花組大劇場 「明智小五郎の事件簿−黒蜥蜴」「TUXEDO JAZZ」

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440. 花組大劇場 「明智小五郎の事件簿−黒蜥蜴」「TUXEDO JAZZ」

ユーザ名: 金子
日時: 2007/3/9(16:25)

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 「黒蜥蜴」演出木村先生・・・・一筋縄ではいかないだろうな、と思ったらやはりそのとおりでした。これから行かれる方は、結末を知りたくなかったらここから下は観劇されてからにお願いします。

花組 宝塚大劇場
2月20日→1階21列46
3月8日→2階3列27(お安く譲っていただきました)

グランド・ロマンス
「明智小五郎の事件簿−黒蜥蜴−」〜江戸川乱歩作「黒蜥蜴」より〜
脚本・演出/木村信司

<解説>
 これまでにも様々に映画化、舞台化がされている江戸川乱歩作「黒蜥蜴」。宝塚版では、時代をロマン溢れる大正・昭和初期に移し(金子補筆:実際は昭和30年代の設定の舞台)、憂いを秘めた名探偵・明智小五郎と、洋装から和装へと変幻自在に姿を変える女賊・黒蜥蜴とのスリルとサスペンスに満ちた物語を展開、三島由紀夫版とは違う宝塚歌劇ならではの結末へと進んでいきます。
 探偵・明智小五郎は、宝石商の岩瀬に雇われる。娘の早苗を誘拐すると、岩瀬に予告状が来たためであった。早苗と親しい緑川婦人(実は怪盗・黒蜥蜴)は、明智に賭けを申し出る。もし早苗が誘拐されたら、明智には探偵をやめてもらう。そしてもし明智が賊を捕らえたら、自分の宝石すべてを差し出そうと。探偵と怪盗、両者による奇妙な賭けが成立する。
 緑川夫人が早苗を自室に誘う。緑川の手下・雨宮は早苗を薬で気絶させ、大きなトランクに押し込む。その間に緑川夫人が早苗に変装する。今夜12時に早苗をさらうという電報が届く。岩瀬は早苗ならベッドで寝ていると一笑にふす。しかしベッドには人形の首が。早苗はさらわれた。一同は明智を責める。
 そこへ一本の電話が入る。明智は勝利宣言をする。明智はホテルの周りを警備させ、早苗を保護したのである。賊を逃がしたとあって、岩瀬は残念がる。しかし明智は、緑川夫人こそ真犯人だと言う。緑川夫人が戸惑うとき、小林少年、浪越刑事に伴われて、早苗が戻る。黒蜥蜴、絶体絶命!だが女賊は不敵に問う。明智さん、拳銃は?黒蜥蜴は、明智から奪った拳銃を掲げて去る。
 夜の東京。黒蜥蜴を追う人々。そんな中、明智は、不思議な胸のときめきを覚えずにはいられなかった。明智と黒蜥蜴の戦いは・・・・。男の名探偵、女の怪盗、二人が迎える結末とは・・・・・。(ちらしより)

<メインキャスト>
明智小五郎(名探偵):春野寿美礼
黒トカゲ(銀座のクラブ「黒トカゲ」のマダム緑川、実は・・・):桜乃彩音
雨宮潤一(元ボクサー、黒トカゲの知人):真飛聖
波越警部(警部、明智の知人):壮一帆
早苗<実は桜山葉子>(岩瀬の娘<早苗の替え玉>):野々すみ花

<感想>
「予習しないで行けばよかった」

 いつかは忘れたが、たぶんBS2で三島版、三輪明宏さん主演の『黒蜥蜴』を見た。難しそうに思えたので最後まで見るつもりではなかったのだが、なんとなく独特の世界に魅了されてしまって最後まで見てしまった。これで予習は充分、と思っていたら、この公演の初日近くの「スポニチアネックス」(スポニチ電子版)に「原作を知らなければ・・」とあったので、天邪鬼の金子、原作と漫画まで買って読んでいった。

