雪組大劇場 「エリザベート」

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446. 雪組大劇場 「エリザベート」

ユーザ名: 金子
日時: 2007/6/8(14:11)

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 2回目に観た日はDVD録画日でした。しかし、最後の最後にハプニングあり・・・販売DVDはパレードだけ他の日に差し替えられそう。そこへ鞭打つように流れる、安蘭けい版「♪さよなら皆様」・・・・「星組のときだけにしといて!」という雪組ファン。CDを売ろうという気持ちは分かりますがね。

雪組大劇場
5月27日→当日BB席
6月7日→1階11列90 (DVD録画日)

三井住友VISAミュージカル
「エリザベート」
脚本・歌詞/ミヒャエル・クンツェ
音楽/シルヴェスター・リーヴァイ
オリジナル・プロダクション/ウィーン劇場協会
潤色・演出/小池修一郎

<解説>
19世紀末。ヨーロッパ随一の美貌を謳われた、オーストリア=ハンガリー帝国皇妃エリザベートが、イタリア人アナーキスト、ルイジ・ルキーニに殺害された。ルキーニは独房内で自殺を図る。
煉獄の裁判所では、犯罪行為から百年も経ったにもかかわらず、ルキーニを未だに尋問している。ルキーニは、エリザベートは死と恋仲だった、エリザベート自身が死を望んでいたと主張する。そして、それを証明するため、エリザベートと同時代を生きた人々を霊廟から呼び起こす。最後にトート(死)が現われ、エリザベートを愛していたと告白する。
時代は1853年に遡る。少女のエリザベートは、ある日、綱渡りに挑戦しようとしてロープから落ち、意識不明の重体に陥る。冥界に迷い込んだエリザベートにトートは人目で惹きつけられる。トートはエリザベートに生命を返してやる。そしてその愛を得ようと、彼女を追い続ける決意をする。こうして、愛と死の輪舞(ロンド)が始まった。
ウィーンの宮廷では若き皇帝フランツ・ヨーゼフが、母親である皇太后ゾフィーの助言のもと、広大な国を治めていた。ゾフィーはフランツが彼のいとこのヘレネと結婚することを望んでおり、バート・イシュルでの見合いを計画する。しかし、フランツは一緒に来ていた妹のエリザベートを見初めてしまう。
1854年、ウィーンで二人の結婚式が行われる。トートは嫉妬を感じつつ、二人を見つめ、そしてついにエリザベートに話しかける、「最後のダンスは俺のものだ」と。
エリザベートの結婚生活は、満足のいくものではなかった。古いしきたり、皇后としての務めをゾフィーに押し付けられたエリザベートは夫に助けを求めるが、フランツは取り合おうとはしなかった。失望したエリザベートにトートは近付き、誘惑する。しかしエリザベートは屈しなかった。結婚2年目に子供が生まれるが、その子さえゾフィーに取り上げられたエリザベートは、ゾフィーに対し次第に憎悪の念を募らせていく。
一方、赤ん坊にミルクもやれない暮らしを強いられている民衆は、美容のために毎日ミルク風呂に入る皇后に反感を募らせていた。トートはルキーニを煽り、人々を感化させる。ハンガリーの革命家エルマーたちは、革命の気運を高めていく。
ついに、フランツはエリザベートのすべての要求を受け入れ、エリザベートはゾフィーとの長年の確執に勝利する。エリザベートは「私の人生は私のもの」と言い放つ。そんなエリザベートをトートが見つめていた・・・。(ちらしより)

<メインキャスト>
トート(死、黄泉の帝王):水夏希
エリザベート(オーストリア=ハンガリー帝国皇后):白羽ゆり
フランツ・ヨーゼフ(オーストリア=ハンガリー帝国皇帝):彩吹真央
ルイジ・ルキーニ(エリサベート暗殺者):音月桂
ルドルフ(オーストリア=ハンガリー帝国皇太子):凰稀かなめ
皇太后ゾフィー(フランツ・ヨーゼフの母):未来優希

<感想>

「ちらほらとウィーン版の影が」

 4月に梅田芸術劇場にウィーン版を観にいった。印象に残ったことは、セットが芸術の都の国らしく奇抜であること、オーケストラ・歌手(特にエリザベート役の方)のレベルの高さ、そしてなによりも「このミュージカルはエリザベートの自我独立を求める話なのだ」という結論であった。あと、些細なことだが、普段宝塚の娘役を見慣れているせいか、本場のヨーロッパ女性は我々が思っているほど優雅ではなく、男性と対等意識が強いのだな、ということである。ドレスのさばきかたやお辞儀の仕方など女性に対する女性を演じる宝塚娘役のエレガントさにかなりなれてしまっている自分に気付いた。

 そして帰りながら考えたことは、「やはり、日本人としては宝塚版のほうがいいなあ」ということである。慣れているから、ということは勿論あると思うが、ウィーン版に比べて退廃的な世紀末の描写、政治画策、性的描写が少なく、トートを若い男と見立ててそれを女性が演じるところ、最後昇天するところなど、宝塚版のほうがロマンがあるなあ、と思った。それと、宝塚版のエリザベートはなれない宮廷暮らしから逃れようにも皇后であることは捨てられず、その人生を精神だけは自由にあろうと思いながらも、義務に束縛されて「健気に」人生を歩むしかない孤独な女性、というのが歴代のスターが演じてきた大体の構図だと思うが、この「健気さ」が日本人向けだなあ、と改めて思ったところである。

