとアノウドが「一晩だけの結婚」にまでいたるのは不自然だと思う。ベドゥインの民の歌は演歌みたいだ。原作は読んでいないが、最後は国の関係で処刑されるのではなく、プログラムの訳者の文にあるようにトゥスンを助けに行って死んだほうがよかったのではないかと思った。

 真飛聖。トマスという人物はサブタイトルどおりとると「高潔な」人物ということになるが、意外とその概念を崩す「男気のある人物」に仕上げてあるな、と思った。自分で「一兵卒」というのだから、そう高潔すぎてはバランスが悪い、というところだろうか。ただ、軍人なので次の全国ツアーの「ベルサイユのばら」のアランに似て見えるところがあった。芯の通った人物で、友の友情にこたえるべく、潔く自分の身が処刑される運命に身をゆだねることができる人物を表現していた。ただ、監獄のシーンでドナルドからトゥスンが去るまで話していくうちに涙声になったのは気になった。トマスという人物なら「顔で笑って、心で泣いて」というところではないだろうか。

 桜乃彩音。先に書いたように出番が少ないので、いかにトマスが恋焦がれる女性にみせるかがポイントだが、真飛の都会的な端整さと桜乃の奥ゆかしさはいいコンビになりそうだ。また、声もどちらも美声ではないところがあっていると思う。アノウドはいいところの娘が助けてくれたトマスの奴隷にまでなるトマスと同じ芯の強さを感じさせた。

 大空祐飛。出番はあまりないのだが、長男としての自負・思慮・強さを感じた。トゥスンの出たところ勝負ぶりと見事対比が効いていた。花組でこの人を観ることになるとは思わなかったが、新戦力としては充分だ。

 壮一帆。若く純粋で活力あふれる青年。誰からも愛され、明るいトゥスン。出てくるだけでエジプトの太陽のようだ。3番手には前回の大劇場に比べてかんたんすぎるような役だとおもう。彼女はこのあたりで本来の「宝塚の典型的な2枚目路線」から思い切り外れたところをやらないと、花組のためにならないと思う。10月のドラマシティの『銀ちゃんの恋』でヤスを演じさせるくらいの決断を劇団には願いたい。

 愛音羽麗。トマスと同郷で出番も多く、おいしい場面もあって、特に最後のトマスとの別れの場面は白い軍服といいなかなかよかった。花組は昔から男役の宝庫で、その上今回大空の加入で猛烈な生き残り合戦状態だな、と思う。(正直放出するなら大空は星組にほしかった)

 専科の星原・邦のお二人は存在感が素晴らしく、ナイリの桜一花も我儘なだけかと思ったら、王女としての自分の役目は分かっているというところは男の物語に上手いアレンジとなっていた。

グラン・ファンタジー
「Red Hot Sea」
作・演出/草野旦

<解説>
 海をわたる風、熱い砂浜、夢を誘う遠い水平線、青い海原を飛ぶ無数のカモメ、豪華客船・・・・。

 海の周辺は煌くばかりの魅力に溢れている。そして海は、多くの小説、ドラマを生んだ。そんな海をめぐる様々な要素を盛り込んで、南の海を舞台に明るく美しく神秘的に繰り広げる、熱い熱いショー。

<感想>
「黒塗りのショーの集大成」

 草野先生の黒塗りショーというともう定番化しているが、今までの名場面も生かしつつ(岡田先生のような?)新しい場面もあり、であっという間の55分であった。南の国、そして海、というと開放的なイメージが漂い、それにエネルギッシュなダンスナンバーが多く、観ているほうはかなり満足感が得られた。ただ、客席降りの多さは苦言を呈したいところ。2階席は完璧に取り残される。1回だけにしてほしい。(座席料金値上げの話にもどるが2階S席は7500円のままでいいのではないかとおもった)草野先生のベテランショー作家ながらあくなき新しさの追求はフィナーレで顕著であるが、衣装を担当されたこちらもベテラン任田先生もフィナーレの衣装など斬新でこちらもあくことのない追求心に感じ入った。ただ、値上げの余波はまず衣装にお願いしたい。

 また、メンバーであるが層が厚い男役陣に月組から大空祐飛が加わり、大空のグレードの高さがいい刺激になっているように思えた。一方娘役陣は他の組と比べると手薄な感じがする。

第2〜4場 プロローグ
 熱帯魚の衣装はちょっと子供っぽくみえたのだが、色のグラデーションが振り付けで生きる。ここから乗っていける。新主演男役・真飛聖もすっきりとした登場で印象付ける。

第5〜7場 カモメの海
 人間・カモメ・波とイメージが分かるとすっきりする場面。背景があまりないので、プログラムが必要か。桜一花の体重がないような軽やかなダンスに目を奪われる。

第8〜10場 幽霊船
 ちょっとコミカルな場面。良く考えたらドレッシーな衣装はここだけだ。桜乃彩音の誘うようでかつキュートな仕草はなかなか。未涼亜希の歌唱力が光る。

第11〜16場 真珠の城
 ラテンメドレーによる中詰め。ここまでで相当観た感じがする。男役スターぞろいをつくづく感じる。主演コンビのデュエットダンスは2回あるが、もう少し息を合わせてほしい。

第17場 ひき潮
 確かに名場面なのだが、映像に残っていないらしい。金子はぼんやりとカップルが1組で、編曲も今回よりゆっくりしていたのは覚えているが。曲がすばらしいので、ものすごく新鮮な気分になれる。今回でさよならの名ダンサーとして花組を引っ張ってくれた舞城のどかの表現力を堪能した。

第18〜21場 海が燃える−海風
 旧作『サザンクロス・レビュー』(97年・花組)を再現したような場面。当時と違って、現代日本は自殺者も多いし殺伐とした世の中なのでこういうシーンはあまり好きでないのだが。ただ、真飛VS壮一帆というのはあまり緊迫感がない。初演のようにある程度同レベルのスターにやってほしかった。そのあとのお棺が上に浮いていくのは日本的ではないだけに「昇天」という感じが強くした。

第23・24場 フィナーレ
 パレードだけ書くが、斬新なので好き嫌い分かれると思う。個人的には羽根にジーンズは似合わないと思うし(初日の模様をCS放送で見たときびっくりした)、最後の合唱はバウならいいが、大劇場は皆並んでポーズで幕、といってほしかった。先生方の挑戦なのだろうが、さすがにこれでは全国ツアーは『エンター・ザ・レビュー』(定番のようだ。何回上演している?)で無難にしておくしかないかな、と思った。


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