 たぶん原作も三輪さんのバージョンも知らなければ、「ああ、こういう悲劇か。相変わらず木村先生らしく、役は少なく、コーラス多く、反戦メッセージがテーマね」とある意味納得してしまうかもしれない。これも相変わらずの、木村脚本の特に娘役の台詞の投げ出したような言葉遣いはかなり気になるが。しかし、よく考えると19歳の処女(こういう性体験を語らせるのは相当「すみれコード」に反していると思うが)の少女がどういう経緯にせよ銀座のクラブのママに収まっているということと、戦争体験者で実質祖父に生き別れたようなものの金子の母にいわせても、たとえ10数年生き別れていても、兄弟なら少し話せばすぐにそれと気付くのではないか、という大いなる矛盾を抱えていることは確かだが。

 原作は明智と黒蜥蜴のスリリングな駆け引きと、正と悪、対立するヒーローとヒロインが愛し合うという「禁じられた恋」が対照をなして、最後に悪の黒蜥蜴が知性においても人間としても明智に死を持って負けるという悲劇がロマンティックかつ哀切感を漂わせているからこれだけ劇化・映画化されているのだと思う。テーマは「正と悪」「禁じられた恋」この2つなのだ。
 しかし木村脚本にかかると、明智と黒蜥蜴は兄弟ということになり、確かに「禁じられた恋」だが、血が通っているので「不義の愛」ということもいえる。そして、結末の悲劇は戦争のせいでおきたのだ、ということになりテーマが「反戦」ということがまたまた大きく掲げられるのだ。対立する立場のヒーローとヒロインが愛し合い、「戦争のせいで」最後に悲劇的結末に終わる。この構図はオペラ「アイーダ」を元とした『王家に捧ぐ歌』と
ほとんど似ているような気がした。『炎にくちづけを』も「戦争のせいで」を「キリスト教のせいで」に変えればほとんど同じ構図のような気がする。ここまで変えられると、原作は原作というより、原案という感じである。

 好みかどうかはその人によって違うと思うが、木村作品のマンネリズムのようなものを感じた。個人的には原作どおり、他の先生にやっていただきたかった。60点。

 春野寿美礼。冷静沈着、ニヒルで知性溢れる大人の男、というのはよく似合っている。明智という役はある意味現実の男性が演じるより、男役がデフォルメして演じるほうがそのかっこよさが際立つのではないかと思わせた。見せ場は黒蜥蜴が自殺して妹だと分かり、茫然自失となるところだが、広い空間を充分に埋めていて流石だと思った。歌も「語り」のようなところがあってよかった。キャリアが守備範囲の広さをあらわしているというべきだろうか。

 桜乃彩音。まず、非常に力を入れてやっていると思う。死ぬところは涙を出しての熱演だった。しかし、この役は女盗賊という面と19歳の兄を慕う純粋な少女という2面性があるのだが、正直この2つの面が乖離しすぎているので、1人の中に2人の人格がある、と考えるしかなく、一貫性がない。桜乃は場面ごとに分けて演じているようだが、それしか方法はないと思う。髪形もよく考えており、彼女としてはヒットだと思うが、なにせ設定に難ありだ。声も清純さが求められる『ファントム』のときほどあまり気にならなかった。

 真飛聖。全体的に神経質な感じがした。よく考えると元ボクサーなのだから、大胆さがもう少しあってもいいのではないか、と思う。確かに罪を犯して、黒蜥蜴の手下になって、命令されるままにふらふらやっているうちに親分に恋してしまって、「裏切る」といわれ、やっと葉子の誠意に目覚める、という役だが、こちらも脚本ミスのような感じがした。男ならではの残虐性も秘めているところが欲しい。個人的には原作と比べてしまっていまひとつだった。むしろ、真飛=黒蜥蜴、桜乃=早苗、のキャストで原作に近いバージョンが観たかったところ。

 壮一帆。この役が一番宝塚的に格好良く原作・漫画(ひどいおっさんの絵だった)と変わっているだろう。なにをするわけでもないおとなしい役だが、誠実さ、現実性を併せ持った人物として印象に残る。壮の持ち味であるすっきりとした好感の持てる人物に仕上げている。
 
 野々すみ花。早苗と早苗の替え玉の葉子と黒蜥蜴が化けた早苗を演じているのだが、おいしい役である上に葉子は明智への叶わぬ思いから雨宮に同情を寄せるというくだりもあるので大役といっていいだろう。正直研2とは思えない出来だった。台詞のかつぜつが良く、聞きやすく、堂々としていてびっくりした。最近の研2は恐ろしいなあ、と思ってしまった。