 で、今回の雪組はどうか。一言で言えば「ウィーン版との融合」という感じである。あちらこちらでウィーン版と同じ印象を持つところがあって、組全員で観劇してやはり影響があるのだな、と思った。宝塚ファンとしては、今までの路線の「宝塚版」をさらに深めてもらいたかったのだが、それは組と演出の考え方だから仕方ないのかな、と思った。同じようにやっていては進歩が無いと思われるだろうから。

 宝塚版、としては花組からほとんどかわっていない。豪華な衣装・群舞など宝塚ならではの売りもきちんと残されている。なのだが、なにかいまひとつ「宝塚のエリザベート」と感じられなかった。7回目の上演となると捕らえ方、演じ方、もいろいろ難しいだろうが、初演の雪組の衝撃に似た感動はなかった。70点。

 水夏希。グリーンのトートというのはいままでにない色で、彼女のクールな持ち味を引き出す役だとおもうが、意外と青い血潮がたぎっているようなところがおおくあったトートだった。ここからはあまりいいことがかけないのだが、ナルシストであるゆえに他者に対して攻撃的であるというイメージを強く受けた。攻撃的であるところはウィーン版を彷彿とさせた。あの手の動きは独特でそれをもって人間でないところを表現しているのだろうが、ずっと観ているとセクシーすぎる、というのか、違和感を覚えてきた。また1回目2階最後列から観ると、歌詞で話が動くミュージカルなのに歌詞が粒だって聴こえてこなかった。2回目は1階で観たが、演技も歌もずいぶん良くなっていてまだまだ進化するな、と思った。しかし、「黄泉の帝王」としての威厳や気品が欲しかった。やはりお披露目としては、ダンスをガンガン踊るショーがついた演目のほうがよかったのでは、と思うのだが。9月の全国ツアーは3階で観ようかな、久しぶりに水さんのキレのあるダンスを堪能したいな、と思ってしまった。

 白羽ゆり。少女期は素晴らしい。いかにも田舎のプリンセス、絵本に出てきそうであった。彼女のエリザベート像は先輩方と違って完璧に「自我独立」に生きるエリザベートである。「♪私だけに」を歌うところから明確にこの路線が示される。確かに本物はそう生き、きっとそうだったと思わせる人間的欠点もあるが、宝塚のエリザベートは日本女性が共感でき感情移入できる日本らしさ、を残していないといけないと思う。それが「健気さ」だと思うが。これを取り入れた初演の花聰まりさんはやはり稀代の日本的エリザベート役者であったとその功績を改めて認識してしまった。特にプログラムに小池先生が書かれているように「宝塚有数のお姫様役者」の白羽に強さを求めてしまったのは演出プランの間違いであったような気さえした。観光客に「結局さあ、あの人が皇后なのに我儘いって、回りを振り回す話やん、これ」といわれていたが、こう感じられたらいかがなものか。歌唱力の上達は素晴らしかった。やはり彼女には絵本か漫画に出てきそうな「お姫様」です。

 彩吹真央。ウィーン版では「最後の証言」の場面でひびの入った紋章を握り締めたおじいさんの彼がトートに対するところが一番印象に残ったのだが、地味で真面目で優しい人物像で宝塚的には難役の部類に入ると思う。彩吹はいままで彼女が演じた役のリストからしても似合いそうだったが、歌とあわせると歴代ナンバー1だと思わせた。とくに、DVD録画日は「扉を開けてくれ〜心優しいエリザベート♪」のところを始め、さすがの歌唱力を披露した。始めの青年期をきちんと宝塚の2枚目にすることで宝塚の男役としてのつくりができており、2幕に入っては地位と安らぎの両方を求めるもののそれが不可能で、「フランツ可愛そう。他の人と結婚していればこんなことはなかったのに」と素直に思ってしまった。

 音月桂。風刺的で人をからかっているようなところは、これもウィーン版を彷彿とさせた。やはりアナーキストなのだからどこか心の奥の暗い闇のようなものを感じさせて欲しかった。もっとドスが効いていても良かったかと思う。歌は安定している。

 凰稀かなめ。神経質で孤立無援の皇太子像は出ていたと思うが、歌はまだまだ。

 未来優希。以前花組で夏美よう組長がこの役をされたとき、「ああ、この役はやはり男役の人にやってもらうほうがいいな」と思ったのだが、未来はこちらも歴代ナンバー1のゾフィーだった。まず、音域が広いことで、女(姑)としての部分と政治家としての部分を歌いわけることが出来、「嫁に負けられない」というところと「ハプスブルグ家を思ってのこと」というところの切り替えが良かった。なんだか彼女のゾフィーを観ることができたのが劇場に足を運んだ一番の収穫のような気がした。

 エルマーの彩那音はもっと目立つ役のはずなのに小さく見えてしまった。
 マダム・ヴォルフの晴華みどりはもう少しあざとさ・下品さが欲しいが、エトワールは完璧だった。
 少年のルドルフの冴輝ちはやは音域が広く、好感の持てる歌声だった。

 最後に衣装は有村先生だったが、「A/L」のときも書いたが、すその長い衣装は振り付けによっては着るほうがたくし上げなくてはならないので(今回は「♪闇が広がる」の水さん)、場面によっては短いバージョンもお願いしたい。


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