雪組バウホール「ノンノンシュガー」

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439. 雪組バウホール「ノンノンシュガー」

ユーザ名: 金子
日時: 2007/2/26(20:31)

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 こんばんは。この作品と同年代のアメリカブラックミュージックを扱った映画「ドリームガールズ」もみました。アカデミー助演女優賞をとられたかたの歌は鳥肌物でした。久しぶりにDVD買いたくなりました。
 一方この作品は、時代設定と歌われている曲が厳密には違うそうです。それを知らなければ気楽なものでしたが。

雪組 バウホール公演
2月25日→る・15

バウ・ライブ・パフォーマンス
「ノンノンシュガー」
作・演出/藤井大介

<解説>
 1960年代のアメリカ。ライブハウス「ノン・ノン・シュガー」を舞台に、幼いころ両親に捨てられ天涯孤独の青年と、富豪の娘との恋物語を軸に、ライブハウスに集まる人々の人間模様を描いた、甘酸っぱくてほろ苦い青春グラフィティ。
 1967年、メンフィスのダウンタウンにある小さなライブハウス「ノン・ノン・シュガー」では、今日も多くの若者が集まり、ロックンロールに酔いしれていた。ステージの中央で歌っているのはジョニー。看板シンガー、キングの前座を勤めている。
 この店にチンピラに追われた家出娘シェイラが逃げてくる。放っておけないジョニーはシェイラを匿う。ジョニーは自分の身の上をシェイラに告げ、仲間たちとの城にシェイラを誘う。そこでは貧しくても夢のある若者達が集まり、青春を語り、恋愛に興じていた。次第に心を寄せ合うジョニーとシェイラ。
 ある日、キングと恋人マリアの間に事件が起きる。しかしいつものようにショーは始まり、キングの歌でいつにもまして客席は盛り上がる。キングは真のスター。しかし自分には出来ないと悟ったジョニーは「ノン・ノン・シュガー」を出て行く決心をする。それは青春との決別の時であった・・・・。(ちらしより)

<メインキャスト>
ジョニー・キッドマン(世界的なロックシンガーを夢見る若者):音月桂
シェイラ(ニューオリンズから来た家出娘)/マライア(シェイラによく似た家出娘):大月さゆ
キング・ビート(ロックシンガー。ライブハウス「ノンノンシュガー」の看板スター):萬あきら
マリア(ジョニーの母親):美穂圭子
J(30年後のジョニー・キッドマン)/ブルート(不良グループのリーダー):沙央くらま

<感想>
「半分ショーを観た感じだった」

 チラシを読んだとき(上を参照)「こんな薄っぺらい筋でこのあと展開があるのか?もう少し話を膨らまさないと上演時間にフィットしないな」と思ったが筋に関してはもうチラシのまま、だった。そのつなぎは60年代アメリカミュージックが次から次へと歌われ、「ミュージカル」というにはちょっとふさわしくないような気がした。「芝居入りミュージックショー」くらいなら納得できる。そう割り切れば1月の星組のディスコダンスに引き続きなかなか楽しめた。音月桂の貫禄すら感じさせる主演ぶりに若手の熱気が加わり、そこにベテラン勢が上手く絡んでいる。ただ全体的にみて、ショーの要素が強くて、どうしても筋が弱くて説得力もあまりないのでいまひとつ満足はできない。80点。

 テーマは「夢をあきらめるのが青春から大人への第一歩」というところだろうか。子供のころ夢見たように人生をまっとうできる人間がどれほどいるか、ということでもある。ただ夢は消えない、その輝きは一生心の中でいき続ける、何年たっても・・・そんな現実的なテーマである。しかしこれが現代の20代の若者に当てはまるのか、といわれるともうわからない現実であるが。だから「昔はよかった」といわれるのだろうか、などと考えてみていた。それぞれの人物についてちゃんと語られているのだが、音楽に時間を取られてしまってテーマ性は弱い。

 しかし、舞台で当時の若者たちを演じるジェンヌたちは「若い舞台人」という青春を謳歌している。そんな若い登場人物たちを実際に若い演技者が演じる姿をみているのは星組に引き続きすがすがしい。完成されたものしかみせない主義の劇団や外部舞台にはない「育てて観る」主義の宝塚の良さがここにあるように思った。

 音月桂。全体的に観て、他の下級生とは一線をおいた堂々たる主演ぶりだった。歌はたくさんの歌を低音まで出して歌い、演技にしてもちょっとした仕草が若者らしく工夫してあって笑いを取るところもあり、また母親の自殺を思い出すシーンでは泣きながらの演技で、正直もっと難しい役(悪役とか)を藤井先生には振ってほしかったくらいだ。30年後のジョニーもやって欲しかった。彼女が新人のころから劇団に次々と与えられてきた課題をこなし、それをきちんと自分の実力としているのが良く分かった。「男役10年」とはよく言ったものだ。欲を言えば「どう出るか分からない」といった意外性を秘めてくれるとエンターテイナーとして充実すると思うのだが。

 大月さゆ。彼女も歌・芝居とも下級生にしては安定した実力の持ち主だ。同じ家出娘という設定でもマライアのほうはすれっからしのようなところを出そうとしていたが人物像にもうひとつ一貫性が欲しかった。シェイラのほうは家族にバイオリニストになることを勝手に決められて他人との接点のない寂しさやお嬢様らしいわがままさを出して対照的な人物にしていた。今の彼女を見ていると「怖いもの知らず」といった感じで、娘役として壁にぶち当たったときにどう対処するかが今後を決めるのだろう。

 萬あきらさん。一見は看板スターらしく自分勝手なところがあるのだが、それは自分が作り上げた偶像で、そのなかで人間らしい自分が呼吸していなくてはならない、という渋い役だが、さすが専科の方ならではの手堅いつくりだった。ニヒルで粋で素敵だった。

 美穂圭子。ジョニーの母親はジョニーを愛していたにもかかわらず、男たちのために働いて見捨てられて絶望して死を選んでしまう。子供のジョニーへの言葉や「♪タミー」は素晴らしかった。

 沙央くらま。30年後のジョニーで狂言回しの役だが、休演者の都合でこの役が回ってきたのだろう、かなり苦戦したあとという感じ。30年後のジョニーはどうしても若く見えてしまった。ひげをつけたり、不良の役のところでは当時らしい髪型をしたり、外見より思い切ったことが出来る人なのだな、と思ったが、やはり台詞をもう少しかまないようにスムーズに言って欲しい。初日が開けて2日目に行ったが、千秋楽までがんばって欲しい。

 最後にエキセントリックな行動をしながらもキングと別れるのがつらくて自殺してしまうけなげなマリアの舞咲りん、急遽出演となったが医者のボンボンを演じた蓮城まこと、その恋人の髪型に一考ありだが演技力が確かな愛加あゆ、が印象に残った。


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