 最後に小林少年の桜一花の闊達さが明るさを加えていることを付け加えて終わる。

ショー
「TUXEDO JAZZ」
作・演出/荻田浩一

<解説>
 1920年代から1950年代のアメリカ−古き良きブロードウェイ、華麗なるフォーリーズ、絢爛たるジャズとマンハッタンの煌き。そんなハイソサエティの神話が生きていた時代のアメリカをテーマにした大人っぽい華やかさと、瑞々しい闊達さを併せ持つショー。(ちらしより)

<感想>
「荻田式アメリカ的場面の羅列」

 荻田先生のショーというのは、前の場面が次の場面に続いて、場面が途切れることがなく55分一体となってめくるめくショーを形作る、というのが特徴だと思う。しかし、今回に関しては、だらだらとした印象で、ハイライトやめりはり、緩急、といったものが感じられず、なんとなく55分終わった、という感じである。やはり1つくらい「この場面が観たいから劇場に通いたい」と思わせる場面がほしい。

 また、テーマがこれぞ宝塚、ハイセンスなアメリカのショーというところだが、やはりこういうショーをやるなら、他の先生のように場面場面分割されているほうがアメリカ物らしいという感触を持つと思う。衣装も『タランテラ!』より貧相になった感じで、フィナーレの主演コンビ以外羽根なし、全員シャンシャンなし、というのは勘弁していただきたい。ただ、歌はスター中心でなく上手い人に歌わせる、という主義は好きだが。今回は未涼亜希が印象に残った。

 やはり荻田先生のショーはその形態からして独自のものだから、あまりスタンダードな題材のものには合わないのかな、と思った。いつものように独創性の高いショーを次回は期待する。60点。

第1〜2場 プロローグ
 華やかなタキシードのそろいの衣装から始まるオープニングだが、男役が真飛聖以下おとなしく見えてしまった。かつては「ショーの花組」といわれたものだが変わったな、と感じた。ショーこそもっと個性のバトルでいいと思うのだが。

第3場 街角
 桜乃彩音を中心としてたくさん人が出てきて雑多に終わる、という場面。「たくさん出演者がいます」という印象しか受けなかった。

第4場 アンタッチャブル 〜第5場 仕立て屋の恋
 ギャングの場面でオチが次の場面に通じるのだが、ここと次の場面でベテランから若手まで花組の売りの娘役さんがずらっと見られる。やはり、この組の娘役は雪組・宙組に比べて若手がそろっていない感じがする。そのなかで、芝居でも大役だった野々すみ花が目を引いた。ただし髪型・メイクには研究の余地ありだが。娘役のほうに目が行く場面。

第6場 アステア
 この辺から古きよきブロードウェイらしくなるのだが、後で場面のタイトルを読んでひとつがくっときた。「アステア」である。春野さん、髪形変えてくれませんか?よく考えたらショーの間、ほとんど髪形の変化ありませんね。(ファンの方ごめんなさい)一方、チェリーの桜一花はいかにもレビューガールらしくて小粋で印象に残る。

第7〜8場 フォーリーズ
 「♪コンチネンタル」を使った中詰めだが、岡田先生の「♪キャリオカ」のような熱気に溢れず、すーっと終わってしまったのが残念。訳詞もなにかいまひとつのような気がする。ダルマ衣装の男役3人(真野すがた・扇めぐむ・朝夏まなと)がいい意味でアメリカ的美女でゴージャスだった。

第9場 ナイト・ジャズ
 出会った彼女を追いかけていくうちに狂乱の世界に引きこまれ、またその彼女と出会うと違う彼がそばにいる、という物語性なのだろうが、こちらも人が全員出て踊るという中途半端な印象。愛音羽麗の女役はなかなか驕慢的で綺麗。

第10〜12場 フィナーレ
 ラインダンスがタップであるのは、最近タップダンスが良く利用されているのであまり斬新に思わない。主演コンビのデュエットダンスは桜乃が大人っぽくていい。後半は絵莉千晶の歌がたくさん聞けてうれしい。


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